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2026.7.15

Business

鍵を握るのは、SCSKとの協業。住商グループのデジタル・AI戦略「DAIS」、その全貌

2026年5月27日、住友商事(以下、住商)はアナリストに向けた「DAIS(デジタル・AI戦略)説明会」を実施しました。25年のシステム開発大手・SCSKの完全子会社化や、26年4月のデジタル・AIグループ設立をはじめ、近年デジタル・AI領域の体制強化を加速させている住商グループ。同社のデジタル・AI領域での成長戦略が初めて公に語られた、本説明会の様子をレポートします。

  • 代表取締役 社長執行役員 CEO

    上野 真吾

    1959年兵庫県生まれ。六甲高校卒業、82年慶應義塾大学商学部卒業、住友商事入社。入社以来30年以上鋼管事業に携わり、金属、資源・化学品分野で要職を歴任。21年に副社長として脱炭素分野の開拓を担う横断組織「エネルギーイノベーション・イニシアチブ」(現エネルギートランスフォーメーショングループ EII SBU)のリーダーを務め24年4月から現職。

  • 常務執行役員 デジタル・AIグループ CEO

    巽 達志

    1993年に住商へ入社し、東南アジア向け通信インフラ輸出事業に従事。07年に健康食品・医薬品のEコマースサイト「爽快ドラッグ」の社長に就任。14年よりシリコンバレーのCVC (コーポレート・ベンチャー・キャピタル) 拠点Presidio VenturesのCEOを経て、20年より経営企画部で中期経営計画、全社ポートフォリオ戦略、社内起業制度等を担当。26年4月より現職。

デジタル・AIの力で、社会や産業の変革をリードする企業へ

住商本社での対面+オンラインのハイブリッド形式で実施され、アナリスト、メディアおよび住友商事、SCSKの社員を含む約1,800名が出席した本説明会。住友商事社長の上野真吾とデジタル・AIグループ CEOの巽 達志が登壇し、約1時間にわたり、DAISの全体像についての説明と質疑応答が行われました。

まず冒頭で、上野はDAISのVisionについて以下のように説明します。

「住商グループは、あらゆるビジネスの現場でデジタル・AIを駆使して、新たな価値創造モデルを構築し、社会や産業の変革をリードすることを目指しています。約900社の連結事業会社と10万社の顧客基盤を有する『事業現場』と、SCSKを中核とする『デジタルソリューション』、そして、高いデジタルスキルをもって新たな事業を構想する『人材』。この3つを持ち併せている競争優位性を最大限に生かし、実行力を伴った変革を進めていきます」

そしてDAIS実現のための道筋として提示されたのが、「SCSKの成長」「DAISによる住商グループの成長」「住商グループとSCSKの協業による成長」から成る「3つの柱(Pillar)」です。

上野は、「SCSKの自律的な成長、住商グループ全体の事業変革、そして両者の掛け合わせによる協業。DAISでは、この3つを連動させながら段階的な進化を目指します。また、それぞれのPillarごとに短期・中期・長期に区切った成長ロードマップを描き、2030年度にはROICを25年度比で+1%以上向上させ、住商グループの持続的な成長を実現していきます」と宣言しました。

3つのPillarが支える、住商グループとSCSKの成長戦略

続いて登壇したのは、デジタル・AIグループCEOの巽。Pillarごとの具体的な取り組みについて、詳しく説明していきます。

Pillar 1:SCSKの成長

システムインテグレーション(以下、SI)とネットワークインテグレーション(以下、Nl)をフルスタックで提供するITカンパニー・SCSK。25年に同社を完全子会社化した住商グループが考える、SCSKの成長可能性について、巽は以下のように説明します。

「SIとNI、それぞれ最高クラスの技術に加え、BPO(Business Process Outsourcing)を提供できるSCSKは、顧客の個別要件に応じたシステム開発にとどまらず、ニーズに合わせた高付加価値なサービスを統合的に提案できることが大きな強みです。今後、AI活用がより進むにつれ、セキュリティリスクや複雑化するAI/システム環境の統制・高度化、AI導入効果の最大化といった新たな課題が生まれてくる中、顧客との信頼をベースに、安心・安全に業務を支えながら顧客変革を実装できるSCSKには、AI時代においても大きな成長機会があると考えています」

