- TOP
- Enriching+TOP
- 多様性×圧倒的熱量!「MIRAI LAB PALETTE」は“おせっかい”なコミュマネがつなぐ共創の場
2025.4.15
Culture
多様性×圧倒的熱量!「MIRAI LAB PALETTE」は“おせっかい”なコミュマネがつなぐ共創の場

2019年、住友商事(以下、住商)の創立100周年を機に誕生したオープンイノベーションラボ「MIRAI LAB PALETTE(以下、パレット)」。実験的な取り組みを通じた新たな価値創造を目的として誕生したこのパレットは、利用者の業界や属性を問わない、ラボ単体での採算を求めない、といった異例の方針を採用しています。この方針のもと、新たな出会いを生み、共創を加速させているのが、パレットの運営を支えるコミュニティマネージャー(以下、コミュマネ)鎌北雛乃さんの“おせっかい”なのだとか──。今回は、そんなパレットの魅力について、鎌北さんと、パレットに共鳴する利用者の森木田剛さん、羽田貴史さんに聞きました。
-
MIRAI LAB PALETTE コミュニティマネージャー
鎌北 雛乃
学生の頃からジャンルを問わないコミュニティ活動に参画し、20歳の時に仲間とともに起業。人口7,000人の町に移住し、観光・情報発信・コンサルティング事業、コミュニティスペース運営などを行う。2019年よりMIRAI LAB PALETTEにジョイン。唯一のコミュニティマネージャーとして、利用者同士のコミュニケーション活性化、マッチング、コミュニティ形成や活性化のためのプログラム企画・運営、PR活動などに従事。
-
株式会社はこぶん 代表取締役
森木田 剛
2012年、住商に入社。中国駐在を経たのち、デジタル事業本部にて新規事業開発やスタートアップとの事業開発を担当。社内起業で新規事業立ち上げにもチャレンジする。22年4月に、株式会社はこぶんを創業。組織/事業の意思決定におけるVOC(Voice of Customer:顧客の声)活用の効率化を目指し、非効率な仕組みや課題の解決に取り組んでいる。
-
大阪府堺市東京事務所 所長
羽田 貴史
1994年より堺市役所の職員として従事。最初に配属された障がい児の通園施設で、日々の子どもの変化に触れる中、公務員としての仕事の楽しさにめざめる。その後、保育所待機児童対策や政策企画部でのSDGs推進に携わり、プラットホームの運営を担当。23年4月、東京事務所の所長に就任し、現在に至る。
未来を見据えた「実験と挑戦の場」。住商が手掛けるパレットはなんでもアリ?
パレットでは具体的にどのようなことができるのでしょうか。

鎌北一言でいうと、なんでもアリの場です。利用するには住商社員の紹介が必要ですが、打ち合わせやネットワーキングの場として活用できるほか、月10~15件ほど開催しているイベントに自由に参加したり、そこで他のメンバーと交流を深めたりすることが可能になります。また、新規事業の創出を目的としたメンバー同士のマッチングや企画化支援、実証実験のサポートといったサービスも完全無料でご利用いただけます。現在のメンバー数は約7,800人(2024年12月末時点)、年間約700件のマッチングが生まれています。
運営には、どのような方針を掲げているのでしょうか。

鎌北住商は創立100周年を機に、住商グループという枠を超えて、多様な分野のパートナーと一緒に新たな価値を創造していく場として、パレットをオープンしました。変化が激しい時代で成長し続けていくためには、これまでのビジネスの延長線上ではない、イノベーションが不可欠です。そうした考えから、パレットでは「多様性と共創」「実験と挑戦」を理念として、異なる分野やバックグラウンドを持つ人々が集まり、刺激し合いながら新しい価値を生み出す場を提供すること、失敗を恐れず、実験的な取り組みを推奨し、未完成なラボとして成長し続けることを目指しています。
背景には「自利利他公私一如(じりりたこうしいちにょ/※)」という住友の事業精神があり、国や社会全体をより豊かなものにしていくという長期的な視点は、パレットにも受け継がれています。
こうした理念を体現するため、利用者の属性・分野や目先の採算基準はあえて設定しませんでした。当初は周囲から「クレイジーだ」と言われましたが、この方針だからこそパレットの可能性を極限まで広げられるわけで、ここでの実践がめぐりめぐって住商のバリューアップにつながると私は信じています。
※ 住友グループが目指す企業像。「住友の事業は、住友自身を利するとともに、国家を利し、社会を利するほどの事業でなければならない」というもの
パレットメンバーの森木田さん、羽田さんは、普段どのようにパレットを活用しているのでしょうか。
森木田私は住商の元社員です。住商にいた時は社内起業制度を活用しながら新規事業の創出に挑戦していて、事業を加速するためにうってつけの場としてパレットを使い始めました。現在の活用理由も同様で、月に数回ほど訪れてワークスペースとして利用したり、鎌北さんと雑談したり、マッチングした方と打ち合わせしたり。きれいだし、大手町駅直結でアクセスもいい。カジュアルなコミュニケーションに絶好の場なんですよね。


羽田私は大阪・堺市役所の職員で、東京事務所の所長として、首都圏での堺市のプロモーションや地域課題の解決に向けた取り組みなどを行っています。23年、異動で東京に来たタイミングで、別の自治体の方から「いろいろなつながりが得られるユニークなラボがあるよ」とパレットを紹介していただきました。その方を通じて鎌北さんとも知り合い、魅力的な場だと感じましたね。私も週1ペースで来訪していて、知り合った方との打ち合わせやイベントへの参加が主な目的です。
パレットはいい意味で住商の企業色を感じさせないし、一部の業界に偏っていないから行政の人も使いやすい。利用している自治体は60以上で、政令指定都市の所長が集まる会議や堺市が主催する交流会をここで実施することもあります。
最大の価値は、おせっかいなコミュマネとの雑談で生まれる「つながり」
他社のイノベーションラボと比較して、「パレットならでは」だと感じる点はありますか?

