1. TOP
  2. Enriching+TOP
  3. カーボンニュートラルな未来を目指して。全社横断で新規ビジネスを創り出す住友商事の挑戦

Business

カーボンニュートラルな未来を目指して。全社横断で新規ビジネスを創り出す住友商事の挑戦

2026.10.1

住友商事(以下、住商)は全社を挙げて、カーボンニュートラル社会の実現に向けた次世代エネルギー事業や新産業創出に取り組んでいます。中でもエネルギーイノベーション・イニシアチブSBU(Strategic Business Unit/戦略事業単位。以下、EII)では、全社内の横串機能を担い、組織間連携によって新規ビジネス、新市場の創出を目指しています。今回は、そんなEIIをけん引する北島誠二SBU長に、これまでの具体的な取り組みや今後の展望を聞きました。

※住商は、2026年2月にカーボンニュートラル化目標を更新し、併せて、関連する「気候変動問題に対する方針」及びマテリアリティ「気候変動問題を克服する」における長期・中期目標を改定しました。

※本記事は、2026年2月に公開した記事を再編集のうえ掲載しています。

  • 常務執行役員
    エネルギーイノベーション・イニシアチブ(EII) SBU長

    北島 誠二

    インフラ事業部門で事業投資を担当後、ロンドンで欧州インフラ事業部門を統括。帰国後、EIIのサブリーダー兼企画・戦略部長として同組織の立ち上げに従事。欧州・米州・中国での駐在・ビジネス経験も長く、グローバルな視野から事業開発・組織運営に取り組む。2024年4月から現職。

従来の部門の枠組みを超え、社内の経営資源を集結

EII設立の背景を教えてください。

住商では従来から脱炭素・循環型エネルギーシステムの構築によるカーボンニュートラル社会の実現を目指し、各部門(現在の各営業グループ)で取り組んできました。しかしこの分野は共通の課題も多く、個別の取り組みでは効率が悪い。そのような判断のもと、従来の枠組みを超え、社内の専門的な知財や人財などの経営資源を戦略的に投下し、社会のカーボンニュートラル化に資する新規ビジネスを創出するとともに、住商の新たな収益の柱を生み出す組織として2021年4月にEIIが設立されました。

EII設立にあたっては、二つのこだわりがありました。一つは、完全な営業組織としてつくること。よくありがちなタスクフォースや組織横断サポート組織という形にするのではなく、「必ずここでビジネスをつくっていくんだ」という決意のもと、他の部門と同じような営業組織にしました。もう一つは、自分たちで新規ビジネスを開発するだけではなく、横串機能を持ち、他の部門の課題も一緒に解決しビジネスを生み出していくということ。それを体現するためにわざわざ会社の規則を変えて、あえて「部門」ではなく「イニシアチブ」という名前にしました。

新規ビジネスを創出へ。社外連携やルールメイキングにおける住商の強み

新規ビジネス創出に向けてどのように取り組んでいますか?

EIIでは「カーボンフリーエネルギーの開発・展開」「新たな電力・エネルギーサービスの拡大」「カーボンマネジメント」を重点3分野としています。プロジェクトごとに収益化に必要な時間は異なるため、私たちは各プロジェクトを「探検家」「開拓者」「成長・拡大/再構築」の3ステージに分け、今取り組むべきことを明確にし、それぞれの立場で成果を挙げていくことを目指しています。短中期で利益を上げるプロジェクトと、すぐに成果は現れなくても未来のために粘り強く試行錯誤を重ねる分野、どちらも大切ですので、おのおのが求められている時間軸をしっかりと意識しながら取り組むことが重要です。

組織間連携により新規ビジネスの創出を目指すEIIの取り組み
「新たなエネルギーマネジメントビジネスの創出」に向けた成長ストーリー

これまでどのような新規ビジネスが生まれていますか?

イオンモール大和郡山で稼働中のソーラーカーポート

例えば、イオンモールの駐車場に太陽光パネルを搭載した簡易屋根(ソーラーカーポート)を設置する事業があります。この取り組みは、これまで屋上にしか設置できなかった太陽光パネルを駐車場に設置することで、大幅に設置スペースが拡大し脱炭素化が促進されます。加えて、駐車場に屋根を設置することで雨の日や真夏の来客が増えるといった付加価値をもたらしていることや、多数の店舗への大規模な導入でコスト低減を実現させることが、顧客であるイオンモールさまからも評価され、26年7月末時点で15店舗に導入され、今後もさらに拡大予定です。太陽光発電設備の設置は昔からあるシンプルなビジネスですが、お客さまのニーズをしっかり汲み取りながら知恵を絞り、新たなモデルをつくることができているのは、EIIだからこそだと思います。

