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2023.10.2

映画『こんにちは、母さん』 ~9月1日公開記念~ 山田洋次監督インタビュー

©2023「こんにちは、母さん」製作委員会

巨匠山田洋次監督の新作映画『こんにちは、母さん』が9月1日に公開されます。
住友商事は1993年に公開された『学校』から山田作品への製作に継続して参加し、本作で17作品目、30年目の節目を迎えました。

本作は『母べえ』、『おとうと』、『母と暮せば』に続いて吉永小百合さんが主演。劇中では東京の下町で生き生きと暮らす母親を演じています。大泉洋さんは、久々に帰った実家で、恋をしている母親が見違えるように変わった姿に困惑し、そして自身の身に起きるトラブルに戸惑う息子役を好演しています。
家族や人とのつながりの温かさ、そして人間関係の複雑さや世の中の変化に翻弄される人の悲しさが、ユーモアを交えながら描かれています。

今回は山田監督が住友商事本社へお越し下さり、社員との座談会が実現しました。
本作の公開前に予告編に続く座談会の映像と、その中で語られたインタビュー全容の記事をご覧いただき、公開をご期待ください。

この記事は2023年8月に公開された内容です

社員との座談会​

山田監督との座談会は住友商事社員が聞き手となって実施しました。質問に対して、ウィットを交えながらとても丁寧にお答えくださり、幾度となく笑いが起こり終始和やかな雰囲気の中で行われました。

監督が映画に込めた想いやメッセージについて

山田監督は、「どんな映画も音楽もメッセージがあるから製作するのではなく、『こういうものが作りたい』という衝動のようなものですね」と語りました。本作は若くして伴侶を亡くした母が、もう一度恋をし、その姿に困惑する息子の姿を描いた永井愛さん原作の戯曲「こんにちは、母さん」の母親像に触発され映画化に至りました。監督自身の母との関係性も、この作品の母親像にリンクするものがあったと語っています。また、大企業で社員のリストラを推進する任務に思い悩む息子、生活保護を拒む路上生活者、親がもつ女性の幸せに関する固定概念に反抗する娘の姿なども描かれています。

人と人とのつながりがもたらす「幸せ」とは?

本作は、東京の下町・向島を舞台に、地域社会の人と人とのつながりや、人間同士の交わりがもたらす心の豊かさを思い起こさせます。山田監督は「科学技術の進歩に基づくや合理化やオートマチック化は、人間が幸せになる方向に進んでいるか?誰だって不安があるのではないか?」と投げかけました。「下町には戦前、明治時代から続けてきたお店があり、今晩のおかずを買いに行って、会話をする。そういう小さな地域社会を日本人はうまく考えて作って暮らしてきた。面と向かって『ありがとう』と言ってもらえたり、旬の野菜を勧めてもらったり、たまにはおまけをしてもらったり。人間同士の交わりが生活ってものじゃないかな。今はそういった地域社会が少なくなり、全自動レジのスーパーマーケットも増えてきて、マンションの隣人すら知らないこともある。世の中の進歩につれ、人とのつながりが失われ、人間味も消えていく時代。でもね、人間は結局、人のにおい、人とのつながりを求めて生きているんだよ。母も息子(劇中での大泉洋)も孫(劇中での永野芽衣)も。」と語りました。

笑ったり涙したりしてしまうシーンがあるが、これは意図した演出なのか。

「いや、むしろ意図して演出しないようにしている。ここで笑うだろう、っていう演出じゃ人は笑えない」
この教訓は今から50年ほど前、寅さんシリーズの第一作目を手掛けた際のある経験から学んだといいます。主演は当時トップコメディアンの渥美清さんで、『男はつらいよ』という滑稽なタイトルと合わせて笑いの要素が詰まっていました。ところが、関係者向けの試写会では一切笑いが起きず、困ってしまったといいます。「『うんと笑える喜劇を』という要請があって寅さんをつくったのに、まじめな映画になってしまった。家に帰って、『監督としてはもう一巻の終わりかもしれない』と落ち込んでいたところ、女房から『大丈夫、なんとか食べていけるわよ』と声をかけてもらい、とてもホッとしたことを覚えている。そのことは一生感謝しなきゃいけない」と語りました。
ところが、封を切ってみたら劇場が笑い声で満ちあふれていたそうです。「その時、『君は一生懸命つくればいいんだよ』って言われた気がした。観客は僕が一生懸命つくったものに対して笑ったり泣いたりする。笑わそう泣かそうとして映画をつくるのではなく」としみじみ思ったといいます。それ以来、人間の表情や言い方など人間をリアルに表現することを一生懸命考え映画作りに向き合われているとのことです。

今年で92歳を迎え、映画監督となって62年。 今もなお意欲的に映画製作に取り組む、その原動力について

「仕事ってのはつらいこともあるけど、面白いこともある訳じゃない?やっぱり、楽しくてつくっているんだよね。小津安二郎監督が言った言葉で、『俺は豆腐屋が豆腐を作るように映画をつくっているんだよ。ただし、他の豆腐屋が作れないような美味い豆腐を作ろうという思いはある。でも、豆腐以外は作れないんだよ。せいぜい、がんもどきぐらいなら作れるけど』。
それはよく分かるよね。僕も同じように、豆腐屋が豆腐を作るように映画を作っている。豆腐作りはつらいけど、面白くもある。買ってくれた人が『美味しかったよ』と言ってくれれば嬉しいし、またもっと美味しいものを作ろうという気持ちになる。僕の職業だからさ。
でもね、豆腐屋でもそうだけど、体を使う仕事だから、肉体と相談ですね」

90作目の公開を控えてさらなる映画製作への思いを語る監督の今後の活動にも目が離せません。

  • メディアコンテンツ事業部長 

    佐野真之

    山田洋次監督と当社の関係は、映画作品出資を通じて実に30年に亘ります。
    その中でも、本作『こんにちは、母さん』は、監督がずっと大切にしてきた家族のテーマを、ご自身の優しい眼差しを通して現代の中に捉え直した、素晴らしい作品となっております。
    また、監督にとって90作目というこの記念すべき映画の重要な舞台(ロケ地)のひとつは、当社の本社オフィス内となっており、当社社員もエキストラとして参加しています。そのあたりも是非ご確認ください。
    メディアコンテンツ事業部は、長年携わってきたコンテンツ事業のノウハウをベースに、新しいデジタルメディアの立ち上げなど、時代に即した新たなチャレンジを続けています。今後、このような場でぞくぞく発信させて頂きたいと思っていますので、どうぞご期待ください!

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