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2026.2.12
Culture
仕事に向き合う姿勢や価値観を継承。“住商らしさ”をつなぐ「指導員制度」
住友商事(以下、住商)には、新入社員を一人前の商社パーソンに育成することを目的とした「指導員制度」があります。新入社員一人ひとりに先輩社員が「指導員」として付き、約1年にわたって、実務面から社内文化の理解まで幅広くサポートするこの仕組み。世代を超えた深いつながりを生み、住商カルチャーの醸成に欠かせないものになっています。今回は、化学品・エレクトロニクス・農業グループ内で、指導員・被指導員の関係だった3世代の社員を集め、指導員から受け継いだ価値観や、制度のリアルについて語ってもらいました。
競争力の源泉、成長の原動力は「人」である、という住商の価値観に基づき、長年にわたり運用されてきた新人育成制度。同じ部署の先輩社員1名が「指導員」として付き、社会人生活を円滑にスタートできるようにサポートする。実務面でのOJT支援(業務内容の説明や社会人としての基本動作の徹底)にとどまらず、住商パーソンとして持つべき価値観や組織の仕事文化の伝承など、成長していくための土台となるマインドを醸成していくことが特徴。
指導・育成の具体的な進め方については、所定の研修や新人育成ハンドブックなどを指針としながら、配属先や業務特性や、新人の個性などに応じて柔軟にカスタマイズし、部署全体でサポート体制を構築する。
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無機化学品ユニット
福田 圭祐
※上田の指導員2001年入社。現在はレアアース、リチウム、チタンなど鉱産物系のトレードや出資を担当。ニューヨーク、モスクワ、ドバイでの海外赴任も経験。入社12年目のタイミングで、上田の指導員を担当。
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電子・機能材ユニット
上田 光平
※福田の被指導員/西谷の指導員2012年入社。無機化学品ユニットで半導体原料、ガラス原料関連のビジネスを担当。韓国での海外赴任も経験。現在は電子・機能材ユニットに所属し、EVやAIデータサーバ向けの素材(シリコンカーバイドウエハ)やセンサ等、半導体関連ビジネスを担当。福田の被指導員であり、西谷の指導員を務めた。
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無機化学品ユニット
ドイツ住友商事における トレイニー西谷 優花
※上田の被指導員2021年入社。無機化学品ユニットにて、上田の被指導員として、無機鉱産物系のトレードを経験。24年6月よりトレイニーとしてドイツ住友商事に赴任。現地で石油化学品のトレード、無機化学品およびグリーンケミカル分野の新規開発などを担当。取材にはドイツからオンラインで参加。
不安な新人時代、支えになった先輩の存在
初めて指導員になった時、どのような気持ちでしたか?
福田 上田さんの指導員に選ばれて、とても張り切っていましたね。入社12年目で初めて指導員になったのですが、同期に比べると遅めのタイミングでしたし、ちょうど事業会社への出向から戻り、仕事に自信がついてきた頃だったので、「満を持して」という思いでした。
上田 私が西谷さんの指導員になった時は、コロナ禍の真っただ中だったので、配属初日に顔を合わせた後は、週2〜3日の出社という状況でした。未曾有の状況でしたから、業務上もトラブルが多く、忙しい時期で……。西谷さんをしっかり育てたいのに、コミュニケーションが取りにくく、焦りを感じていました。
お互いの第一印象を教えてください。
福田 上田さんは「素直な好青年」。その印象は今も変わりませんが、当初は少し自信がなさそうに見えました。今思えばそれは、一つひとつの物事を慎重に判断していたからではないかなと思っています。何か質問をされても、100%正しいと思えるまで、さまざまな可能性を検討してから答える。でも、仕事の吸収が早く、今ではどんな場所でも自信を持って発言している、非常に優秀な後輩です。100人くらいいる会議でも、いつも真っ先に手を挙げて質問している姿は本当に誇らしい。そこは良い意味で裏切られました。
