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2025.1.28

Business

住商第二の創業地・神田。官民連携で挑む「歩いて楽しい街づくり」とは

住友商事(以下、住商)にとって「第二の創業地」である東京・神田エリア。1960年代から、神田警察通り周辺を中心に、さまざまな規模のオフィスビルの開発、管理運用を手掛けています。本シリーズでは、住商の神田エリアにおける街づくりをクローズアップ。第1回は、ビル事業ユニットの千谷和子と嶋田太郎に、神田の街づくりの歴史や戦略、また現在、官民連携で取り組んでいるという「歩いて楽しい街づくり」について聞きました。

  • ビル事業ユニット

    千谷 和子

    2012年に新卒入社後、住宅・都市事業部へ配属。住商建物への出向、住宅・都市事業部を経て、17年にビル事業部に異動。以来神田エリアを中心に、ビルの開発推進、既存物件の運営を担当。現在は学士会館との共同開発事業などに携わっている。

  • ビル事業ユニット

    嶋田 太郎

    2014年に新卒入社。金属経理部、大阪経理を経て、18年にアルゼンチン住友商事へ赴任。自動車流通事業第二部から23年に社内公募制度を利用してビル事業部へ異動。以来、神田エリアを中心に、「PREX」など中規模オフィスビル開発や「WORK VILLA MITOSHIRO」の管理を担当。

「神田No.1オフィスデベロッパー」が捉える街のポテンシャル

住商が神田の街づくりに携わることになった経緯や、ビル事業のこれまでの歩みを教えてください。

千谷1966年に大阪から進出してきた住商が、東京で最初に拠点を置いたのが神田です。以来、神田を「第二の創業地」と位置付け、京橋エリアや麹町エリアと並ぶ、オフィスビル事業における戦略的重点地域と定めています。とりわけ千代田区一ツ橋から神田鍛冶町に延びる神田警察通りを軸に、積極的な開発を行っており、神田エリアにおける大型オフィス(基準階300坪以上)のストックでは、他社の群を抜く4万坪超を保有・管理するなど、「神田エリアNo.1オフィスデベロッパー」を自負しています。

「テラススクエア」(左)と「KANDA SQUARE」(右)の外観

嶋田近年は、2015年竣工の「テラススクエア」や20年竣工の「KANDA SQUARE」といった大規模オフィスビル開発や、中規模オフィスビル「PREX」シリーズを展開。「WORK VILLA MITOSHIRO」など既存ビルのリノベーション事業も手掛けています。

住商が「戦略的重点地域」に定める、神田エリアの魅力やポテンシャルは何でしょうか?

千谷大企業が入居する大規模ビルから一本路地に入ると個人商店が多く立ち並び、他の大規模開発エリアにはない多様性が魅力です。歴史と新しさが混在し、オフィスワーカーだけではなく、学生街の若者や観光客などさまざまな人の出入りがあって活気があります。神田エリアのオフィスビル市況は、底堅い需要により賃料も安定していますし、最近はその独自の文化に引かれてか、働く環境を大切にする企業の移転も増えています。

嶋田神田エリアは、神田大明神や湯島聖堂をはじめ神社仏閣が多く存在し、「日本三大祭り」の神田祭も有名。私も異動した直後のお祭りで、みこしを担がせていただいたのは良い思い出です。おいしい飲食店もたくさんありますし、「働くこと以外の魅力」にも富んだ街として、選んでいただいている印象です。

千谷また、日本有数のオフィス街である丸の内・大手町や皇居に隣接しているのもアドバンテージです。エリア圏内にJRや地下鉄の駅が複数あって交通利便性も高く、その割に不動産価格が相対的に安いため、近くに住むことも可能です。私もビル事業部への異動をきっかけに、神田のことをより深く知るために4年間暮らしていましたが、まだまだポテンシャルを秘めた興味深いエリアだと感じています。

住商だからこそできる、「点」ではない「面」での街づくり

住商の神田エリア開発における戦略を教えてください。

千谷神田警察通りを中心とした「歩いて楽しい街づくり」を進めています。実は神田警察通り沿道は、周辺に神保町・お茶の水・大手町・秋葉原など個性的で界隈性のある街が点在しながら、それぞれとのつながりがあまりないという課題を抱えています。そんな中、千代田区では地域ににぎわいを生み出そうと、沿道の再整備に取り組んでいるのですが、その一つが、神田警察通りの歩道拡幅。神田警察通りは、都内でも珍しい一方通行で4車線の大通りです。そのポテンシャルを生かそうと、住商は区の都市計画と足並みをそろえて、沿道を中心とした開発を進めています。歩道拡幅の完了を見据え、多くの人々を街に誘引し、にぎわいを創出するために、最適な開発計画を日々検討しています。

例えば、私たちが携わっている学士会館の建て替えプロジェクトでは、神保町駅方面から神田警察通りへの貫通通路を設けて、新しい人の流れをつくる計画があります。また、学士会館から、神田警察通り沿いに神田駅に向かっていくと「テラススクエア」や「KANDA SQUARE」があるのですが、広場や公園では、休日にイベントやマーケットなどを開催しています。ただ無機質なオフィスビルが並ぶだけでなく、人が滞在したくなるような空地を意図的に設けているのです。ビルを1棟建てるだけではなく、こうした複数の大規模プロジェクトを手掛けることによって、地域の目指す姿である「歩いて楽しい街づくり」に貢献できるのではと考えています。

官民一体となった開発というのは、具体的にどのように進めているのですか?

