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2024.9.20
Business
所沢駅西口にエミテラス所沢開業!西武グループと住商が10年にわたり取り組んだ街づくり
地域に根ざした都市開発で、住友商事(以下、住商)において独自性のある事業の一つであり続けてきた不動産事業。いくつもの商業施設やオフィスビル、マンションなどを手がける中で、埼玉県所沢市においては、西武グループとタッグを組んで、約10年にわたって所沢駅周辺の商業施設開発に取り組んできました。2024年9月には、駅前開発の“最後のピース” とも言える、西口の広域集客型商業施設「エミテラス所沢」が開業。両社の担当者が街づくりへの思い、ビジョンを語り合います。
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西武リアルティソリューションズ
都市開発事業部長 兼 都市開発事業部 沿線開発事業室長佐藤 龍一
1994年に西武鉄道へ入社。工務部や経理部を経て、西武HD第一事業戦略室(現第一事業戦略部)で西武グループの再編業務や西武鉄道全般の業務に携わり、2014年から西武プロパティーズ(現西武リアルティソリューションズ)の施設管理業務で設計・工事監理等に参画。グループ連結子会社の伊豆箱根鉄道への出向を経て、20年4月から現職の西武鉄道沿線等の開発業務に携わる。
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住友商事
商業施設事業ユニット朝日 直樹
2006年の入社以来、一貫して不動産事業に従事。マンション開発事業、米国でのトレイニーを経て、12年から商業施設事業ユニットで商業施設の用地取得・開発・運営を経験。所沢の開発は13年のプロジェクト発足時から担当しており、以来10年以上、駅前商業施設「グランエミオ所沢」「エミテラス所沢」の開発・運営に携わる。
西武グループの重要拠点・所沢をベッドタウンからリビングタウンへ
まず西武グループと住商が取り組んできた、所沢駅前の再開発事業の歩みについて教えてください。
佐藤 今から10年前の2014年、西武グループとして「所沢エリア開発全体基本方針」を発表し、所沢駅前を起点に、所沢エリアと西武線沿線のさらなる魅力とにぎわいづくりを目指すことになりました。というのも、西武鉄道の主要路線である新宿線と池袋線が交差する所沢駅は、1日あたりの乗降客数が約10万人、改札内の乗り換え客数は約10万人と、合わせて計20万人以上が利用する重要な交通結節点です。ただ基本方針を定めた頃は、典型的なベッドタウンで昼間人口が少なく、そのポテンシャルを生かしきれていませんでした。
そこで、所沢駅前に新しい生活交流拠点を創出することで、これまで所沢になかったさまざまな利便性とコンテンツを提供し、「ベッドタウン」から暮らす・働く・学ぶ・遊ぶの4要素がそろった「リビングタウン」への転換を図る方針を定めました。西武グループとしてもこれまで多くの駅ナカ・駅チカ商業施設を手がけてきましたが、街全体に関わる大規模な再開発をする上では、駅所有者である私たちだけでなく、伴走支援してくれるパートナーの必要性を感じ、住商とタッグを組んで開発に取り組むことになりました。
数ある事業者の中から、西武グループが住商をパートナーに選んだ決め手は何だったのでしょうか?
佐藤 住商は商業施設開発において、その地域が育んできた価値や特性に合わせた「地域メイド」の開発・運営を掲げており、その姿勢に西武グループが共感したことが大きな理由です。「テラスモール湘南」をはじめ、全国で大型の商業施設を展開されており、そこで培われた開発・運営ノウハウにも期待していました。
朝日 住商は「プラーレ松戸」「セルバ(仙台市)」「ミウィ橋本」「御影クラッセ」など全国各地で商業施設の開発・運営をしていますが、基本的に施設の名称はバラバラなんです。それはなぜかと言うと、開発に携わってきた担当者が地域ごとに価値観や特性を見極めながら一つ一つ名付けてきたから。そんな中でテラスモール湘南は住商が培ってきたノウハウを詰め込んだ一つの集大成のような施設になったこともあり、実は社内では「テラスモールシリーズをどんどん増やしていこう」という大命題があるのですが、一番大切なのは1世紀以上にわたって所沢の街を見つめてきた西武グループの思いに寄り添うこと。もしかしたらブランディングを優先して、「テラスモール所沢」に固執することもできたかもしれませんが、そうではなく西武グループの商業施設「エミオ」と住商の「テラスモール」、両社が大切にしている名称を掛け合わせた「エミテラス所沢」として、独自の商業施設開発に取り組みました。
駅直結という地の利に「Terraceの思想」を掛け合わせ、唯一無二の街づくりを
今回2社がタッグを組むことで、どのようなシナジーが生まれましたか?
