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2026.4.30
Business
デジタルで新たな価値を創る。住商グループのDXを加速させるプロ集団・Insight Edge
住友商事(以下、住商)は、中期経営計画2026で掲げる「デジタルで磨き、デジタルで稼ぐ」の実現に向け、デジタル・AI戦略(Digital & AI Strategy:DAIS)のもとDXの取り組みを加速させています。そうした取り組みを中核的に担う存在の一つが、2019年に設立されたDXのスペシャリスト集団「Insight Edge(インサイト・エッジ)」です。これまで約200件のプロジェクトを支援してきた彼らは、最先端の技術を武器にしながらも、その視線は常に「現場でいかに価値を生み出せるか」に向けられています。今回は、リードデータサイエンティストの梶原善之と、コンサルタント兼デザインストラテジストの楠秀大にInsight Edgeの真価について聞きました。
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Insight Edge
エンジニアリング部梶原 善之
Yahoo! JAPANに新卒入社。動画配信サービスにおける推薦モデルの開発およびデータ分析基盤の構築に従事。その後アクセンチュアにて、大手電力会社のDX推進を担当し、複数のAI開発プロジェクトをリード。2022年にInsight Edgeへリードデータサイエンティストとして参画。主にショップチャンネルおよびインフラ事業におけるDX支援に従事。
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Insight Edge
セールスコンサルティング部・デザイン部楠 秀大
住友商事に新卒入社後、DXセンターにて国内メディア事業、自動車系製造事業、シンクタンク事業等の業務効率化・バリューアップ支援、ブルーエコノミー事業開発支援を担当。 2023年10月よりInsight Edgeに参画し、新規DX案件の創出、コンサルティング、プロジェクトマネジメント、プロモーション活動等に従事。
総合商社の「インサイダー」として現場に伴走するDXパートナー
まず、Insight Edgeが設立された背景を教えてください。
楠 住商は、総合商社ゆえに事業領域が幅広く、解決すべき「現場」の課題も多種多様です。小売に近い事業もあれば、インフラやエネルギー関連の事業もあり、商社ならではの領域に深く入り込むケースも多く、一般的な外部のITベンダーでは現場の業務理解が追いつかないという課題がありました。こうした中、デジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みを進めるにあたり、現場により深く入り込み、課題解決に取り組める体制の必要性が高まっていきました。
梶原 加えて、「スピード感」と「ノウハウ蓄積」の問題もありました。AIをはじめとする技術が急速に進歩する中では、デジタルソリューションを素早く試し、改善しながら実装へ持っていく体制が欠かせません。しかし、外部パートナーへの委託を前提とすると、都度の契約や調整に時間がかかって機動力が落ちてしまいますし、何より知見やノウハウがグループ内に残りません。そこで、先端技術を実際のビジネスへ適用し、ノウハウを蓄積しながら、現場と同じ目線で利益創出や社会課題解決に取り組む「内製DXスペシャリスト集団」として、2019年にInsight Edgeが設立されたのです。
Insight Edgeの強みや特徴を教えてください。
梶原 Insight Edgeは幅広いデジタルソリューションを提供しており、その中でも近年は生成AIの分野で特に強みを発揮しています。2023年4月に住商内で設立された生成AI活用推進組織「SC-Ai Hub(スカイハブ)」では、Microsoft 365 Copilot展開を担うIT企画推進部等と連携しつつ、Insight EdgeとSCSKが技術面での支援を担っています。現場から挙がってくる生成AI活用のアイデアをもとに、迅速に開発・実装を進め、効果検証まで伴走することで、数多くの生成AIソリューションを実際の業務現場で活用できる形にしています。
また、標準化しきれない領域やカスタマイズが必要な領域に対応できる点も強みです。商社では複雑な要素が絡むテーマを扱うことが多く、既存のSaaSのようなパッケージ導入で対応できないこともあります。そんな中、知見とケイパビリティを注ぎ込み、オーダーメイドで解を形にすることがInsight Edgeの存在意義です。 PoC(概念実証)で終わらせない点もInsight Edgeの特徴で、25年度(Q3まで)は21件のPoCすべてが商用化に至り、本番導入率は100%(※1)でした。
楠 Insight Edgeは外部の発注先というより、住商の「中の人」に近い立ち位置で、「そもそも何を実現したいか」を事業や業務の視点から一緒に考えます。拠点も住商の執務エリア内で、ラフに会話できる距離感です。
住商グループには近しい存在としてSCSKがありますが、役割分担で言えば、Insight Edgeは住商内のSBU(Strategic Business Unit/戦略事業単位)や事業会社の「インサイダー」として、不確実性の高い課題をビジネス視点で捉え、まず形にして実装へつなげるのが強み。一方SCSKは、顧客要件を確実に開発・運用し、スケールさせる総合力が強みです。
