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2024.10.25
Culture
住商社内報の人気企画を公開!日本人女性初、南アフリカサファリガイド太田ゆかさんにインタビュー

住友商事では、50年以上にわたり社員に愛されている社内報があります。その中から、各界の著名人に社員がインタビューする人気企画をご紹介します。
今回は南アフリカ共和国で、サファリガイドとして奮闘する太田ゆかさんにインタビュー。社内報の編集にかかわる社員とのつながりで実現したもので、現地の様子や、動物たちの保護活動について語っていただきました。インタビュアーとなった社員たちもサファリツアーの体験があり、熱のこもった質問が飛び交いました。
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太田ゆか
1995 年、米国生まれ。2015年、立教大学在学中に南アフリカ共和国のサファリガイド訓練校に入学。現地の資格FGASAを取得。17年~20年、南アフリカ共和国のグレータークルーガー国立公園にて専属サファリガイドを務める。20年からはサファリツアー・映像制作ペインテッドドッグテレビでサファリガイド・プレゼンターに。野生動物の保護活動や現地の生態系保全を目指す。著書は『私の職場はサバンナです!』(河出書房社)など。
社員私は以前、南アフリカ共和国に10年ほど駐在しており動物保護区にもよく行きました。太田さんは、なぜサファリガイドになったのですか?
太田小さい頃から動物を守る仕事をしたいと考えていて、獣医になろうと思っていました。でも理系科目が苦手で獣医をあきらめ、高校生の頃に動物が暮らす環境を守る仕事に興味を持つようになりました。大学生時代は、ゼミで観光が自然環境にもたらす影響を学ぶために、モンゴルの草原やマレーシアのジャングルなどを訪ねました。学外では環境NGO団体でのアルバイトや熱帯雨林での植林なども経験しました。
社員積極的に活動されていたんですね。
太田大学生時代に、インターネットでボツワナのサバンナ保全プロジェクトを見つけ、ボランティアに申し込んだのが今につながります。初のサバンナでこれまで感じたことのない感動というか、こんな世界があるんだと。 これまでとは全く違う規模感で大自然や、そこに暮らしている村の人たちの生活を見て、そうした居場所は地球上で貴重だなと、この自然を守る人間になりたいと強く思ったのを覚えています。そこでフランスから来ていたサファリガイドの女性と出会い、現地の現状を伝えることで間接的に動物保護に貢献したいと考え、サファリガイドを目指すようになりました。

社員私もクルーガー国立公園を訪れたことがありますが、太田さんは参加者にツアーで何を伝えたいですか?
太田野生動物が好き、広大な自然を見たいということで来てくださる方がほとんどです。私は、エンターテインメント性を大事にしながら、動物を見るだけでなく何かを感じてもらうことを大切にしています。 例えば、元々ここの動物はもっと広いエリアに住んでいたのに、今は狭いエリアに住まなければならなくなった理由は何なのか、生態系や共生関係など野生動物たちの暮らしが絶妙なバランスで成り立っていることなども説明します。保護活動にも触れて、ツアーが終わる頃には参加者の皆さんに動物たちを守りたいと思ってもらえることが理想です。
社員私は大学のゼミで太田さんのガイドするサファリツアーに参加しました。 その時も、すごく感動しました。
太田日本に帰った後も、その体験を周りの人に共有したいと思っていただくことが、サファリガイドの使命だと思っています。 ツアーに参加した方たちが、「一緒にこの世界を守っていきたいよね」と周囲に発信するアンバサダーに変わってほしいくらいの心持ちです。 実際、今回のように社内報やSNSで発信したり、アクション起こしたりしてくださる方が多く、やりがいを感じます。
社員密猟に関して最近の事情を教えてください。
太田密猟には2種類あります。 一つは商業的な密猟。密猟者がサイの角などを国際的な犯罪組織に売るケース。 もう一つは、現地の人たちが本当に明日食べるものがなくて、食用としてインパラなどを密猟するケース。 後者の方はコロナ禍で圧倒的に増えました。 コロナは落ち着きましたが、この問題は解決していません。
社員サファリガイドで一番大変なことは何ですか?
太田自然相手なので、天候や運に左右されることです。スキルを磨いて動物を見つけるために足跡をたどることはできますが、それでもたまたまそのエリアに探している種の動物が全くいないこともあります。私がガイドをしているグレータークルーガー国立公園は、四国よりちょっと大きいくらいのサイズのクルーガー国立公園とその周りに隣接するいくつもの私営保護区で構成されていて、動物たちはその中を自由に動いているため、遭遇できないこともあるのです。


