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2025.7.11
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福島・阿武隈の復興へ。国内最大の陸上風力発電事業に込めた住友商事の想い
福島・阿武隈地域の稜線上に悠然とそびえ立つ46基もの巨大な風車。2025年4月、住友商事(以下、住商)を中心とした9社が開発に携わってきた、国内最大の陸上風力発電所「阿武隈風力発電所」が商業運転を開始しました。本シリーズは、前後編にわたってプロジェクトをクローズアップ。前編では、東日本大震災以降、「再生可能エネルギー先駆けの地」の実現を掲げてきた福島県で、完工まで約10年にわたって奮闘し続けたプロジェクトメンバーの想いや、地元の方々との歩みを映像とともにお伝えします。
異例ずくめの9社合同プロジェクトのはじまり
「阿武隈風力発電所」は東日本大震災の後、原発事故の影響で避難指示が出た福島県田村市、大熊町、浪江町、葛尾村にまたがる阿武隈地域に建設された陸上風力発電所です。住商をはじめとする9社が共同出資する「福島復興風力合同会社」によって開発が進められてきました。
「本当にできるのだろうか」
住商がプロジェクトに参画することになった2016年当時の想いを、担当者は振り返ります。プロジェクトは、震災後に「再エネ推進ビジョン」の実現を掲げる福島県の公募事業としてスタートしました。
国内外で数々の大規模事業を手掛けてきた住商にとっても、その規模感は前代未聞。1基当たり3,200キロワットもの発電量の風車を、46基も備えた風力発電所は日本に類を見ません。しかも、本事業は、住商の単独事業ではなく、国内9社による合同プロジェクト。得意分野の異なるパートナーとともに、綿密に連携を取り合いながらの「チーム戦」が求められました。
さらに、参画当時の2016年というと震災から5年しか経過しておらず、原発事故も収束していない時期。当時、阿武隈地域の大半が帰還困難地域でした。
そのような事業の見通しが立ちづらい中で、住商担当者の背中を押したのは「福島の復興に貢献する事業なんだ」という想い。まだ誰も挑戦したことがない、誰かがやらないといけないこのプロジェクトを、何としてでも成功させたい。そんな強い想いを抱いて臨んだのです。
「再エネ先駆けの地」を目指して。福島とともに新しい未来をつくる
挑戦は続きます。開発エリアは、さまざまな許認可手続きが必要な国有林。しかも、これほどまでの大規模な国有林の開発は前例がなく、行政機関も巻き込みながら手探り状態で調整を続けていきました。
そのほかにも、港が混み合い貨物船から風車を陸に上げる「水切り」が遅れそうになったり、追い討ちをかけるようにスエズ運河で事故が起きて部材の到着が遅れたりと、さまざまなアクシデントが発生。住商はそのたびに関係者との調整に奔走しました。
数々の困難に立ち向かう中で、支えになったのは地域の方の声。住民説明会で寄せられた声や、工事の合間に立ち寄った食事処で何気なく聞いた声。地域の方から意見を聞くたびに、「福島の復興に貢献するんだ」という気持ちを強めていきました。
そして阿武隈風力発電所は、約10年の歳月をかけて、ついに完工の瞬間を迎えました。しかし、これはゴールではありません。震災以降、再エネ推進を復興の柱に掲げている福島県。県内エネルギー需要の100%相当以上を再エネで生み出す「再エネ先駆けの地」の実現に向けて、地域の未来を支える力になれるよう住商はこれからもともに歩み続けます。人々の生活を豊かにする風が、今日も阿武隈から吹いています。