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2023.10.31
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競技も育児も諦めない。日本女子プロゴルフ協会が「託児所開設」に込めた想い
すべてのアスリートが活躍できる環境作りを目指して―。Diversity, Equity & Inclusionを掲げ、多様な人材の活躍を推進する住友商事と、一般社団法人日本女子プロゴルフ協会(以下、JLPGA)は、試合中に選手やJLPGA会員たちのお子さんを預かる託児所を共同で開設しています。後編となる本記事ではJLPGA会長の小林浩美さんにインタビューを行い、開設に至るまでの経緯や女子プロゴルフ界の発展へ向けた取り組みなどについて、お話を伺いました。
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日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)会長
小林 浩美
1984年、プロテストに合格して以降、プロゴルファーとして国内外のさまざまな舞台で活躍。米国・欧州ツアー優勝を含む、通算15勝を挙げる。2011年2月にJLPGAの第6代会長に就任。
悲願の託児所設置。競技環境改善へ向けて大きく前進
「JLPGA Welcome Babies & Kids Project Supported by 住友商事」について、どのようにお考えですか。
とてもありがたいです。選手からの要望が年々増す中で、長年の目標であり、実現の可能性を探っていたところ、住友商事さんから多大なご支援を得られ、心から感謝いたします。おかげさまで、JLPGAツアープロの働く環境改善の中でも、大きな一歩を踏み出すことができました。
私が初めて米ツアーに参戦したのは1990年。米国女子プロゴルフツアーでは、その頃すでに各大会会場や近くのホテル内などに託児所が設置されていました。ついに日本女子プロゴルフツアーにも託児所が設置され、うれしい限りです。
JLPGA の競技環境は、どのように変化してきたとお感じでしょうか?
トーナメントの競技環境は、大会ごとに改善されてきたものと、例えば「ゴルフ場のキャディーさんが少なくなって、帯同キャディーさんが大幅に増えた」というような社会変化によるものがあります。しかし、ツアー全体で統一的に大きく変わることは、何十年もの間、ほとんどなかったとの認識です。
その要因として、日本のプロゴルフツアーの成り立ちから来る大会構造が大きく影響していると考えます。JLPGAは、トーナメント規定や規約などに沿って大会を開催していただいているのですが、大会会場内での施設関係は、ほとんど大会側、つまり各主催者のご意向で決まります。
ツアー環境を変える大きな取り組み、例えば選手の働く環境改善についても、当協会が主体的に考え、能動的に動き、大会ごとに交渉して、各大会のご理解を得ながら改善していかなければなりません。
当協会の行った最近の大きな改革では、2022年「JLPGAツアーにおける公認競技の放映権をすべてJLPGAに帰属させていただいた」ということがありますが、「協会が能動的に動いて、ツアー全体を通して行う横串戦略の改革」が今後も必要となってきます。
今回の託児所設置については、住友商事さんのグループ会社である住商アグロインターナショナルさんが「アース・モンダミンカップ」で託児所の取り組みをされていらっしゃったことがきっかけとなり、おかげさまで大きく前進いたしました。
「長く現役を続けたい」。
選手たちのアスリート人生を支えるために
今回託児所利用者の範囲をトーナメントに参加するトッププレーヤーのみならず、ステップ・アップ・ツアー、QT(※)参加者にまで裾野を広げられました。競技を諦めてしまいそうな選手にも機会を提供することになったと思いますが、さまざまな方の挑戦についてどうお考えでしょうか。
日本でも女性の活躍が進み、多様な社会へと変化する中で、結婚・出産後も子育てしながら働ける環境が必要なのは、プロアスリートも同じです。また、ツアー生活を断念せずに済む環境を求めているのは、大会に出場を希望する選手すべてと言えるでしょう。
ツアー生活の出発点は、試合の出場機会を得るためのQTです。QTの成績によって、上位順にJLPGAツアーに出場でき、次は下部ツアーのステップ・アップ・ツアーへ出場となります。選手はトーナメントでの優勝をはじめ、少しでも長く現役を続けることなどを目標にそれぞれ頑張っています。
今回のプロジェクトのように託児所が設置されることで、選手たちが結婚して子供を産んでもツアーを続けられる環境になり、働く意欲が高まるのはもちろん、人生設計においてもさらに視野が広がり、より長期で人生を見据えることができるようになったのでは、と感じています。
(※) QT(クォリファイングトーナメント):翌年度のJLPGAツアーおよびJLPGAステップ・アップ・ツアーの出場資格を決定するためのトーナメント。JLPGAツアーにおける第1回のリランキングまでは、クォリファイングトーナメントの順位により出場資格が決定する。
JLPGAの目指す姿について教えてください。
「目指せ、米国男子プロゴルフツアー!」です。はるかに遠い目標です。
やはり、米国男子プロゴルフツアーは世界のプロゴルフ界をリードしていますし、大会でのさまざまな取り組みには素晴らしいエンターテインメント性があり、選手への還元や投資なども充実しています。そして何より参加者は最強のプロゴルファーの集団であり、プロスポーツビジネスで大きく成功しています。
JLPGAでは、13年度に協会として初めて中期経営計画を策定しました。その年、国の法人改革により、JLPGAはそれまでの社団法人から一般社団法人になり、守られた公益団体ではなくなりました。「競争相手が現れる」「税制優遇が大幅に減る」など、協会を取り巻く環境が激変し、株式会社のような形で協会運営をしなければ財務状況がひっ迫してしまうと考えたことが、中期経営計画を策定した大きな理由です。
そして、プロスポーツビジネスの発展を主なビジョンとし、JLPGAのブランド強化やツアー強化、組織力強化などに重点テーマを絞り、「世界で勝つ」を目指したツアー強化策や放映権の帰属といったいろいろな改革に、この10年間取り組んできました。今年で4期目となる中期計画「JLPGA2025ビジョン」においては、協会によるJLPGAツアーの全体統括の実現と、女子プロゴルフ界の持続的な成長とさらなる発展を目指しています。
協会のスローガンは「DRIVING BRIGHTER GREEN」です。受動的ではなく能動的に、そしてより輝きながら、さらなる高みを目指してまいります。