西谷 私にとって上田さんは、物腰が柔らかく、10歳の年齢差を感じさせない方でした。配属初日は緊張していたのですが、「何でも聞いていいからね」と言ってくださったのが印象的でしたね。あと、食べるのがとにかく速くて(笑)。初日のランチで連れて行っていただいたカツ丼屋さんで、あっという間に完食されていたのをよく覚えています。営業の方はこのボリュームをこの速さで食べるのか!これだけエネルギーが必要なんだ!と圧倒されました。
上田 実は、私も新人時代に福田さんから「何でも聞いて」と声をかけていただいたんです。1年目は何もわからないのが当たり前だから、何でも聞いて習得してほしいと。それがとてもうれしかったので、西谷さんにもそのまま伝えました。
福田 確かに思い出してみると、そんなことを話したかもしれません(笑)。
上田 自分が指導員になってみると、あらためて福田さんの教えを思い出すことが増えました。新入社員は配属後の約2ヶ月間は「実習日誌」を書き、それを指導員が添削するのですが、私は自分が新人時代に書いていた実習日誌を、西谷さんに丸ごと見せたんです。そこには福田さんからのコメントや添削履歴が残っているので、先輩から学んだことを次の世代にも大切に引き継げたらという思いからでした。
福田 実習日誌は、社内文書の書き方の基礎を教える役割もあるので、どの指導員も力を入れて添削していますよね。今はWordファイルにコメントを入れていると思いますが、私の時代は手書きでびっしり赤字が入ってました(笑)。
西谷 実習日誌は、私もすごく印象に残っています。上田さんは日誌のコメントを通じて、いろいろな方向から私のモチベーションを上げようと働きかけてくださり、ありがたかったです。
「中長期的な関係を大事にする」のが、住商の文化
新人を指導する上で大切にしていたことは何ですか?
福田 本人の個性に合わせて指導することでしょうか。指導員をするにあたって研修などもありますが、やはり一人ひとり個性があるので、オーダーメイドで対応していくことが重要だと思います。先ほどお話ししたように、上田さんはじっくり考えるタイプだったので、まずは焦らずコツコツやりなさいと伝えるようにしていました。
上田 1年目は仕事のスピード感についていけず悩んでいたので、その言葉には救われました。先輩たちが世界各国を飛び回りながら、スピーディーにビジネスの判断をしていく姿に圧倒されて「入る会社を間違えたんじゃないか」と落ち込むことも。でも、福田さんは「表面的な知識ではなく、しっかり本質を理解してから次に進めばいい」と、粘り強く指導してくれました。トレードの仕事は複雑で、お客さまの要望や決済条件、流通経路など、さまざまな要素を全て調整して成立するものですが、福田さんが時間をかけて細やかな指導をしてくださったことで、確かな知見を持って判断できるようになり、自信をつけていくことができました。
福田 一方で、考え込む前にまず動いてみることも大事だよ、という話もしていたと思います。まず動くことでいろんなことが見えてくるので、最初から完璧を求めるより、効率的ですから。
西谷 それは、私が上田さんから教わったことにも通じていますね。初動が大事だからまずは動いてみる、何でもとにかくやってみようとアドバイスをいただきました。
指導を受けた立場としては、どのようなサポートが印象に残っていますか?
西谷 私は入社当初は化学の知識が足りず、苦労しました。でも、理系出身の上田さんが毎回丁寧に質問に答えてくださり、同じ文系出身の先輩が作った引き継ぎ書なども共有してくださったんです。「文系でもこういう着眼点でまとめていけばいい」という再現性のある方法を教えていただいたのは、心強かったですね。あとは、ベトナムの製造現場へ出張に行かせていただいたことも大きかったです。実際にどのように製造されていくかを見られたことが理解の助けになりました。
上田 一人でベトナム出張に行ってもらったのは、西谷さんにとって大きなチャレンジでしたよね。私も事業会社へ出向したり、韓国に駐在したり、新しい場所に飛び込んだことがブレイクスルーになったと感じていたので、西谷さんにも早い段階からチャレンジしてほしいという思いがあったんです。
先輩の仕事を近くで見ていて、影響を受けたことはありますか?