さらに巽は、SCSKの新・中期経営計画(2026-2030)を踏まえ、同社の定量的・定性的成長の道筋について説明しました。

「SCSKは、新中期経営計画で『社会課題の解決をけん引する、次元の異なるITカンパニーへの進化』を掲げています。自社の持つ強みをさらに磨き上げていきながら、総合商社である住商が提供できるさまざまなリソースをフルに活用することで、ユニークな事業基盤をレバレッジし、飛躍的な成長を実現していきます。具体的には、『AI起点の自己変革と事業拡大』『オファリングモデルへの変革』『競争優位と強みの徹底活用』といった新たな3つの施策を進めることで、2030年度には25年度比で利益水準倍増と営業利益率15%以上の実現を目指します」

Pillar 2:DAISによる当社グループの成長

SCSKの更なる成長が確実視される中、住商グループ全体としては、DAISを通じてどのような未来図を描いているのか。まず巽は、住商グループがDAISを通して創り出す社会・産業の姿を、一枚のスライドで提示しました。

さらに巽は、このような世界観を実現する具体的な手段として、住商グループがDAISで取り組んでいくべき領域を明示します。

「デジタル・AI 産業には『アプリケーション』『AIモデル』『デジタルインフラ』『デバイス』の4つのレイヤーが存在していますが、住商グループではこのうち、AIサービス・AIエージェントなどを活用したアプリケーションのレイヤーを中心に取り組みを進めていきます。具体的には、短期ではコーポレート領域における業務の高度化・効率化などといった、既存事業・業務における具体的な成果創出を図ります。さらに中長期ではサプライチェーン全体の高度化、不動産・インフラの保守点検の高度化などといった、各産業におけるデジタル・AI実装モデルの確立を目指します。これらを通じてデジタル・AIを競争力・収益源とする事業構造への進化を図り、社会や産業の変革をリードしていきます」

Pillar 3:当社グループとSCSKの協業による成長

最後に、住商グループとSCSKの協業から生まれる成長戦略について、巽はこのように説明します。

「26年、住商では『デジタル・AIグループ』を、SCSKは『SC共創推進本部』を新設したことにより、両社間での共創推進の仕組みが確立しました。今後は、ビジネスを主に3つの類型に整理し、業務を推進していきます。まず1つ目は、両社の『機能』を持ち込み、市場・顧客への営業力・提案力を高めること。2つ目は、互いの強みのある『事業』を持ち込み、競争優位を高め、事業拡大を図ること。そして3つ目は、住商グループが事業現場を提供し、SCSKのファーストカスタマーになることで生まれたソリューションを、市場に展開していくことです」

こうした共創について、説明会に参加したアナリストからは「協業によって特に注力する実装領域は?」との質問が挙がります。これに対して、上野は次のように答えました。

「当社とSCSKが組むことで飛躍的なビジネスモデルの変革につながると考えているのは、モビリティ領域です。すでにSCSKは、自ら車両の設計・展示を行っており、そこに住商が自動車分野で培ってきた知見を組み合わせることで、車両の設計から完成までのプロセス、さらにはモビリティシステム全体における協業を進めることができます。今後、協議と共創が進むことで、巨大な事業になっていく可能性がある領域だと考えています」

また、上野はもう1つ注目の事業として、都市開発を挙げました。

「SCSKの技術力を活かしながら都市開発に取り組むことで、当初の計画を超えた『サステナブルシティ』の実現が可能になります。すでにベトナムのハノイや福岡の箱崎といった地域で実装を進めており、将来的には単なる『不動産開発』にとどまらない、街全体を対象とした『都市総合開発』という大きな事業領域を確立できるのではないかと考えています。 これら以外にも、製造業やヘルスケアといった分野での協業パイプラインは数多く存在するので、一つ一つ地に足をつけて共創を進めていくつもりです」

社員のデジタルスキルを高度化・可視化し、DAIS実現を加速させる

Dグレードでは、 「知識」 に加え、 事業現場に実装した 「経験」 を重視。経験の難易度がグレード認定に影響する

説明会では、26年4月に導入した、全役職員のデジタルスキルの高度化・可視化を目指した認定制度「Dグレード」についても言及。巽は、「事業現場で価値創出に貢献できる人材を育成し、適材適所の配置を進め、DAISの実行力を高めていきます」と、本制度への意気込みを語りました。

最後に、上野は「住商グループは、DAISを通じて社会や産業の変革を強くリードしていきます。SCSKの完全子会社化を正当化する以上に、住商グループとしての企業価値向上に取り組んでいく覚悟ですので、暖かく見守っていただけたら」と、本説明会を締めくくりました。

なお、本説明会で使用されたプレゼンテーション資料と当日の動画は、以下URLからご覧いただけます。

また、デジタル・AIを活用した具体的な取り組みについては、「デジタル・AI白書2025(P12-18)」で詳しく紹介しています。ぜひ併せてご覧ください。

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