※1 本番導入率は、本番導入を目的として取り組んだユニーク案件のうち、すでにクローズしている案件を対象に算出。本番導入完了案件数を、本番導入完了案件数+PoC後クローズ案件数で割って算出。
高い専門性×商社パーソンの「現場」視点で真に使えるDXを
Insight Edgeを支えるメンバーには、どのような特徴があるのでしょうか。
楠 総合商社の多様な課題に対応できるよう、幅広いスキルセットを持ったDX人材が集まっています。プロパー社員のほぼ100%がキャリア採用で、メガベンチャーや大手SIer、外資系コンサルティングファームなどで活躍してきた即戦力が中心です。データサイエンティストだけでも、金融、製造業、医療といった幅広い業界の経験者がそろっています。最大の強みは、こうしたデータサイエンティストやアジャイル開発エンジニアに加え、コンサルタント、UI/UXデザイナー、デザインストラテジスト、ビジネスプロデューサーといった多様な専門家がチームを組む点です。各領域のプロフェッショナルが初期段階から知見を掛け合わせることで、事業構想や課題整理から、PoC、スケーラブルなシステムの実装・運用まで一気通貫で伴走できる体制が整っています。
梶原 アカデミックな専門性を持つメンバーも多く、データサイエンティストはほとんどが大学院修了者で、博士号取得者も複数名在籍しています。また、エンジニア陣にはAWSやGoogle Cloudの上位認定資格や、セキュリティの最難関資格である「CISSP」など、高難易度の資格を持つメンバーが多数在籍しています。また、大学で非常勤講師を務めるメンバーも在籍していたり、自社で開発したソフトウェアをオープンソースとして公開していたりなど、組織全体で高い技術力を備えています。そうした最先端の研究知見や高度な技術を持つメンバーが、机上の空論にとどまらず、実際の事業インパクト(収益向上やコスト削減)に直結させる「社会実装力」を持っているのが私たちの強みです。高い水準の専門知識を持つ技術者でありながら、共通しているのは、Insight Edgeの3つのバリュー「やり抜く」「やってみる」「みんなでやる」を体現している点です。中でも「やり抜く」というバリューは、商社パーソンのマインドに非常に通じるものがあると感じています。住友商事の社員と常に近い距離でディスカッションを重ねながら事業に向き合うことで、この「やり抜く」力が日々より一層高められているのも、私たちの大きな特徴だと思います。
組織変革と技術実装を同時支援。自走のアシストでグループ利益を最大化
「ショップチャンネル」を運営するジュピターショップチャンネルとのプロジェクトは、そんなInsight Edgeの価値を象徴する事例だそうですね。
梶原 始まりは22年下期、売り上げ予測をAIで行う短期のプロジェクトでした。そこで一定の成果が得られた中で、新組織「データ戦略部」立ち上げ支援の相談を受け、プロジェクトが始動しました。プロジェクトのフェーズは大きく分けて2つ。フェーズ1では、現場理解から課題の棚卸し、優先順位付け、組織のミッション・育成設計までを一貫して支援しました。データ戦略部が新設された当初は、組織として目指す姿のすり合わせや、メンバーが従来業務の枠を超えてDXを推進していくための仕組みづくりが急務となっていました。そこで、ショップチャンネルの中でも特にDXの余地が大きいと見込まれる6部署に対し、累計20回以上にわたるヒアリングを行い、約70件もの現場のニーズやDXの糸口を抽出。準備や調整の負荷は非常に大きかったのですが、そのプロセスを経たことで、現場の実態に対する解像度を格段に高めることができました。また、「組織のあるべき姿」を言語化するワークショップも実施し、「データ戦略部を職業に例えるなら?」など、理想像を具体化し、必要スキルの定義や研修設計へ落とし込みました。こうしたサポートは、Insight Edgeが技術者だけでなくデザインストラテジストのような幅広い人材を抱えているからこそ、できることです。
楠 フェーズ2では、フェーズ1で策定したロードマップに基づき、「データ戦略部メンバーのスキルアップ支援」と「具体的なDXプロジェクトの推進」を並行して進めました。教育面では、必要なスキルセットや評価基準を定義するだけでなく、独自の研修も実施しています。Insight Edgeは住商グループやSCSKのクライアントに対する研修実績があり、実践的な教育メニューを提供できる点も強みの一つです。一方、プロジェクト推進においては、期待インパクトの大きなテーマに加え、「早期に成果が出るもの」や「メンバーのスキル習得に適したもの」を戦略的に選定。Insight Edgeのメンバーが伴走するOJT形式で、二人三脚の体制を構築しました。ここで象徴的だったのは、Insight Edgeが持つデータ分析やPythonの専門知見と、ショップチャンネルが持つ深い業務知識が融合し、理想的な相補関係が築けたことです。ショップチャンネル本社内にInsight Edgeメンバーの席を用意していただいたことで、物理的な距離が近くなり、非常に密度の濃い連携が実現しました。
実際にDXを推進していく中で苦労したことは何ですか?