朝日 住商は全国でさまざまなタイプの商業施設を開発・運営しており、私自身いくつもの商業施設事業に携わってきましたが、今回のプロジェクトではたくさんの学びがありました。その一つが、鉄道事業者である西武グループとの取り組みだからこそ実現する、“本当の駅ビル”の地の利を生かした商業施設開発です。住商はこれまで「駅から徒歩1分」の駅ビル開発には携わってきましたが、グランエミオ所沢は駅の改札を出たらすぐに商業施設という、まさに“駅直結”の立地。また、鉄道のみならずグループ内でバス、タクシー、駐車場、駐輪場等のあらゆる交通に関係するビジネスを沿線全体で展開されている強みを改めて感じました。西武グループの沿線におけるゆるぎない基盤と住商の運営ノウハウや総合商社ならではのネットワークを活用していくことで、地域にふさわしいより魅力的な商業施設にしていけるという自信があります。
駅前開発では20年に東口のグランエミオ所沢が先に開業していますが、24年9月開業のエミテラス所沢はどのような位置付けになりますか。
朝日 エミテラス所沢のコンセプトは「TOKOROZAWA New Suburban Life」。都市と郊外の二つの魅力を享受できる暮らしや新しい体験を提供していきたいと考えています。東口のグランエミオ所沢と比べると西口のエミテラス所沢は、遠方からのお客さまも見越し、長時間の滞在を想定しています。富士山を一望できる屋上庭園や、森をイメージした約1,000席の一大フードコートなどを設置。これまでテラスモールで好評を博してきた、「楽しく、快適で、何度でも来たくなる居心地の良い空間の創出を目指す」という「Terraceの思想」や、家庭でも、職場や学校でもない「サードプレイス」を創出するというコンセプトを生かしています。
佐藤 所沢は池袋駅から最速19分、西武新宿駅から最速28分という都心からのアクセスの良さに加え、所沢航空記念公園などみどり豊かな自然を感じられるエリアのほか、私たちが運営する西武園ゆうえんちや国内で12しかないプロ野球球団の本拠地であるベルーナドームなど、レジャー・エンターテインメント施設も点在しており、生活者にとって唯一無二の魅力があるエリアだと思っています。今回オープンするエミテラス所沢には、遠方からのお客さまにもお越しいただき、そこで長時間滞在し街の良さを知ってもらいたい。そして将来的には所沢に住んでいただきたいという思いを抱いています。
どのように街づくりを進めていくべきかという点においては、行政とも連携して議論しています。所沢駅に降りた人が街を回遊しやすいように、市が道路やペデストリアンデッキの整備を行い、私たち民間事業者はより多くのお客さまが訪れたくなるような施設づくりを行うなど、官民連携の街づくりを進めてきました。
具体的にエミテラス所沢はどのような施設になっているのでしょうか?
佐藤 埼玉初出店や地元の名物店など、全142の多様な店舗を展開しています。 ジャンルは、ファッション、雑貨、飲食、映画館など。特に子育てファミリー層とアクティブシニア層のニーズを意識し、都心に出ずとも一カ所で何でもそろうような利便性を追求しました。
注目していただきたいのは、2階の中心部分に位置する547インチの大型ビジョンを備えた635平方メートルの大空間「TOKOROZAWA e-CUBE」。角川武蔵野ミュージアムなど市内近隣の文化施設とのコラボレーションを通して、新しい体験価値を提供できればと考えています。ちなみに今回の施設は、西武鉄道所沢車両工場跡地に建てられており、同⼯場のレガシーとして当時の引き込み線があった場所の一部にレールを設置するなど、施設の新しいシンボルとして歴史を伝える仕掛けも施しています。
移住者の増加も見据えて。駅前から所沢エリア全体の価値向上に貢献する
最後に、今回のプロジェクトにおけるチャレンジを振り返るとともに、今後の街づくりへの意気込みをお聞かせください。
朝日 この10年においては、ちょうどコロナ禍と重なった20年のグランエミオ所沢の開業は特にチャレンジングなことでした。本来多くのお客さまに来ていただきたいはずの開業時期に密にならないようにしなければならない、そんな矛盾を抱えながらの開業となり、当初思い描いていたスタートダッシュは切れませんでしたが、地域住民の方や鉄道利用者に支えられながら右肩上がりで成長を続けています。そういった意味でも、今回のエミテラス所沢は満を持しての開業となります。
また近年、不動産業界全体の傾向として、物価上昇や建築費の高騰によって、大型の商業施設を開発するのが以前と比べて容易ではない状況なので、このタイミングで店舗面積約4万3,000平方メートルもの大型商業施設が開業できたのは幸運でした。想定しなかった事態が起こりながらも、クオリティーは譲らずプロジェクトを実現できたことに感謝しながら、グランエミオ所沢とあわせて、オープン後のこれからも、街全体の成熟とともに施設を進化させ続けたいと思います。
佐藤 街づくりは、沿線地域の方々の理解がないと進めることができません。開業後も所沢をすてきなリビングタウンにしていくというビジョンの実現に向かって、住商とともに地域を盛り上げ、努力を積み重ねていきたいと思います。
朝日 そうですね。所沢駅前だけの開発に終わらせず、商業施設のお客さまが近くの商店街まで足を延ばしたり、バスに乗って角川武蔵野ミュージアムなどがある「ところざわサクラタウン」に行ったり、街全体の回遊性を生み出していきたいですね。来街者を増やして、ゆくゆくは移住者の増加にもつながるよう、西武グループと住商とのシナジーを増幅させていきたいと考えているので、今後もぜひご期待ください。