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2025.4.8

Business

突き詰めたのは、ワンちゃんと飼い主の幸せ。愛犬家社員の熱意から生まれた、犬用歯みがきガム「オールインワン」

総合商社として幅広いビジネスを手掛ける住友商事(以下、住商)が、アニマルヘルス分野の事業も行っていることをご存じですか?今回は、犬用歯みがきガムブランド「チューデント」で知られるハーツジャパンの国内総販売元・住商アグロインターナショナル(以下、住商アグロ)に出向中の植村佳史にインタビュー。自身も愛犬家であるという植村に、25年3月に発売された新商品「チューデント 歯みがき専用ガム オールインワン」に込めた思いについて、話を聞きました。

  • 住商アグロインターナショナル アニマルヘルス事業ユニット ペットケア事業チーム

    植村 佳史

    学生時代は理系学部に在籍。2018年に新卒入社。入社後はアニマルヘルスサイエンス部に配属され、動物用医薬品の原材料のトレード・新規事業開発を担当。2020年より住商アグロへ出向し、営業職を経て現在はマーケティングを担当。大学時代はアメリカンフットボール部主将を務めるなど、大学時代のすべてをアメフトにささげる。趣味は高校時代から継続している筋トレ。

ワンちゃんのお口周りのお悩み「すべて」をケアする画期的商品

まずは、2025年3月発売となった「チューデント 歯みがき専用ガム オールインワン(以下、オールインワン)」の特長について、教えてください。

チューデントとは、「すべてのワンちゃんが一生噛める歯を目指して。」をビジョンに掲げる、デンタルケアブランドです。そしてこの「オールインワン」はその名の通り、ワンちゃんの歯みがきをトータルでサポートするガムですね。最大の特長は、3回噛めば歯垢が落ちること。さらに、口臭ケアや舌汚れへのアプローチ、フッ素配合による歯の健康サポート、ビタミンE配合による歯ぐきの健康サポートと、お口の悩みをまるごとスッキリさせられる商品となっています。

開発のきっかけは、どのようなものだったのでしょうか。

私自身、実家でミニチュアダックスフンドを飼っているのですが、デンタルケアに関する意識として「難しい」が最も先にくるんですよね。飼い主さまはワンちゃんのことを思って歯みがきをしてあげたい一方、やはりワンちゃんにとっては慣れないもので、嫌がって暴れてしまうこともしばしばあるんです。うちの子も、できても5~10秒ぐらいでした。

そんな悩みを持つ飼い主さまは、きっと数多くいらっしゃるのではないかと仮説を立て、実際に消費者調査で確認したところ、「ワンちゃんのデンタルケアを十分にできていない」と感じている方が大半だとわかったんです。こうしたきっかけから、「ワンちゃん・飼い主さま双方に負担の少ない歯みがき」をキーワードに開発がスタートしました。

お客さまのために、細部までこだわり抜く。新商品開発を支えた価値観

オールインワン開発に至るまでの過程で、苦労したことはありましたか?

開発側が良いと思ったものが、モニターの方にまったく刺さらなかった、なんてことがたびたびありましたね。

開発過程では、複数回のサンプリング調査(※1)に加え、約100人の飼い主さまを会場にお呼びし、オールインワンを始めとするハーツジャパンの商品と他社商品を棚に陳列した上でモニター調査を行う、市場テスト(※2)を実施しました。例えば、1本当たりのガムの量。私たち開発側は、多ければ多いほど、長持ちするから良いだろうと考えていたところ、量が多くて食べ残してしまうケースもあるため、意外にも減量したサンプルのほうが評価が高かったことには驚きました。また、商品のパッケージに関しても、当初は犬の歯のシルエットを模したキャッチーなデザインを施し、シリーズ商品であることが一目で分かり、手に取ってもらいやすくなることを期待していたのですが、この意図がモニターの方には全然伝わっていなかったんです。

調査後のアンケートでは、「オールインワンを購入する」とは回答されなかったものの、「興味がある」に丸を付けてくださった方が何名かいらっしゃったので、個別にヒアリングを行い、なぜ「購入」というアクションにつながらなかったのか、購入いただくための「あと一歩」が何なのかを、徹底的に突き詰めましたね。

その甲斐あって今回発売したオールインワンには、ワンちゃん・飼い主さま双方の目線から生まれた、小さなこだわりをたくさん詰め込むことができました。ガムの形状については、犬種によって口の大きさも噛む力も全然違うので、開発メンバーの1人である獣医師と一緒に噛みやすい長さ、太さ、水分量はどれなのか、さらには人工歯垢を使いながら、ガムに入れる溝の数や深さはどれがベストなのか、何回も何回もテストを行い、試行錯誤を重ねました。また、パッケージの裏のカロリー表記もこだわりの一つで、従来は「100gあたり◯kcal」と表記していたところ、ワンちゃんの体重を気にしている方が、購入する際に内容量と表記を見て1本当たりのカロリーを計算することは手間だろうと考え、「1本あたり約◯kcal」の表記に変更しています。

※1 実際にユーザーへ商品サンプルを配布し、体験してもらった上で、アンケートに回答してもらう調査手法のこと
※2 新商品を販売する前に、限られた想定顧客やエリア、期間の中で試験的に販売し、売れ行きや顧客の反応を確認するマーケティング手法のこと

意思決定をする際に、大事にしていた観点や基準はありましたか?