西谷 契約締結済みの案件で、諸事情により後から条件を変更せざるを得ない状況になったことがあったのですが、上田さんが仕入先・販売先と交渉して、結果的に双方から感謝されるような形で解決されたことです。まさにピンチがチャンスに変わった出来事でした。
上田 あれは本当に「綱渡り」でしたね。契約を無理やり変えようとすれば信頼を失ってしまうので、背景を丁寧に説明しながら、それぞれが納得感を得られるように調整しました。結果的に両者にご満足いただき、その後の取引量は3倍に増えました。
西谷 上田さんから「われわれの仕事は仕入先・販売先の両方に感謝されなければならない」と口酸っぱく言われていたのですが、「こういうことなんだ」と腹落ちした瞬間でした。
上田 短期的な利益だけでなく、次につながるような中長期的な関係を大事にする。これも新人時代に福田さんから学んだことですね。
福田 それは私が編み出したものではなく、「信用・確実」「浮利を追わず」といった、目先の利益よりも相手からの信用や事業の確実さを優先する、住友の事業精神に根差したものです。住商の根底には常にこの精神があり、私自身も指導員や上司から、ビジネスにおける価値判断の基準として学び、引き継いできました。何か問題が発生したとき、関係者の間に立ち、解決へと導くには、日頃の信頼関係の積み重ねが何より欠かせないと思っています。
西谷 信頼していただくために、コミュニケーションを大切にすることも、上田さんから教わりました。トレードは社内外の多くの関係者のサポートで成り立っているから、日頃からコミュニケーションを取り、ピンチのときに助け合える関係を築いておくべきだと。新入社員時代は社員寮に住んでいたのですが、そこでも同期との交流は大切にするようにしました。
上田 福田さんは人間関係をすごく大事にしますよね。仕事で海外を飛び回っている中でも、時間をつくって人に会おうとするところを尊敬しています。だから私も、忙しくてもFace to faceの機会は優先するようになりましたし、西谷さんにも伝えるようにしました。
「親子」のような絆がチームワークを支える
指導員と被指導員の関係は、その後も続くものなのでしょうか?
上田 指導員と被指導員の関係は「親子」に近いと思います。何かあれば親身になって助けてくれる。その安心感があるからこそ、困難な局面でも踏ん張れるのだと思います。
西谷 指導員期間が終わっても、キャリアやプライベートの悩みなど、「まず上田さんに相談しよう」と思う存在です。今年のキャリア面談の前にも、上田さんに壁打ちの時間をいただきました。また、指導員制度から社内の人間関係がさらに広がっていくのも魅力だと思います。社内で「上田さんの被指導員です」と伝えただけで、「困ったことがあったらいつでも連絡して」と言ってくださる方もいますし、福田さん・上田さんと3世代で食事に行ったこともあります。
福田 私が住商に入社を決めた理由は、就職活動を通じて、チームワークのいい会社だと感じたことでした。入社25年経った今もその印象は変わっていません。指導員制度は、そうしたチームワーク文化を支える基盤の一つだと思います。単なる同僚というだけでは生まれない人脈が築けますし、指導員から被指導員へ、価値観や仕事に対する姿勢が自然と継承されていく。それが何世代も積み重なって、企業全体の文化を形成しているのだと思います。
これまでの経験を踏まえ、指導員制度の魅力はどんなところだと思いますか?
福田 自分が指導した後輩が成長し、活躍している姿を見られることが何よりの喜びですね。上田さんが社内で褒められているのを聞くと、自分のことのようにうれしいです。あとは、教える立場になることで、自分の仕事の仕方を見直したり、改めて知識や考え方を整理したりするきっかけにもなりました。
上田 私も自分が指導員になってみて、気づくことが多くありました。やってみると、知識量に差がある新人に1から教えることってこんなに難しいのかと。でもそれが学び直しになりましたし、教えることと教わること、どちらも成長の糧になったと思います。日々自分の業務に追われている中で、指導をするのは大変な時もありましたが、福田さんに貴重な時間を割いていただいていたことのありがたみも改めて感じましたね。
西谷 上田さんや福田さんをはじめ、住商の先輩方には、新人の悩みを受け止めてくれる懐の深い方がたくさんいます。こうした人を大事にする文化は、指導員制度によって育まれる「住商らしさ」の一つなのではないでしょうか。私も将来、自分が指導員になったときには、自分の言葉や行動でチームワークの大切さを示すことができる人になりたいです。