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2025.8.26

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これからの組織パフォーマンス、どう高める? 「AI」と「パワーナップ」から考える、働き方の未来

住友商事(以下、住商)が運営するオープンイノベーション・ラボ「MIRAI LAB PALETTE」(以下、パレット)は、多様な分野のパートナーと新たな価値を創造することを目的に、まだ見ぬテクノロジーや人と出会える場です。本記事では、2025年5月20日にパレットで開催されたイベント「”人”と”AI”、2つのレバレッジで高める組織パフォーマンス」を通じて、現代における組織パフォーマンス向上のカギを探ります。

  • 住友商事株式会社 IT企画推進部
    インフラシステム第二チーム
    Microsoft MVP for Microsoft 365 Copilot

    浅田和明

    広報部で制作・報道業務に従事後、2022年10月よりIT企画推進部でMicrosoft 365や生成AIの企画・推進を担当。PRの経験を生かし、システムを魔法の杖としない、ユーザー中心の教育・展開活動に注力。25年3月よりMicrosoft MVP for Microsoft 365 Copilot受賞。生粋の大阪人。

  • トヨタ株式会社
    先進モビリティシステム開発部
    TOTONE-Z グループ

    加藤彩綾

    パナソニック株式会社で冷蔵庫の先行開発・訴求開発、食に関する新規事業開発に従事。その後、トヨタ自動車に転職しTOTONEの事業開発を行う。ヨガを通じて睡眠不足が解消された経験があり、睡眠とヨガに興味をもちヨガインストラクター資格RYT200を取得。
    TOTONE

  • ANA(全日本空輸株式会社)
    整備センター 品質保証室
    品質企画チーム

    関根浩樹

    2006年にANA入社。整備士として国家資格を取得後、ANAグループ全ての飛行機に対する整備生産計画策定部門や、整備部門全体の方針を定める整備企画部門を経て、2023年から飛行機ならびに整備士自身の安全と仕事の品質を維持・向上させるための制度や仕組みの設計を担う品質保証部門に従事。

「生成AI」と「パワーナップ」は、2つの組織をどう変えた?

2025年5月20日、「”人”と”AI”、2つのレバレッジで高める組織パフォーマンス」と題したイベントが、住商の運営するオープンイノベーション・ラボ「MIRAI LAB PALETTE」にて開催されました。

第一部では、住商で生成AIの全社推進をけん引するIT企画推進部 インフラシステム第二チームの浅田和明が登壇。「現場に浸透するAI活用:住友商事のリアルなDX推進の舞台裏」をテーマに、2024年4月に日本企業として初めて、グローバルに全社導入した生成AIサービス「Microsoft 365 Copilot」 (以下、Copilot〈コパイロット〉)浸透のための取り組みについて語りました。

住商では、2025年5月時点でCopilotの月間利用者が約75パーセントに到達。その結果、1カ月あたり1万560時間(2024年12月時点)の業務時間の削減を実現し、人件費に換算して年間12億円の削減効果がありました。浅田は、「組織パフォーマンスの向上には企業文化や風土の変革が重要。当社では、Copilotへの接触頻度を増やすなどムーブメントの醸成に注力したことで、ツールの使用が根付いてきている」と普及のポイントを説明しました。

※住商でのCopilot活用状況については、近日、Enriching+で記事を公開予定!

続く第二部では、「“戦略的休息”は投資か? 担当者に聞く、パワーナップのリアル」と題して、トヨタ株式会社 先進モビリティシステム開発部 TOTONE-Z担当の加藤彩綾さん、ANA(全日本空輸株式会社) 整備センター 品質保証室 品質企画チームの関根浩樹さんが登壇しました。

トヨタでは、質の良いパワーナップ体験ができる「戦略的仮眠ツール『TOTONE(トトネ)』」を開発。

パワーナップ(Power Nap)とは、日中に取る15~30分程度の短時間睡眠のことで、脳疲労の回復により、判断力・集中力・創造力・作業効率などの向上が見込まれており、世界的に有名な企業が推奨していることでも注目を集めています。1990年代からパワーナップの研究に取り組んでいるNASAの実証実験によれば、パイロットに26分間の睡眠を取らせると認知能力が34パーセント、注意力が54パーセントも向上したとの報告もあるとのこと。

TOTONEには、トヨタが自動車で培ってきた快適空間を設計する技術や、居眠り運転を防止する技術等が応用されており、加藤さんは「質の良い短時間睡眠をとることで脳疲労の回復が見込める」と話します。

(写真上)TOTONEは空間やシート自体の心地よさに加えて、エアクッション、シートヒーター、光や音を組み合わせて快適な入眠・睡眠・目覚めをサポートする機能を多数搭載/(写真下)睡眠経過の例。素早く「ステージ2」まで到達し数分維持することにより、脳疲労の回復が見込めると言われている ※図版参考:Newton別冊『睡眠の科学知識』(ニュートンプレス)

「6時間以下の睡眠が続くと、脳の疲労による注意力や判断力が、徹夜したときと同程度まで下がると言われています。また、十分な睡眠時間を確保して脳の疲労をためないように心がけても、日本は長年、睡眠不足の国と言われており、生活スタイルの面でも毎日十分に睡眠時間をとることが難しい人が多いかと思います。さらに、脳疲労により注意力や判断力が低下すると、運転中の事故や仕事の効率低下につながる可能性があります。そこで私たちは、脳疲労の回復が見込まれると言われている日中の短時間睡眠――パワーナップに着目しました。そして、より多くの方に質の高いパワーナップを気軽に体験してもらうことができるよう『TOTONE』の開発に至りました」(加藤さん)

