グローバル事例

車輪、車軸から、運行システムまで。
世界の人々の生活と産業を支える鉄道事業

グローバル

最も長い歴史をもつ事業分野の一つ

鉄道事業は、住友商事の数々の事業の中でも最も長い歴史をもつ分野の一つです。1940年代から、当社は国内メーカーがつくった列車の車輪や車軸を海外に輸出してきました。その後、部品だけではなく、完成した貨車や客車の輸出も行うようになり、90年代に入ると、海外における鉄道インフラ敷設などの大型プロジェクトも幅広く手掛けるようになりました。また国内の鉄道事業者、車両メーカーのほぼ全てと取引があります。

部品、資機材の重要市場は北米(米国、カナダ、メキシコ)です。国土の広い北米では、貨物輸送用の長距離鉄道網が国中に張り巡らされています。その鉄道網に使用されるレールの輸出や、レール締結用のタイプレートならびに貨車に用いられる車輪・車軸を現地で製造・販売するのがこの事業の柱です。レール輸出では1本150メートルと世界最長のレールを輸送できるレール運搬専用船を保有し、大量かつ安定した輸送手段を確保しました。また、車輪・車軸製造会社を日本製鉄(旧新日鉄住金)と買収し、米国内に製造拠点を確保しました。

これら部品、資機材供給を通じ、北米貨物鉄道輸送を支えていくことを目指しています。

鉄道用レール(長尺レール)専用輸送船。155メートルの船倉と3基のクレーンを装備する

鉄道のインフラづくりを一手に引き受ける

完成車両の輸出事業では、これまで北米、台湾、インドネシアなどにオーダーメイドの車両を提供してきました。日本のメーカーがプロトタイプをつくって現地メーカーや日本メーカーの現地生産拠点が大量生産をするケース、ドイツや韓国などのメーカーに設計・製造を発注するケースなど、さまざまなスタイルがあるのがこの分野の特徴です。

ビジネスの規模が最も大きいのが、設計(Engineering)から調達(Procurement)、建設(Construction)までを一手に引き受けるEPCと呼ばれる領域です。ベトナム、タイ、インドネシア、フィリピン、ミャンマーなどの東南アジア諸国では、人口が増加し、人や貨物の輸送ニーズも高まっていますが、鉄道インフラの敷設や運用の経験が浅いこともあって、鉄道網の整備が遅れているのが現状です。当社は、他の日系企業などと共にそれらの国々のEPCプロジェクトを受注し、土木工事、軌道工事、車両製造、信号設置など、鉄道のインフラづくりに必要とされるさまざまな業務を遂行しています。

鉄道インフラ整備の多くは国家事業であり、受注者には、経営の安定性、信用、プロジェクトマネジメント力、納入する製品の品質など、あらゆる点で高い水準が求められます。鉄道事業の長い歴史の中で培った豊富な経験に基づくトータルな価値を高い水準で提供できる点に、住友商事の強みがあります。

EPCプロジェクトは、終了までに短くて3年、長ければ10年近くかかります。当社はその間、現地に社員を派遣し、メーカーやエンジニアリング会社と共にプロジェクトを進めていきます。責任を持ってプロジェクトを完遂に導き、顧客の信頼を積み重ねていくこと、当社はその姿勢を何よりも大切にしています。

インドネシア、ジャカルタの大量高速輸送システム(MRT)。2019年3月末に部分開業
米国向け1階建準高速客車

付加価値を長期的に提供する新しいモデル

近年では、台湾新幹線に代表されるような高速鉄道のプロジェクトや、自動旅客輸送システム(ピープルムーバー)と呼ばれる新しい交通システムの案件も増えています。ピープルムーバーは、主に空港とレンタカー施設や商業施設など、数キロメートルの距離を結ぶ全自動の輸送システムで、当社は米国の5空港8路線のほか、香港、韓国でも手掛けてきています。

鉄道事業の大きな特徴はインフラ建設や車両製造だけではなく、運行管理や保守も含む継続的なビジネスである点です。「売る」「つくる」ことで完結するビジネスから、鉄道に関する付加価値を長期的に提供し、人々の活動を支え続けるビジネスへ。そのノウハウをさらに蓄積していくために、2020年、フィリピン・マニラ首都圏における鉄道運行・保守事業会社へ出資参画し、本格的に鉄道事業者としての取り組みを開始するという新たな一歩を踏み出しました。

本事業には、鉄道の運行管理・保守に加えて、施設内のリテール事業、広告事業や施設の有効活用なども含まれ、鉄道に付帯する事業へも業容を広げていきます。

米国フロリダ州、タンパのピープルムーバー

世界中で高まる鉄道へのニーズ

日本の人口は年々減少していますが、世界の人口はこれからも増加が続いていきます。人口が急激に増えている国々では、人々が都市に集中することにより、車の渋滞や大気汚染などが社会問題となっています。今後は世界各国で、クリーンな輸送手段としての鉄道のニーズがいっそう高まることが予想されます。

将来的には、最新のテクノロジーを活用してエネルギー効率や交通網を最適化するスマートシティが各地で続々と建設されるとみられています。そのスマートシティで欠かせないインフラの一つが鉄道です。

不動産分野、エネルギー分野など、当社グループ内の他の事業領域と力を合わせながら、スマートシティ開発を推進していくこと。それが新たな鉄道事業のビジョンの1つです。

ベトナムホーチミン地下鉄高架橋工事。都市鉄道整備は全部で7路線が計画されている

2023年02月掲載

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