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2024.9.30

Business

住商が目指す「デジタルで磨き、デジタルで稼ぐ」とは? “DXの旗振り役”巽CDO・CIOに聞いてみた

住友商事(以下、住商)は、経営戦略における重要なテーマとしてデジタルトランスメーション(DX)に取り組んでいます。2018年にグループ全体でDXを推進する専任組織「DXセンター」を発足したことを皮切りに、社内の推進体制を着々と整えてきました。24年5月に発表した新中期経営計画では、「デジタルで磨き、デジタルで稼ぐ」というスローガンを掲げ、新たなステージに突入。住商がDXを通して目指すものについて、最高デジタル責任者(CDO)兼 最高情報責任者(CIO)の巽達志に聞きました。

  • 執行役員 DX・ITグループ長
    CDO・CIO

    巽 達志

    1993年に住商へ入社し、東南アジア向け通信インフラ輸出事業に従事。2007年に健康食品・医薬品のEコマースサイト「爽快ドラッグ」の社長に就任。14年よりシリコンバレーのCVC (コーポレート・ベンチャー・キャピタル) 拠点Presidio VenturesのCEOを経て、20年より経営企画部で中期経営計画、全社ポートフォリオ戦略、社内起業制度等を担当。23年4月より現職。

社内変革の先に見据える「デジタルで稼ぐ」未来

新中計で「デジタルで磨き、デジタルで稼ぐ」というスローガンを掲げるまでの、近年の住商におけるDXの流れを教えてください。

2018年にDXセンターが発足してからの約6年間、住商のDXは二つのフェーズを経て進化してきました。最初の3年間は社内の体制構築や機運の醸成に注力しました。商社の業務はアナログな部分が多く、当時、社員のデジタルリテラシーは決して高いものではなかったと思います。そこで、まずは社員にDXの重要性を理解してもらうための啓蒙活動からスタートしました。

次の3年間では、各SBU(Strategic Business Unit/戦略的事業単位)がビジネス戦略にデジタル技術の活用を組み込み、具体的なアクションを起こす段階に移行しました。そして現在、24年5月に発表した新中計のもと、「デジタルで磨き、デジタルで稼ぐ」をスローガンに、実際の成果を出すフェーズに突入しています。社内のDX化を加速するとともに、これまで蓄積してきたデジタル戦略のノウハウをステークホルダーの皆さまへも提供し、収益化を目指しています。

住商ではDXセンター発足以降、さまざまな組織や体制を構築してきた

具体的にどのようにDXを推進しているのでしょうか。

「事業」「コーポレート・経営」「働き方」の三つの主要な軸に分けてDXを推進しています。

まず、一つ目の「事業」においては、44のSBUがデジタル技術を活用して収益拡大を図っています。新中計のテーマは、「No.1事業群」。各SBUがそれぞれの産業や戦略単位の中でどうやって「No.1」になるか、と問いかけています。最近は、各SBUが具体的に何を実行していくか、それに対してDXセンターは何が提供できるのか、44SBUのトップ一人一人と直接話し合っています。

二つ目の「コーポレート・経営」に関しては、デジタル・AIを活用し経営管理体制の変革に取り組んでいます。例えば、生成AIを活用した投資判断の高度化を図るなど。商社のビジネスは従来のトレードビジネスから、時代の変化に伴い事業投資が主流となりつつあります。そのため、投資判断の精度向上は重要な課題。これまでに蓄積された膨大な投資データを生成AIに学習させ、過去の事例や考え方を引き出しながら新しい投資案件を検討する際に、生成AIと壁打ちを行います。このプロセスを通じて、投資の成功確率を高めることを目指しています。

三つ目の「働き方」のDXでは、全社員に生成AIを活用した業務効率化・高度化ツールを提供しています。このツールを利用することで、日々の定型業務や報告書作成などの時間を削減し、業務の効率化と働き方改革を進めていますね。

経営陣から現場まで、全社的なDXで手繰り寄せる効率化と創造性

DXを推進する中で、特に重視されている点は何ですか?

