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- 世界最大級へと成長した航空機リース事業。担当者が語る、その転機を支えたチームの力
航空機リースを基盤に、住友商事(以下、住商)グループの航空事業は世界有数の規模へ成長してきました。その拡大の象徴が、2025年に発表された米国の航空機リース会社「Air Lease Corporation(以下、ALC)」の買収です。総額約74億米ドルに上るこの大型案件には、住商、SMBC Aviation Capital(以下、SMBC AC)、Apollo Global Management、Brookfieldの4社が投資家として参画しました。この大型案件は、どのようなプロセスを経て実現したのか。プロジェクトに深く携わった2人に聞きました。
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住友商事 航空SBU 航空機・エンジンリースチーム
SBU長代理 兼 チームリーダー齊藤 諒
入社以来7年間、審査業務に従事。その後、航空SBUで10年以上にわたり航空事業を担当。航空機エンジンリース事業の立ち上げ、ヘリリース会社Macquarie Rotorcraftの買収、ならびにAir Lease買収案件に参画した。アムステルダムおよびロンドンに計7年半駐在し、事業会社へ出向。事業戦略、会計・税務、財務管理などの経営基盤強化を推進した。海外の同僚や取引先からは「Mac」と呼ばれている。
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住友商事 航空SBU 航空機・エンジンリースチーム
前泊 倫
2015年入社。SMBC ACの株主業務を担当、その後投資家向け航空機リースの販売・アセットマネジメントに従事。21年からSMBC ACに出向し、エアラインのクレジット分析等を担当。24年に帰国し、アフターマーケット領域における新規事業開発に従事するとともに、ALCの買収プロジェクトを担当。26年4月より、Sumisho Air Lease Corporationに 出向中。
住商グループの航空機リース事業を、世界トップクラスへ
航空機リース事業とはどのようなビジネスですか?
齊藤 リース会社が航空機を購入し、航空会社に10年前後の長期で貸し出すビジネスです。中・大型機では1機あたり1億5,000万~2億米ドル弱と、動く金額も期間も非常に大きい。一方で、機材ごとの価値や世界各地の航空需要を見極め、一つ一つ判断を積み重ねる必要があります。金融と事業の両面を併せ持つ、非常にダイナミックなビジネスであり、従来から、強固な金融基盤を有するSMFGグループと連携して取り組んできました。
そうした市場で、なぜALCの買収が重要だったのでしょうか。
前泊 コロナ禍で落ち込んだ旅客需要は、その後2~3年で力強く回復しました。一方、航空機メーカーの供給は需要に追いつかず、航空会社が必要な機材を確保するうえで、リース会社の役割は一段と大きくなっています。そうした環境下で、ALCの良質な機材ポートフォリオや顧客基盤を加えることは、住商グループの航空機リース事業の規模とグローバルなプレゼンスをさらに高める大きな機会でした。
社内でALC買収の話が出たとき、お二人はどのように感じましたか。
齊藤 私たちは以前から航空機リース業界におけるプレゼンスを高めるべく、業界の主要プレーヤーを継続的に注視してきました。そのような中、関係者との初期の協議を通じて、今回の取引の可能性が浮上しました。実現すれば、住商グループの航空機リース事業の規模とグローバルなプレゼンスをさらに高めることができます。この話を聞き、現場の士気も一気に高まりましたが、同時に決して簡単な案件ではないだろうとも感じました。
前泊 ALCは私が入社した15年当時から、実績もブランドも世界トップクラスの会社です。まさか自分がALCの取引に携わることになるなど、思ってもいませんでした。非常に難易度の高い案件ですが、実現すれば事業を一気に次のステージへ引き上げられる。何としても成功させたいと思いました。
異例の「短期決戦」。巨額案件の舞台裏
今回の取引は、どのような体制で進められたのでしょうか?