森木田一番の魅力は、圧倒的なつながりを生み出してくれるコミュマネの存在。いい意味でおせっかいを焼いてくれるんです。パレットはメンバーの多さと幅広さが桁違いですが、鎌北さんは全員を把握しているんじゃないでしょうか。メンバーの紹介はもちろん、「今度、森木田さんに合いそうなイベントがありますよ!」と個別に声をかけてくれることもあって、とても助かっています。
羽田私もやっぱり鎌北さんの存在かな。他のメリットもたくさんありますが、結局、足しげく通うのはコミュマネの熱量が高くて、求めているつながりが得られる場だから。鎌北さんから紹介されたイベントはピンポイントでハマることが多いですし、紹介いただいた企業さんと一緒に実証実験をしたり、事業の相談に乗ってもらったりすることも多いです。
鎌北そう言ってもらえてうれしいです。マッチングは通常、メンバーの方が求めるペルソナに基づいて進めますが、ときには「この人とこの人がつながったらおもしろそう!」という、事業シナジーを度外視した私の直感でおつなぎすることもあって。そのほうが意外と長く続く関係になることが多いんですよね。
森木田人間的に合う人を紹介してもらえるので、すぐにビジネスにつながらなかったとしても、何か生まれるきっかけになることはあると思います。実際に私も、鎌北さん経由で知り合った方と時間がたってから事業連携した経験があります。出会った当初はお互いにビジネスモデルが違ったので、普通に情報交換をしたり、起業の相談をしたりするようなラーメン友達だったんですけどね(笑)。
鎌北こうしたつながりが生まれるから、私は日頃からメンバーとの雑談を大切にしているんです。意識的にではないですが、何気ない会話から「どんなことが好きなのか」「どんな考えを持っているのか」といった情報をキャッチして、マッチングに生かしていて。コミュマネというより、スナックのママみたいな感覚です(笑)。

羽田メンバー同士がつながりやすい場ではあるものの、やっぱり初対面の人との交流は緊張しますからね。鎌北さんのお膳立てはありがたいんですよ。
鎌北そしたら、今後も初心に返っておせっかいを焼いていかないと(笑)。私はパレットの理念に深く共感していて、パレットという場をとても愛しているんです。だから、この理念に共感してくださる方々はすでに同志のような存在。そうした同志たちをつなげるのは本当に楽しいし、そこから生まれるものもおもしろいと思います。
目先の利益にとらわれないマッチングは、まさにパレットの運営スタイルと合致していますね。

鎌北そうですね。パレットはあえてテーマ・領域・対象者を一切絞っていない。競合という概念もなく、これは全国のラボやコミュニティの中でもめずらしいのではないでしょうか。だからなのか、ここ数年、他のラボや施設の方から「パレットさん助けて」とコラボのご相談をいただくようになって、一緒にイベントを実施することも。パレットはただ、ハブとして存在できればいいんですよね。
多様な色が混ざり合う、無限の可能性を秘めたラボへ
森木田さん、羽田さんは、パレットを利用して住商の印象は変わりましたか?

羽田めちゃくちゃ変わりましたよ。総合商社というと石油などのエネルギーやミサイル、宇宙といった規模の大きな事業を担っているイメージがありました。でも、実際には地方の小さな社会課題についても高い関心を持ってくれていて。パレットに来ることで住商社員の方ともお話しする機会ができて、そうした姿勢に気づけたんです。
森木田たしかに、パレットがあることで外部の方が持つ住商への印象はガラッと変わると思います。実際、外部の方をここに連れて来ると、「住商さんにこんな施設があるんですね!」と驚かれます。ガチガチな会議室ではなく、カジュアルに情報交換ができる場こそオープンイノベーションの肝ですしね。

最後に、鎌北さんは今後、パレットをどのように進化させていきたいと考えていますか?
鎌北今後も「無限の可能性を織りなすパレット」という軸を貫いて、成長し続けたいです。設立初期は、パレットに対して「ジャンルを定めていないから、何をしているのか、何を目的にしているのかがよく分からない」という評価もありました。でも、理念をぶらさずに運営してきたことで、最近は社内外からポジティブな声が届くようになりました。

鎌北24年からは、森木田さんの会社で提供している「ホンネPOST」を使って、マッチング後の進展を匿名で投稿できるデジタル手紙サービスを実験的に導入しています。単体での採算を求めないとはいえ、共創の実績を自然なカタチで把握して、今後の運営にも生かしたいと思っていて。
パレットには、さまざまな色の人たちが集まり、いろいろなカタチで混ざっていく。その色に正解はないし、どんな色があってもいい。あらゆる色がそれぞれの濃度で混ざり合うことによって、見たこともない色がつくられていけばいいなと思います。