フュージョン(核融合)エネルギーの社会実装にも挑戦していますね。

22年に米国のベンチャー企業に投資するなど、国内外の企業と連携しながら、フュージョン(核融合)エネルギー(※)のサプライチェーン確立と発電の商用プラント化の実現を目指しています。フュージョンエネルギーは、核分裂の連鎖反応を伴う原子力発電とは全く別の技術。もしこの技術が本当に確立されれば、まさにゲームチェンジャーと言える、世界のエネルギーの大きな転換点になるのではないかと期待されています。実用化までは50年以上かかると言われてきましたが、欧米を中心とした政府の積極的なサポートに加え、大規模な民間資金の流入で2030年代にもしかしたら実用化の糸口が見えてくるのではという期待が生まれています。

また、フュージョンエネルギーは、その開発過程でさまざまな派生技術が出てくるということも分かってきました。私たちは、将来的なフュージョンエネルギー発電を目指しながらも、ここ数年のうちにそういった派生技術で収益化が図れる分野をいくつか特定し始めており、短中期でのビジネス化も視野に入れています。一般社団法人フュージョンエネルギー産業協議会(J-Fusion)では、バリューチェーンを俯瞰できるような企業にもヘッドに入ってほしいという政府からの依頼を受けて、私が副会長を務めていますね。

※ 水素などの軽い原子核同士を融合させ、ヘリウムのような別の少し大きな原子核となる際に、大量のエネルギーを放出する反応をフュージョン反応という。熱エネルギーを用いた発電技術は、温室効果ガスを排出せず、燃料供給も安定していることから、原子力や火力に代わる基幹エネルギー源として期待されている。

フュージョンエネルギーについて、詳しくはこちら

多様な新規ビジネスを創出するうえで強みとなっていることは何でしょうか?

新規ビジネスを創出するうえでは、社外パートナーや公共機関などとの連携が不可欠です。そんな中、「0から1」の新規ビジネスの立ち上げではもちろん、できあがったビジネスモデルを横展開するうえでも、各SBUのネットワークが役立っています。マーケットインの視点で各SBUの持つ顧客ニーズの吸い上げ、各産業の置かれている気候変動対策に対するスタンスや困りごとなど、全ては現場から生まれてくるもので、さまざまなセクターに刺さっている住商の総合力をどこまで生かせるかが鍵になってきます。

また、新規ビジネス開発の種となる新技術へのアクセスにおいても、総合商社のネットワークを活用しています。EIIのインキュベーションチームでは国内外にある住商グループのCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)とも連携し、将来、ゲームチェンジャーになりそうな先端技術を持つイノベーティブなスタートアップやベンチャー企業には早い段階からアンテナを張っています。また、そういった情報を基に関係しそうなSBUに展開しビジネス化の可能性を一緒に追求しています。

新規ビジネスや新産業の創出ではルールメイキングも重要ですね。

EVバッテリー・ステーション千歳

とりわけ気候変動や脱炭素が関連する分野では制度や仕組みが未整備なものが多く、新規ビジネスを創出するためには規制の強化や緩和など、ルールや法律を変える必要もあります。例えば、蓄電池事業の立ち上げ期には、蓄電時・放電時の両方で託送料(※)が生じ、二重課金の状態が普及の妨げとなっていました。私どもはこの負担を減らすことが蓄電池事業の普及につながり、電力会社にとっても長期的にはメリットがあることを、経産省をはじめとする省庁に粘り強く説明し、実現に導きました。

ルールメイクはそれによって利益を得る人がいれば、損をする人もいます。自社の利益だけを考えていてはまとまりません。究極的に何を軸にするかというと、社会全体にとって最も利益があるのはどのようなかたちなのかという視点です。これは住友の事業精神の一つである「自利利他公私一如(じりりたこうしいちにょ)」にも通ずるところがあります。新しい市場にこれから参加する人が適正な利益を得られる仕組みをつくり、補助金などに頼らなくても自走できる、サステナブルな状態へと移行していく。その過程をつくることも私たちの一つの役割だと考えています。

※ 送配電網の利用料金のこと。小売電気事業者から一般送配電事業者に対して電力量に応じて支払われる。

蓄電池事業について、詳しくはこちら

「今がまさに勝負の時」。営業現場の知見×脱炭素の発想で総合力を発揮

EIIの特徴である組織間連携は具体的にどのように進めていますか?

テーマごとに社内外の組織を連携させた「組織間連携プラットフォーム」を組成し、仮説・実証を繰り返し、具体的にカーボンクレジット、CCUS、バイオエネルギーなどのビジネスを追求する営業組織が誕生しています。

現在、組織間連携プラットフォームで取り組んでいるテーマの一つが、不動産のカーボンニュートラル化です。不動産や鉄鋼など素材関連を扱うSBUと連携し、ビルの建設時に使う鉄骨やセメントといった建材の脱炭素化や、「AIスマート空調」というAIを使って空調運転を最適化し、オペレーションの脱炭素化・省エネを図るサービスのビジネス化に向けて活発に活動しています。

EIIがなければ生まれていなかったようなプロジェクトもあります。例えば、それまでカーボンクレジットの重要性は全社で認識されていたものの、会社としての方針や戦略が明確ではありませんでした。組織間連携プラットフォームから始まった「カーボンソリューション事業ユニット」では、クレジットに取り組む際の戦略と社内ルールを策定した上で、さまざまな営業ユニットと協力しながら実績を積んでいます。

カーボンクレジットについて、詳しくはこちら

組織間連携を活性化させるためにした工夫はありますか?

