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2024.4.26

住友商事の「SOSiLA」が探る、物流施設の最適解

経済活動を支える重要な社会基盤である物流。宅配サービス利用者の増加や物流ニーズの多様化、さらにトラックドライバーが不足する「物流2024年問題」を受けて、物流のあり方は大きな転換点を迎えています。そのカギとなる拠点としての物流施設を、単なる物品保管庫ではなく、企業の経営戦略を具現化する施設、またそこで働く人や近隣地域にとっても快適で必要とされる施設として進化させるべきだと住友商事は考えました。この理念のもと生まれたのが「SOSiLA(ソシラ)」です。住友商事が物流施設に注力する理由と、未来のありたい姿を物流施設事業部長と第一線にいる社員が語ります。

  • 不動産SBU
    物流施設事業ユニット長

    千切 克彦

    1989年住友商事入社。大阪建設部(当時)に配属。2005年東京に異動して商業施設ファンドの取得を担当。2011年より新規事業として物流施設開発に取り組む。不動産投資開発事業部内に物流チームを組成し、2019年に物流施設事業部を発足。2023年物流施設事業部長に就任。

  • 不動産SBU
    物流施設事業ユニット

    川村 梨英

    学生時代は法学部政治学科に在籍。「社会を支えるダイナミックな仕事がしたい」と商社を志望し、2020年住友商事入社。物流施設事業部に配属され関東の物件開発に携わった後、2022年大阪に異動。現在は西日本の物流施設の開発に取り組んでいる。

SOSiLAは「社会・環境・人」をテーマに

住友商事が展開する新時代の物流施設「SOSiLA」。社会とのつながり(Sociability)、環境への配慮と持続的な成長(Sustainability)、人と労働環境への配慮(Individuality)の3つのテーマを基に、従来型の倉庫にとどまらない新しい物流施設の開発に取り組んでいます。第1号案件である2016年の「SOSiLA習志野茜浜Ⅲ」(千葉県習志野市)を皮切りに、これまでに18施設が稼働し、7施設を建設中です(2024年1月現在)。

独自の価値観が生み出した住商ならではの物流施設

住友商事がSOSiLAを手掛けることになった経緯を教えてください。

千切 そもそものきっかけは2008年のリーマンショックです。不動産投資が低迷する中で、どうにかして新規ビジネスを創出する必要に迫られました。そこで考えたのが、物流施設事業です。スキームとしてはデベロッパーとして物流施設を開発し、投資家へ売却するというものです。ちょうど習志野市茜浜に住友商事が関係する倉庫の隣地の売却情報を入手し、物流施設として活用できないかと考え、活動がスタート。当時、必要な知識を持っている人を探すところから始まり、一緒に開発を進めてくれるパートナー探し、開発物件の販売先確保にも試行錯誤が続き、売却先として住商リアルティ・マネジメント株式会社とともに上場REIT※1の組成に取り組みました。
既存の倉庫をただつくるのでは面白くない、という思いは当初からありました。住友商事が大切にしている価値観のひとつに「ハンズオン※2」があります。指示を出すだけ、人任せにするだけではなく、自分たちも事業の現場に参画して一緒に創り上げていく発想で す。また、住友商事の祖業は不動産事業で、大手商社の中で不動産を直接手掛けているのは私たちだけ。長年蓄積されたノウハウを生かし、住友商事だからこそ実現できる物流施設を創り上げ、不動産事業の次の大きな柱に育て上げたい。徹底した現場主義のもと、開発パートナーをはじめとする関係者と一緒にあるべき物流倉庫の姿を探り、汗をかくことで生まれたのが物流施設ブランド「SOSiLA」なのです。

※1 REIT:不動産投資信託(投資者から集めた資金で不動産への投資を行い、賃料収入や不動産売買益を原資として投資者に配当する金融商品)
※2ハンズオン:「手を触れる」という意味から、投資先や買収相手の企業経営に深く関与することを表す