梶原 目標スキルの定義です。将来を見据えて非常に高いスキルレベルをご提案したため、当初は合意形成に苦労しましたが、「将来の自走には絶対に必要です」と熱意を持って説得しました。その後は独自のカスタム教材も活用し二人三脚で丁寧に伴走。結果、現在は目標のスキルを身に付け、現場で自走できるようになっています。
DX支援により具体的にどのような成果が生まれたのでしょうか?
梶原 これまでに7件の取り組みが実際に業務に導入されて成果を出していますが、ここでは代表的な案件を2つご紹介します。1つ目は番組編成業務の自動化です。モデル化により業務時間を約7割削減。1週間かかっていた編成案作成が数時間で終わるレベルになり、「革新的」と評価されました。特に番組編成業務は、約30年にわたって蓄積されてきた「担当者の経験と勘」という暗黙知がベースとなっており、非常に困難な作業でした。それら暗黙知を整理し、数式に落とし込むには、相当な時間と工夫を要しましたが、この整理こそが現場で使えるシステムにするための肝となりました。
2つ目はECサイトでの生成AI活用です。一部未掲載の商品説明文案を商品情報を基に生成AIで作成し、説明文を掲載した方が売り上げ向上につながることを検証して実装しました。
Insight Edgeの持続的な収益性を考えると、受託開発という選択肢もあったかと思いますが、現場の試行錯誤に寄り添う形をとったのはなぜでしょうか。
梶原 本ケースにおいては、最終的にデータ戦略部がデジタル施策を自走で回せるようになることが、ショップチャンネルにとっての最適解だと考えたからです。受託の方がInsight Edgeにとっては収益面で有利かもしれませんが、私たちは住商グループの一員として、グループ全体の利益最大化を優先します。外部に頼るより各社が内製することでコスト効率が高くなりますし、何より知見が蓄積されます。業務知識を持つ人材が企画段階から関わればアウトプットの質も高まります。
「磨く」から「稼ぐ」へ。業界標準のソリューションを創りあげる
住商が掲げる「デジタルで磨き、デジタルで稼ぐ」を実現する上で、Insight Edgeはどんな価値を提供しているのでしょうか。
梶原 これまではグループ内の多様な現場課題に対し、本質を捉えた最適なデジタルソリューションを形にし、業務効率化や生産性向上、つまり「デジタルで磨く」に寄与してきました。最近は「磨く」から一歩進め、蓄積知見を活用して新規事業創出を目指す「デジタルで稼ぐ」も徐々に進んでいます。そうしたフェーズに入った今、内製組織として持ち続けてきた「現場にしっかりDXの恩恵を受けてほしい」という思いが、私たちの強みになると思います。目先の利益を優先するのではなく、真に現場やビジネスにとって価値あるDXを届ける。そして、導入して終わりではなく、しっかりと成果が出るまで長期的な目線で伴走し続ける。そうした実直な姿勢こそが、Insight Edgeの提供できる価値だと考えています。
最後に、今後の展望について教えてください。
楠 住商が掲げるデジタル・AI戦略(DAIS)の実現に向けて、私たちInsight Edgeとしても、まずはこれまで以上に住商グループ各事業のDXを着実に形にしていくことで貢献していきたいと考えています。そのうえで、これまでにグループ内で培ってきた知見やケイパビリティを生かし、グループ外に向けた価値提供にも取り組んでいきます。とりわけSCSKとは連携を一層深め、Insight Edgeの企画力とSCSKの構築力を掛け合わせた「共同提案」を推進しています。両社の強みを融合することで、内と外の両軸においてシナジーを磨き上げていきたいと考えています。
梶原 将来的に目指したいのは、Insight Edgeが手がけた解決策が「業界標準」となる未来です。オーダーメイドで培った経験を汎用化し、産業そのものの変革に寄与するソリューションを生み出していきたいと考えています。住商グループの「デジタルで磨き、稼ぐ」を体現できるよう、一丸となって外部へも価値を届けていきたいですね。