千谷神田・神保町エリアのシンボルであり歴史的価値の高い学士会館との共同開発プロジェクトでは、都市計画道路である白山通りの上に立つ「学士会館旧館」を未来に残すため、東側に7m程度セットバック(曳屋)するのですが、そのためには隣接する区道を廃止する必要があります。区道廃止は、千代田区議会の決定事項であることから、千代田区をはじめとする多くのステークホルダーとの調整が必要です。計画に対して厳しいご意見をいただくこともあるのですが、「学士会館旧館」を残した上で新たに建設するビルには、1階に商業施設を入れるなどして、歩いて楽しい街並みになるよう鋭意計画を進めています。地元の方にとってもメリットのある空間となることを目指し、区の担当者への説明を何度も重ね、慎重に合意形成を進めていますね。

「土日も街ににぎわいを」という地域の方の声を胸に

開発を進める中での、住商の強みを教えてください。

千谷ありがたいことに、地元の仲介業者や地域の方からは、「神田の情報なら住商に」と、用地情報や他社も含めた大規模開発について、声を掛けていただく機会が多くあります。それは、住商が長年神田エリアに根付いて、泥くさく活動しているのを知っていただいているからだと思います。

加えて、住商のビル事業部は約30名と比較的小規模で、小回りが利く組織体制。他の不動産会社では、用地取得部隊や開発部隊が縦割りで分かれている場合が多いですが、住商では一つのチームでプロジェクトを進められるため、事業の採算性を全員が把握した上で進行できます。住宅事業の経験がある者も多いので、「オフィスビルには適さない立地」と判断された用地であっても、住宅用地としてマンション建設を提案できるなど、土地利用の最適化に柔軟に対応できるのも特徴です。開発ノウハウの知見もたまり、事業機会にも恵まれ、着実に案件数は増えています。

そうした神田の街づくりで、大切にしていることは何ですか?

千谷以前、地域の方から託された「開発をするのであれば、土日に死んでしまう、文化のない街にはしないでほしい」という言葉を大切にしています。目先の利益だけを考えれば、金太郎あめのようにどんどん事務所用途だけのオフィスビルを造っていけばいいのですが、それだと、それこそ土日に人の往来がない街になってしまいます。地域の方々や来街者が利用できる施設や空地、公共的な場所をつくることで、コミュニティが生まれ、街の文化が自走していくような仕組みができればと思っています。

嶋田神田警察通りの交差点にある、住商の旧社屋を大規模リノベーションした「WORK VILLA MITOSHIRO」は、そうした地域の方々との交流拠点の一つになると思います。ビルの1階から3階には、今回のリノベーションを手掛けていただいた「安井建築設計事務所」が入居しているのですが、今後一緒に、地域住民の方にお越しいただけるようなイベントを実施していきたいと考えています。

「WORK VILLA MITOSHIRO」の外観

「WORK VILLA MITOSHIRO」は、ビル事業部としても初の大規模リノベーション物件だったそうですね。

嶋田はい。築60年ほどの大規模ビルをリノベーションすることはかなり珍しく、さまざまな工程で困難があったのですが、結果的に、高効率空調・省エネルギー機器の導入・LED照明による300ルクスのワークプレイス設定などによって、「ZEB Oriented認証(※)」を取得することができました。古い建物の価値を見直して、再利用していこうという流れがある中で、このような成功事例ができたことはすごく意味のあること。こうしたリノベーション事業は、今後都内の別エリアでも展開していく予定です。

※高性能化および高効率な省エネルギー設備に加え、さらなる省エネルギーの実現に向けた措置を講じた、延べ面積が1万平方メートル以上の建築物を対象とした認証制度

リノベーション後の「WORK VILLA MITOSHIRO」。1階から地下1階の共有ラウンジにつながる内部階段を設置

最後にお二人の神田の街づくりへの思いと今後の意気込みを教えてください。

嶋田今後も神田エリアで、開発予定の物件が数件ありますが、これからも活動拠点にしたくなる、神田の街にわざわざ足を運びたいと思うきっかけとなるような物件をつくっていきたいと思います。

千谷地元の方々は神田を本当に愛していて、お祭りや古書店街など、この街の文化をずっと守っていきたいという思いが強く感じられます。私たちも地元の方々の思いを反映できるような開発をしていきたいです。

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