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2025.11.4
Culture
コスト削減効果は年間約12億。住商の「生成AI活用」最前線
                        2024年4月、住友商事(以下、住商)では、海外グループ会社を含む約9,000人が「Microsoft 365 Copilot」(以下、Copilot〈コパイロット〉)の一斉利用を開始しました。25年10月現在、月間アクティブユーザーは約90%に達し、コスト削減効果は年間約12億円に上ります。今回は、「文化」としてのCopilot定着を目指し、最前線で指揮を執るIT企画推進部の浅田と、組織一丸となってCopilotの活用を推し進めている森林資源事業ユニットの2名に、これまでの導入成果や活用方法について、話を聞きました。
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                                    IT企画推進部 / Microsoft MVP
for Microsoft 365 Copilot浅田和明
広報部で制作・報道業務に従事後、22年10月よりIT企画推進部でMicrosoft 365や生成AIの企画・推進を担当。PRの経験を生かし、システムを魔法の杖としない、ユーザー中心の教育・展開活動に注力。25年3月よりMicrosoft MVP for Microsoft 365 Copilot受賞。生粋の大阪人。
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                                    森林資源事業
ユニット髙井裕子
紙パルプ、肥料、穀物と商材は変われどトレード一筋。現在は木質バイオマスペレットの輸入トレードを主業務とする傍ら、ユニット全体の内部統制、ITリテラシー、サステナビリティリテラシーの向上に取り組む。
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                                    森林資源事業
ユニット牟田和樹
2018年に当社へ新卒入社後、ニュージーランドにおける森林事業を担当。中国住商 東アジア事業開発グループでのトレイニーを経て、2024年7月より米国における森林事業をはじめとした新規事業開発業務に従事。
 
生成AIを「使って当たり前」に。意識から変えるCopilot浸透策
Copilot導入における、これまでの成果を教えてください。
浅田 24年12月時点で、業務時間の削減効果は1カ月あたり約1万時間、コスト削減効果は年間約12億円に上りました※。生成AIの展開によくある「ユースケース」「ゴールデンプロンプト」を配布していく施策ではなく、社員が自分で使いどころを考え、「副操縦士」「優秀な部下」として活用できるようになることを目指した施策を進めてきています。
                    メールの要約や会議のまとめ、壁打ちなどの日常業務での小さな使い方から、投資先分析や財務分析など、より高度な使い方までさまざまな利用シナリオが出てきています。毎日のように利用する方は2000人近くまで登り、生成AIの定着とCopilotの進化が相まって、削減効果も右肩上がりとなっています。また、社内での月間アクティブユーザーは90%に達していますが、私個人としては、この数字に満足していません。究極的には、Copilotを活用できる人の月間アクティブユーザー数は、100%になるべきだと考えています。
住商グループでは、なぜCopilotを一斉導入したのでしょうか?
浅田 Copilotは、私たちが日常的に利用しているTeamsやOutlookといったMicrosoft 365のアプリケーションと連携しており、慣れ親しんだ画面からワンクリックで生成AIを使うことができます。しかも、メールやチャット、会議録画などMicrosoft 365に蓄積された膨大なデータから、必要な情報を探し当ててくれるので、社内のナレッジを有効活用することもできる。こうした点から、住商グループの全社員に生成AI活用を浸透させるにあたっては、Copilotが最適だと考えたためです。
                    