お客様と働き手の期待を超える新機軸の数々

SOSiLAにはどのような特色があり、物流業界の課題の解決に寄与しているのでしょうか。

従業員の働きやすさに配慮した職場環境
ポケットパーク

千切 SOSiLAは、お客様の物流に関する課題やご要望に的確に応えるひとつの手段として物流施設を提案しており、お客様専用のオーダーメードであるBTS(Build to Suit)型の案件も多く手掛けています。SOSiLA大阪(大阪市福島区)では、住友商事と取引のある大手紙業メーカー様の工場跡地を活用。等価交換によって、施設の一部を倉庫や研究施設としてお使いいただき、それ以外を賃貸として私たちが運用しています。有効活用につながるさまざまなスキームを提案できるのが私たちならではの強みです。
また、物流の効率化や安全性、BCP(事業継続計画)対応は当然として、物流業界の慢性的な労働力不足や、働く人の職場環境改善など、さまざまな課題の解決に貢献できると考えています。

川村 立地的には、都心に近い拠点が多く、サプライチェーンの絶好の結節点の役割を担い効率的な配送が可能です。人が多く住む地域に近いことから労働力も確保しやすく、安定的な施設運営が期待できるのです。

千切 働く方々にとって魅力的な職場づくりを目指していることも譲れないこだわりですね。アートが飾られたラウンジやパウダールームなど、従業員が快適に働くことのできる施設環境は、運営側からも好評です。従業員の皆さんに「ここで長く働き続けたい」と思っていただくことが、物流倉庫としての品質向上にもつながると考えています。

川村 地域との共生も大切にしています。親子連れが遊べるポケットパークや、自主管理歩道の設置など、敷地の一部を開放して近隣の方々にも愛される施設づくりを進めています。多くの拠点で、地元自治体と連携し、災害時に防災拠点として活用していただく協定も結んでいます。

千切 あとは、商社の総合力を生かし、自社が開発したシステムをご提案できるのも当社ならでは。物流事業部が手掛けているリアルタイム進捗管理ソフト「スマイルボードコネクト」は、倉庫内の作業を見える化することで業務効率化が期待できるソリューションです。

入社2年目、スマートガラスの物流施設日本初導入を主導

若手の川村さんが特に印象に残っている出来事はなんですか?

川村 SOSiLAの中でも最大級のSOSiLA中央林間を担当していた入社2年目のことが忘れられません。屋外からの光の取り入れを最適化することで電力負荷の低減が期待できる米国製のスマートガラスを導入する話が持ち上がりました。日本で物流施設に取り入れられた実績はなく、また導入には多額の費用が必要です。チームリーダーに相談したところ、「川村さんのやりたいようにやってみよう。バックアップはするから」と一言。効果検証から始まり、国内の販売代理店との価格交渉、現場の施工会社と米国のスマートガラスメーカーを引き合わせ技術的な課題をクリアするための打合せまでリードして進め、なんとか導入にこぎつけた時は達成感がありましたね。

一人一人に与えられる裁量が大きいのですね。

川村 そうですね。現在、私が所属している大阪の開発チームも4人と小所帯ですが、その分、一人一人が自由に考え、動き、必要なときに 助け合うイメージです。

千切 物流施設事業部には4つのプロジェクト開発チームのほか、テナントを誘致するリーシングや品質管理の担当チームがあります。さら に多くのメンバーが物流DXやカーボンニュートラルについて検討するイノベーションチームを兼務しています。プロジェクトを推進するメンバーが同じチームの中で、開発、リーシング、管理者のそれぞれの目線を共有することで、縦割りに陥らないチーム横断のものづくりを進めています。
川村さんをはじめ多彩な個性が、変化を先取りして新たな価値創造に挑戦し、チームSOSiLAとして新たな物流を一緒に共創していく組織でありたいと思っています。

社会に必要とされている手触りのある仕事を

今後の目標や意気込みを聞かせてください。

川村 私が住友商事に入社したのは、社会に必要とされていると実感できる仕事がしたかったから。今の仕事はまさにその手触りが感じられる仕事です。用地取得から完成後のリーシング、日々の運用まで責任をもって最後まで見届ける、そんな施設づくりを進めていくことがこれからの挑戦です。お客様のため、さらにその先にある日本の物流業界が抱える課題解決の一助になれたら幸いです。

千切 これまで年間3施設をめどに開発を進めてきました。今後、国内でのエリア拡大をさらに進め、年間資産規模650億円の開発を進めるのが当面の目標です。今後は物流施設に加えて新たなアセットを模索すべく、これまでの物流施設の枠組みを超えて、データセンターや工場、研究開発センターなど産業活動の拠点の開発をしていくことが次のステップだと考えています。

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