社員一人一人がデジタル技術を自分ごととして捉え、自発的に活用する意識を持つことです。デジタル技術は手段であり、使うこと自体が目的ではありません。例えば、デジタル技術でルーティン業務を効率化させることで、余剰時間が生まれ、その時間をビジネスの創出や収益向上に充てることができる。あるいはデジタル技術を使った、新たな事業の創出もできるでしょう。デジタル技術やAIの活用によって、社員がクリエーティブな仕事に集中できる環境を整えることを目指しています。

また、経営陣が率先してデジタル技術を活用し、意思決定のスピードと精度を上げることも重視しています。部下任せではなく、経営陣自ら新しい技術を使いこなすことが、会社全体の成長のスピードアップと競争力の向上につながると思うからです。トップから現場まで、デジタル技術の利活用を当たり前のこととして浸透させ、投資家をはじめとするさまざまなステークホルダーが求める期待を凌駕するような成長を実現できると考えています。

住商の事業における強みや競争優位性と、それをデジタルで加速させていくために、どのような取り組みを始めていくのか教えてください。

住商の強みでありデジタルで加速させていきたい事業の一つは、都市総合開発です。住商はベトナムのハノイ北部でスマートシティ開発に取り組んでいます。ここで培ったノウハウを、24年に優先交渉権者に選ばれた福岡市箱崎でのスマートシティプロジェクトに生かす予定です。このプロジェクトでは、住商が長年培ってきた不動産開発とデジタル技術のシナジーを最大化し、より効率的で持続可能な都市をつくっていきます。

こうした横展開が可能な理由の一つは、グループ内に「Insight Edge」や「SCデジタル」などの専門組織があるからです。Insight Edgeは、19年に設立した、データサイエンティストやAIの専門家を集めた技術専門会社。SCデジタルは、マーケティングDXを中心としたDX支援事業に取り組んでいます。

ベトナムのハノイ北部では、272ヘクタールにも及ぶ広大な土地を現地不動産会社と共に、スマートシティとして開発している

DXのノウハウを外部に提供していくとき、ITベンダーやコンサルティングファームなどの競合と比較して、どのような強みがあるでしょうか。

住商の最大の強みは、現場のリアリティーに根ざしていることです。幅広い産業分野にわたる44のSBUがそれぞれの現場で肌で感じたさまざまな課題を吸い上げて、専門会社の技術やノウハウと掛け合わせ、多様な産業セグメントに対応するソリューションを開発できます。

私たちDXセンターは自らを説明するときに、少し前は各SBUや顧客の課題解決をするために「支援」や「サポート」という言葉を使っていたのですが、今は主体的に共に新たな事業や価値を創出していく「パートナー」だと自負しています。

これまで、DXセンターではどのようなサービスを開発されましたか。

例えば、製造業向けのDXサービス「moganadx(モガナdx)」。製造現場におけるデータの見える化と分析を通じて生産効率の最大化を実現します。moganadxのサービス化にあたっては、約70社の製造現場の担当者や経営陣へインタビューを行いました。製造業の課題を現場の社員がしっかりくみ取った結果として、誕生したサービスだと言えます。

他にも、住商グループのサミットエナジー、Insight Edge、DXセンターによる電力発電量予測モデルの共同開発などがあります。太陽光発電や風力発電など、不安定で予測しにくい再生可能エネルギーの発電量をデータテクノロジーを活用して予測し、市場取引等を通じて需給の最適化を行う企業「ENEXIA(エネクシア)」を設立しました。電力事業の上流から下流までビジネスドメインを持つ住商グループの強みとDXのノウハウを生かした事例だと思います。

DXを実行するのは「人」。商社の強みを生かし、持続可能な社会を目指す

現在の日本は、欧米先進国と比較してDXで後れを取っているとも言われています。日本の産業界におけるDXの状況について、どう見ていますか。

現在、日本企業の多くは、米国企業のデジタル基盤に依存しています。これは今後も続くと思いますので、そのデジタル基盤をフル活用して、付加価値のある事業を生み出し、競争力を高めることが重要ではないでしょうか。

また、新技術導入においては、時にはリスクを取りながら積極的に取り組む姿勢が必要です。DXがどれだけ収益をもたらしたかなど、定量的に測るのが難しい場合もありますが、まずはスモールスタートでもよいので、挑戦するマインドに変えていくことが大切だと思います。住商でも、中長期的な目線に立ち、これからの活用に期待がかかる量子技術による社会変革を目指すなど、チャレンジングな取り組みを推進しています。

では、最後に住商のDXを通じて、社会や環境にどのような影響を与えることができると考えているか、教えてください。

デジタル技術を活用することで、未解決のさまざまな課題を解決し、社会と環境をより良くしていくことができます。その課題解決のスピードを上げるためにも、重要なのは現場の実行力で、つまりデジタル技術を活用するのは人だということです。多様な経験と専門性を持つ人材の集合体という住商の強みを生かしてDXのスピードをさらに加速し、世の中に新たな価値を創造していきたいですね。

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