                    導入後は、どのようにCopilotの活用を広げていったのでしょうか?
浅田 私が所属するIT企画推進部が指揮を執りながら、段階的に施策を進めてきました。目標は、PCやスマートフォンのように意識することなく「当たり前」のものとして、全社員が日常的にCopilotを活用している状態に持っていくことです。そのレベルまで浸透させることができれば、ルーティンワークはCopilotに任せ、私たちはよりクリエイティブな仕事――社会に対して新たな価値を創り出す、住商のビジネスの本質と言える仕事に注力できるようになるはずです。
そのために最も重要視しているのが、Copilotに対する意識改革です。使いやすさの周知はもちろんのこと、Copilot活用に意欲的な社員にアンバサダーとして手を挙げてもらう「Copilot Champion(以下、チャンピオン)」を設けたり、社内にAI活用を促すポスターを貼ったりと、Copilotへ自然と意識が向くような取り組みを行ってきました。
さらに今後は、チャンピオンの方々と連携した取り組みを加速させつつ、各人のCopilot活用術をTipsとして共有してもらうための、情報発信の場を作っていく予定です。一人一人が発信することで、初めはTakerだった人もGiverへと変化し、住商社内の「文化」が醸成されていく。そうした意識レベルの変化を積み重ねていくことで、真の業務変革を起こしたいと考えています。
                            部署全員にCopilotを使ってもらうには?――森林資源事業ユニットの場合
Copilotの活用を推進するにあたり、森林資源事業ユニットにはどんな課題がありましたか?
                    牟田 当ユニットは「持続可能な森林経営」と「木材製品の供給」をグローバルに行っており、事業内容は植林、育林、伐採、木材の加工事業から、製紙・燃料用の木質チップ・ペレットのトレードまで多岐に亘ります。木材事業は当社の中でも歴史があり、ユニットには幅広い年齢層からなる約50名のメンバーが所属しています。そのため、業界慣習として昔ながらのやり方が浸透していること、ITリテラシーの個人差が大きいことが、Copilot活用においての課題でした。
髙井 そうした課題感があるなか、まず私が個人的に生成AIに興味を持ち、チャンピオンに手を挙げ、IT企画推進部が企画する全社向けの「Copilotセミナー」に参加するように。回数を重ねるうちに、「ユニット全体の効率化や事業成長に絶対に役立つ」と確信が深まりました。そこで、私と同じくチャンピオンである牟田さんと一緒に、ユニット内でのCopilot活用を進めようと動き始めたのです。
Copilot活用のための取り組みと、これまでの成果を教えてください。
髙井 誰一人取り残すことないよう、ユニット全体のITリテラシーの底上げを図ることを目標に、施策を進めてきました。まず、24年12月に2度の研修を実施しました。浅田さんに講師を依頼して、1度目は全員参加必須の「基礎編」、そして2度目は自由参加の「応用編」です。応用編も参加率が高く、具体的な活用方法を伝えながら実際にCopilotを触ってもらったところ、「こんなことができるんだ」と多くのメンバーが感動していました。
牟田 もちろん、デジタルツールに不慣れな方々には、少なからず抵抗感があったと思いますが、体験を通じて「これは業務に役立つ」、「案外簡単だね」といった感想をいただきました。こうした取り組みにより、ユニット全体で「Copilotを積極活用していこう」というポジティブな雰囲気が生まれたように感じます。その後は、メンバーを複数グループに分けて「Copilotの活用方法」を話し合うグループワークを実施。さらに、25年3月に実施したユニット全員が一堂に会する合宿内で、グループワークの成果を発表してもらいました。
髙井 合宿では、「契約書の確認」や「購読物の要約」、「顧客情報の共有・検索効率化」といったアイデアが挙がってきました。特に契約関連については、当ユニットはロングタームの契約が多いため、契約書が分厚くなりがちです。そのため、契約書の中から必要な箇所を抽出したり、更新時に新旧の契約書を比較して差異を抽出できたら便利だよね、と。このほか、「業界紙などの要約を作成したい」「出張レポートや商談メモなどを共有・蓄積して、検索を効率化させたい」というアイデアもありました。
                    
                    牟田 合宿は、さまざまな気づきを得られる良い機会でした。現在は、合宿で中心的な役割を担ったメンバーによる「DXワーキンググループ」を立ち上げ、各アイデアの実装に向けて取り組んでいます。約2週間に1度の頻度で集まり、まずはユニット全体でのデータベース構築に向け、いつ・どこに・どのように情報を格納するかといったルール作りを進めています。本格的な運用に至るのはまだ先ですが、個人レベルではかなりの人数がCopilotを日常的に活用していると感じます。
お二人は、どのようにCopilotを活用し、ユニット内へ広げていきたいと考えていますか?
髙井 例えば、日々の業務では大量に受信するメールはCopilotに要約してもらい大体の内容をつかんだり、返信メールもアシストしてもらうことで少しずつ余裕が生まれます。特に、契約書の比較や決算書などの分析ですね。従来は数時間かかっていた作業が30秒ほどで完了することで、タイムマネジメントが容易になり、お客様対応に時間をかけられるようになったり、今までやりたいと思っていたことに着手できたりと、さまざまな恩恵を受けています。
牟田 私の場合は、業界紙データの読み取り・分析や、初期的な業界・商材概要の把握、仮説出しに活用しています。今後、ユニット内での活用がさらに進めば、情報共有の円滑化・データの蓄積が可能になり新規事業のアイデア出しがよりスピーディーになると期待しています。DXワーキンググループでの検討内容を早期に実現できるよう、髙井さんとともに活動を継続していきたいです。
浅田 森林資源事業ユニットはCopilotに対して非常に前のめりで、講師として参加させていただいた研修の雰囲気も非常に良かったのが印象的でした。やはり大切なのは、彼らのように組織の働き方を変えていこうとする風土そのものではないでしょうか。そして、そのための業務プロセスを浸透させる手段としてCopilotがあるのだと考えています。
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住友商事さまがMicrosoft 365 Copilotを全社導入され、社員の皆様が自発的に活用を進めておられる姿勢に感銘を受けています。特に部門横断での活用推進と自律的な活用文化の醸成は、市場を牽引する先進事例となっています。Microsoft 365 Copilotの可能性がさらに広がることを期待し、今後の共創を楽しみにしております。
(日本マイクロソフト株式会社 クラウド&AIソリューション事業本部 モダンワーク統括本部 統括本部長 業務執行役員 横須賀 周平)※Microsoft、Azure、Microsoft 365、Outlook、Excel、PowerPoint、Dynamics 365、Microsoft Teams、は、米国Microsoft Corporation の米国およびその他の国における登録商標、または商標です。
※Microsoft 365は、Microsoft Corporationが提供するサービスの名称です。