こうした思いを胸にTOTONEを展開するなかで、ANAへの導入が決定。2025年2月から羽田・成田空港を中心に、飛行機の安全運航を支える整備部門に導入されています。

「整備士自身の安全を守りながら、高品質な整備を行うことで、お客さまに安心してご搭乗いただくことができる飛行機を提供するのが整備部門の業務です。これまでは、規定の充実、資格の取得、教育、チェック体制の強化といった仕組みで、確かな安全を支えてきましたが、『人の生理的な側面』は個人の管理に任せていました。それを組織的にカバーできれば、整備士や技術スタッフが安心して働くことができ、パフォーマンスの向上に寄与すると考え、TOTONEの導入を決めました」(関根さん)

導入後は高頻度で使われており、社員へのアンケートでは「気分がリフレッシュした」「疲れが取れた」「想像以上に使い心地が良い」「しっかり起こしてくれる機能があるため、起きられないかもしれないという不安がない」といった声が聞かれているとのこと。脳疲労が原因と思われるケガや小さなミスにつながるリスクの低減に手応えを感じており、今後、それらの発生が全体的に減ってくることに期待をしているそうです。また、羽田・成田以外の空港や他部署にも導入を広げられたらと考えているようで、「個人的には、ゆくゆくはパワーナップを『文化』として社会に浸透させたい」と関根さんは意気込みを語りました。

「TOTONEを通して『脳疲労への存在と、疲れを感じたら無理せずちょっと休憩することは理にかなっている』とみんなが思える世界を広げたい」と加藤さん。「ストレスフルな環境で働いている方、脳疲労の課題がある方に、ぜひTOTONEを試していただきたい。同時に、TOTONEで培った知見を今後の自動車開発にも生かしていきたい」と締めくくりました。

近い未来、働き方の「あたりまえ」はどう変わる?

第三部は、「これまでの『あたりまえ』の働き方はどのように変化していくのか」と題したクロストークセッションを展開。浅田、加藤さん、関根さんが、それぞれの立場から「未来の働き方」を想像して語りました。

まず、1年後の近い未来の変化として、「デスクに座って仕事するのがあたりまえでなくなる」と浅田は予測します。

「現在一般的であるタイピングによるテキストベースのやりとりではなく、音声入力でAIに直接呼びかけ、音声で返してもらうスタイルが今後広がっていくと考えます。情報入力のスピードは、音声が最も速いですから。情報過多になってしまいますが、目で見ながら耳で聞くというマルチタスクも可能です」(浅田)

そして、より便利な使い方が浸透していった先には、AIが自律的にさまざまな業務を実行する「AIエージェント」が活躍する未来がやってくる。世界的な大企業や大手新聞社が言及するように、AIと人間の協業が本格化するだろうと浅田は展望を語りました。

対して、関根さんはAIと人間の協業に大きな期待を寄せつつ、懸念点にも触れました。 「泥臭い手作業の時代を生きてきた私たちは、経験を積み上げたからこそAIのアウトプットを正しく評価できると思っています。ですが、入社当初からAIと協業し、思考を委ねすぎてしまうとAIのアウトプットの良しあしを判断できなくなってしまうのではないかと」(関根さん)

この質問に対して、「非常に大切な視点だと思う」と浅田。

「結論として、AIに丸投げしてしまうと差別化が図れなくなり、市場で生き残れないと思います。当社が導入しているCopilotは『副操縦士』という意味なのですが、パイロットは自分自身で、AIはあくまで副操縦士なんです。その認識を忘れず、人間の手でより価値の高いものを作り出す必要があると考えます」(浅田)

(写真下)本イベントのモデレーターを務めた、「MIRAI LAB PALETTE」のイベントディレクター・難波亮太

続く加藤さんは、前職での経験も踏まえ、「勤務時間のあたりまえ」を変えていきたいと話します。

「現在は8時間勤務が一般的ですが、今後AIを活用しさらに仕事を効率化していければ、より短時間での勤務でも良くなるのではないかなと。サクッと業務を終えて出掛け、さまざまな体験をするほうが経済的にも効果があると思うんです」(加藤さん)

一方で、「まさに整備士のように資格が求められ、一朝一夕で養成をすることができない要資格の職種は人手不足に陥りやすい。であれば、人手が必要な職種に人を集め、AIやロボットが代替できる職種は少ない人手で効率よく回していけるとバランスが保ちやすいのではないか」と提案した加藤さん。こうした考えに対して、関根さんも「整備業界でもAIによる画像判定や遠隔での点検作業などデジタル技術の活用が進んできているが、よりDXを加速させていけば、整備のような人でなければできない仕事に集中することができるかもしれない」と期待をにじませました。

3つのパートを通して見えてきたのは、「企業戦略」の一つとして組織のパフォーマンス向上に取り組むことは、単なる生産性向上にとどまらず、新しい文化や働き方を生み出す可能性をも秘めているということ。また、CopilotやTOTONEといった最先端の「テクノロジー」を導入する上で忘れてはならないのは、その先で「人」が何をすべきかという視点。それさえ見失わなければ、変化は恐れるに足りないものとなってくるはず。そんな実感が得られた本イベントでした。

  • 2019年、住友商事(以下、住商)の創立100周年を機に誕生したパレット。実験的な取り組みを通じた新たな価値創造を目的として誕生したパレットは、利用者の業界や属性を問わない、ラボ単体での採算を求めない、といった異例の方針のもと運営されています。今後も、ビジネスの分野から文化・芸術の分野に至るまでジャンルに捉われることなく、さまざまな人々が出会い、刺激し合う多様なプログラムやイベントを提供していきます。

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