齊藤 住商の航空SBUから3名、案件をサポートする投資アドバイザリー部から2名の計5名が中心となり、経理、税務、法務、財務などの社内関係部署と連携しながら検討を進めました。また、業界の専門家や外部アドバイザーを含むさまざまな関係者との協議も、本件を進めるうえで重要な要素でした。案件規模が極めて大きかったため、プロセス全体を通じて幅広い分析や協議が必要でした。最終的に、事業面、財務面、法務面など多角的なリスク調査を経て、住商、SMBC AC、Apollo、Brookfieldの4社(※)が投資家として参画し、取引が完了しました。
※Apollo、Brookfieldはいずれも、北米を拠点に、投資・資産運用事業をグローバル展開する投資会社。本取引には、住商、SMBC ACとともに投資家として参画。
今回の取引の難しさは、どのような点にあったのでしょうか。
齊藤 上場企業を対象とし、多くの関係者が関わる、規模・複雑性ともに非常に難易度の高い案件だったことです。案件を進める中でも市場環境も刻々と変化しており、リスクや事業機会、長期的な価値を継続的に見極める必要がありました。そうした中、対象企業の事業や成長性を多面的に分析し、本質的な企業価値を慎重に見極めました。検討の過程では、価格や取引ストラクチャー、投資前提などをさまざまな角度から検証し、住商が求める投資基準を満たす案件となるよう検討を重ねました。さらに、契約締結までのスケジュールも非常にタイトで、限られた時間の中で、多くの関係者の考え方や優先事項を調整することにも苦労しましたね。
前泊 特にプロジェクト終盤は、交渉や分析、社内承認プロセスが同時並行で進み、非常に慌ただしい時期でした。複数の組織や部門、異なるタイムゾーンの関係者との頻繁なコミュニケーションも必要でした。
齊藤 プロジェクト終盤には私もダブリンへ出張し、さまざまな関係者と本件に関する一連の協議に参加しました。スケジュールは非常に厳しく、重要な論点について慎重な検討が続く中、協議が深夜に及ぶこともありました。最終局面に入ってからも、それぞれの関係者に異なる考え方や優先事項があり、最後まで緊張感のある時間が続きました。ある日の深夜、短い休憩の合間に急いで食事を取ったことも覚えています。ほんの一場面ですが、それだけ密度の濃い時間を過ごしていたのだと、今振り返っても感じます。特に印象に残っているのは、プロジェクトに関わった皆さんが、最後まで高いプロ意識と強いコミットメントを持って取り組んでいたことです。だからこそ、無事に取引が完了したときの喜びは大きなものでした。プロジェクト終了後、関係者から自分の仕事に対して感謝の言葉をいただけたこともうれしかったですね。私自身にとっても、長く記憶に残る貴重な経験になりました。
特に自身の役割が問われた場面はどこでしたか?
前泊 入社以降一貫して航空機リース事業に携わってきた経験を生かし、関係者間の円滑なコミュニケーションを支えながら、プロジェクトを進める中で現実的な解決策を見いだしていくことが、自分に期待された役割だったと感じています。
齊藤 私は管理系部署出身なので、企業価値評価、会計、税務、契約など今回の取引に関する専門知識を生かせる場面が多くありました。ただ最も問われたのは、プロジェクトマネージャーとしての役割です。さまざまな関係者とコミュニケーションを取りながら、多岐にわたるワークストリームを着実に進めることが求められました。
新体制で、航空機のライフサイクルに新たな価値を
買収されたALCは、26年4月から「Sumisho Air Lease Corporation(以下、Sumisho ALC)」としてスタートしました。新会社を軌道に乗せるため、どのようなことに取り組んでいますか?
齊藤 本取引の完了後は、Sumisho ALCの経営陣や従業員との対話を重ね、新たな体制への円滑な移行と、今後の方向性について共通理解を深めることに取り組んでいます。そのうえで、会社の将来像について継続的に議論を重ねています。
前泊 私は26年4月からSumisho ALCに出向しています。現在はまず、Sumisho ALCの業務や組織文化、強みへの理解を深めています。そのうえで、Sumisho ALCの強みを尊重しながら、より広い航空事業の基盤の中で、どのように連携を深めていくか。関係者間の円滑なコミュニケーションや調整を支えることが、現在の私の大きな役割です。
住商グループとしての、今後の航空機関連事業の展望を聞かせてください。
前泊 今回の取引を経て、住商グループの航空機リース事業の規模は世界トップクラスとなり、グローバルな事業基盤もさらに強化されました。今後は、より広い航空事業の基盤が持つ知見や経験、さまざまな関係性を生かしながら、企業価値を高めていきたいと考えています。
齊藤 航空機リースの先に見据えているのが、航空機のライフサイクル全体での事業拡大です。航空機は、リース期間を終えた後も、整備や改修、売買、部品の再利用など、さまざまなビジネスにつながります。住商グループが保有・管理する機体が増えたことで、そうした機会も大きく広がりました。航空機を貸すだけでなく、新造機・中古機のリースから、航空部品のリユース、整備まで、航空機のライフサイクル全体を支える航空プラットフォームを構築していく。グループの知見やネットワークを生かしながら、航空事業の次の成長につなげていきたいと考えています。