オールインワンの開発は住商アグロのメンバー6人で担当したのですが、マーケティングについては、住商にキャリア入社した専門人材に期間限定で入ってもらい、二人三脚で進めてきました。その方から言われた言葉で、強く心に残っているものがあって。それは「Consumer is BOSS(お客さまがボスだ)」というものです。会社員として働いていると、自分の上司に承認のハンコを押してもらえるよう、パッケージや中身を作り上げてしまいがちなんですよね。ただ、商品を使うのは上司ではなく消費者、つまりエンドユーザーとなるお客さまなんです。当たり前のように聞こえる言葉ですが、時にはその意識が薄れてしまうこともあります。パッケージデザイン一つ、ガムの形一つとっても、意識を向けるべきはお客さまなんだ、ということをあらためて学びました。

また、商品開発も、人とのコミュニケーションも、自分の伝えたい軸を明確にすること、相手の目線で物事を考えることの両方が大事なのだと感じます。受け手のことを考えながら伝える力が身に付いたのは、新人時代の上司から受けた指導のおかげかもしれません。至らぬ自分に愛のあるご指導をたくさんいただきましたから(笑)。

すべては、お客さまのために。そういった心意気が感じられます。

ワンちゃんにとって口は、コミュニケーションの道具。ボールをくわえたり、ロープのおもちゃを引っ張りっこしたり、大好きな飼い主と遊ぶために必要不可欠な、人間でいう手足のようなものだと思っています。そんなワンちゃんの歯の健康を一心に願うことはもちろん、飼い主さまの姿をしっかりと頭に浮かべながら、開発してきたつもりです。

大切なのは、エンドユーザーに価値を届けること。ワンちゃんと飼い主に寄り添い続けるブランドへ

オールインワンの開発と並行して、「チューデント」のリブランディングも実施されたそうですね。

消費者調査の結果、犬用歯みがきガムへの不満として、「商品の種類が多くて何を選んでよいかわからない」という意見が散見されたんです。今までなら、「商品ごとの違いからわからない。面倒だからもう(歯みがきは)諦めよう」と思われていた方が、「これならちょっと試してみようかな」と前向きな気持ちになれるようなブランドに、「チューデント」を成長させていきたいと考えました。

そもそも「歯みがきガム」は「おやつ」なのでしょうか?それとも「歯みがき道具」なのでしょうか?

歯みがきを主目的にしたガムから、おやつ感覚で食べられるものまで、目的や用途に応じたグラデーションがあります。ただ、それぞれの機能を明確に訴求できてなかったせいか、同じ商品でもチキン風味のおいしい「おやつ」として使われる飼い主さまもいれば、「歯みがき道具」的に使われる方もいるなど、一つの商品に対して捉え方が多数ある状態でした。その結果、人間に例えると「カレー味の歯みがき粉」のような、機能が分かりづらいものになってしまっていたんです。商品から受けるイメージと実際に得られる効果の間にある認識のギャップこそが、ブランドが抱える大きな課題でした。

そこで取り組んだのが、オールインワン、現行品をはじめとするデンタルガム・デンタルおやつ、デンタルトイ等のバラバラだったデンタルケア商品を、「チューデント」という一つのブランドに統合させること。飼い主さま・ワンちゃん双方に負担をかけない、「スマート歯みがき習慣」を提案するブランドとして再定義しました。

さらに、パッケージにも工夫を凝らし、飼い主さまに機能をより分かりやすく訴求することを目指したんです。デザイン面では、マットな素材を使い、ライトが強く当たる売り場でも目立つように工夫したほか、ロゴデザインを一新し、「チューデント」がブランド名であることが一目で分かる囲いをつけたり、「歯の健康」をイメージさせる色使いを採用したりしました。記載する言葉についても、商品の機能がお客さまに「クリアに」伝わることを第一に、情報の取捨選択や見直しを行っています。

左:リニューアル前/右:リニューアル後

最後に、担当されているビジネスのやりがいと、今後のプロジェクトに対する思いをお聞かせください。

B to Bの仕事が多い総合商社にいながら、1人の「消費者」として自分ゴト化できる分野で、ゼロイチで商品を生み出すB to Cのビジネスに関われることに、本当にやりがいを感じています。エンドユーザーに近い「最前線」とも言える事業領域で仕事に取り組む中で、B to Bが中心の商社ビジネスも「最終的にはエンドユーザーである消費者・生活者に価値を届ける」という意識こそが重要なんじゃないかと思うようになりました。

また、お客さまのことを考えれば、オールインワンをお使いいただいた上で、その後他社商品にスイッチしていただくのも、それはそれで良いことなのかもしれません。もちろん、当社の商品を継続的にお使いいただけるのはうれしいですが、オールインワンがデンタルケアへの心理的ハードルを下げる入り口となり、その結果、1人でも多くの飼い主さまに、1匹でも多くのワンちゃんに幸せになってもらえれば何よりです。それが「すべてのワンちゃんが一生噛める歯を目指して。」をブランドのビジョンに掲げる私たちの叶えたい夢ですから。

植村と、実家の愛犬・姫ちゃん

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