社員1番好きな動物はなんですか?
太田特殊な答えを期待されていると思うのですが、ライオンです(笑)。 雄ライオンなんてすごくかっこいいんです。 昼寝している時はただの飼い猫みたいですけど、いざ獲物を見つけた時の迫力はすごいです。 サバンナの空気が一瞬で変わり、周りの草食動物が緊張感を増すあのオーラは魅力的です。

社員休みの日はどう過ごされているのですか?
太田仕事と休みでやっていることは全く一緒です(笑)。 でも、仕事中はお客さまに何を伝えたいとか、これを見てほしいとか常に思いながら案内するので、気持ちの持ち方が違います。 休みの日は1人でサバンナを走って、アフリカゾウたちの近くで車を止めて休むなど、思いのままに過ごしています。草をブチッと引き抜く音とか、口に運んでムシャムシャ食べる音とか、ゾウたちのあらゆる音を聞きながら過ごす贅沢な時間で、1番のリラックス法です。
社員最近、大きなトピックスはありましたか?
太田コロナ禍をきっかけにペインテッドドッグテレビとバーチャルサファリツアーを開始して、 サファリの魅力を日本に向けてインターネットで生配信するようになりました。コロナが落ち着いてからは、南アフリカ共和国だけでなく、ボツワナやナミビアなども案内しています。 日本のメディアで紹介していただいたことで、サファリツアーの申し込みも増えて、昨年は日本から毎日のようにお客さまが来てくださいました。サファリガイドになりたてで、日本のお客さまが全くいなかった頃と比べると本当にうれしいです。

社員太田さんの夢を教えてください。
太田死ぬまでサバンナで環境保護に貢献することが夢です。サバンナの生態系を次の世代に残していくには、経済的利益の入る仕組みが保たれなくてはなりません。日本人サファリガイドの私だからこそできるツアーを企画し、サファリビジネスとして成立させたいです。そして、いつかはクルーガー地区に日本人ガイドとして初のロッジを所有して、より環境保護に大きなインパクトを出せるようにしたいと思います。
これまでクラウドファンディングを通して保護活動の資金を集め、その活動の様子を現地から支援者に生配信してきました。日本から応援してくださる皆さんと、助けを必要としている現地の団体をつなぎ、保護活動を行う。そんな日本とアフリカの架け橋のような存在であり続けたいと思います。
インタビューを終えて
■明るく、エネルギーあふれる太田さん。多岐にわたる質問にも丁寧に、自身の意見を聞かせていただき、人と自然・動物の共生について考える時間となりました。動物やサファリツアーの魅力も伺い、次にサファリに行く機会(あれば!)が楽しみになりました。
■動物を守る仕事をと、その初志を貫徹されつつも、獣医がだめならレンジャーに、レンジャーも無理ならサファリガイドにとしなやかに考えを変えておられました。人間、至る処青山あり、また万事塞翁が馬でもあると思いました。
■こんなにも1時間のインタビューがあっという間だとは……。太田さんの動物への愛、その動物たちを取り巻く環境の変化に対する考え、今後のビジョン、たくさんお聞きすることができました。また太田さんのサファリツアーに参加したい!と強く思いました。
画像提供/太田ゆか ⒸYuka on Safari