商社は扱っている産業や商材が多岐にわたるだけに業務が細分化し、どうしても縦割りになりがちな面があります。そんな中、EIIが営業組織である以上、案件ができた時にどこに数字を付けるかといった議論を避けるため、設立時から他の営業グループと一緒に取り組んだ案件は、どのグループの成果であっても、全てダブルカウントして社員の評価につなげることで、縦割りの弊害を避けてEIIメンバーのモチベーションも維持できるようにしています。これは設立時のEIIリーダーだった現社長の上野の発案でこだわった点です。こうした工夫によって、組織間連携を通じた住商としての総合力が発揮できるようなプラットフォームや、より差別化の図れるイノベーティブなビジネスの創出を目指していきたいと思っています。

組織間連携プラットフォームの今後の構想はいかがですか?

組織間連携プラットフォームが力を発揮できるのは、住商にある41のSBU(※)が持つさまざまな知見や顧客のネットワークがあるからこそ。「そこに脱炭素的な発想をプラスすると、次に何が起きるんだろう」という意識は全社的にもだいぶ高まってきたと思いますが、もっともっと掘り起こしていって、会社としての総合力が発揮できるようなプラットフォームをこれからも立ち上げていきたいと思っています。また、EIIの名前にあるイノベーションの種をしっかりと発掘し組織間連携プラットフォームでより差別化の図れるイノベーティブなビジネスの創出を目指していきたいですね。

※2026年4月時点

最後にEIIとしての今後の抱負を聞かせてください。

EIIの設立から5年半が経ち、脱炭素への風向きも、横連携への意識もかなり変わってきましたが、中長期目線での気候変動問題に対処していかなければならないという事実は不変です。外的環境の変化にうまく対応しながら時間軸やリソース配分については迅速に調整を行いながらも、中長期目線での目標はぶらさずに進めていきたいと思っています。住商は今中期経営計画で、「GXで加速する新たな成長」を掲げていますが、その実現に向けて今がまさに勝負の時。一人一人が「次世代のビジネスをつくっている」という誇りを持ちながら、これからも各SBUとの協働で「低炭素・脱炭素」に関連するテーマを着実にビジネス化し、社会のカーボンニュートラル実現に貢献していきたいと考えています。

Comment

記事を読んで、「いいな」と思った点や印象に残ったことはありましたか?
記事の感想や編集部へのコメントをご自由にお書きください。

事業等に関するお問い合わせはこちら

Comment

コメント送信完了

コメントをお送りいただき、ありがとうございました!
今後、住友商事の情報発信に活用させていただきます。

事業等に関するお問い合わせはこちら

Recommend

編集部のおすすめ

Business

AIを活用した再生可能エネルギーの需給バランシングと運用最適化の高度化

Business

核融合に挑む「異端の起業家」と「大企業の勝算」

Business

フュージョン発電を夢で終わらせない!フュージョン派生事業から発電実装へと向かう、住商の戦略

Business

再生可能エネルギーで社会を変える。住友商事の多角的なエネルギービジネスを紹介

Business

進化途上のカーボンクレジット市場、「つくる・つなぐ・つかう」の全方位で切り拓く

Business

飛行機に乗って、森を育てる。日本製紙×JAL×住商が挑む、東北発の国産SAF実現プロジェクト

+ (Plus)

再エネを福島復興の要に。阿武隈風力発電事業が地域社会にもたらすもの

Business

福島・阿武隈の復興へ。国内最大の陸上風力発電事業に込めた住友商事の想い

Business

洋上風力事業に奮闘!住商新人の西海出張に密着

Business

蓄電所を基盤インフラに。北海道から始まる、蓄電池×住商のさらなる挑戦

Business

蓄電池で電力不足に挑む。住友商事が甑島で見出したエネルギー問題の未来​

Business

【超図解】地球温暖化対策の切り札?世界に広がる巨大な蓄電池

Culture

ランチも仕事もサステナブルに。欧州で再エネ普及に挑む、ドイツ住商社員の信念

Business

議論の段階は終わった。どう実現する? 住友商事が取り組む「本気の脱炭素」

Business

持続可能な森林ビジネス 全社横断「新部門」始動 森林資源を未来へ紡ぐ

Business

水素の可能性、未来へ 掛け算で水素のポテンシャルを引き出せ

Business

EV用バッテリーをカスケード利用 大型蓄電ステーションで脱炭素・循環型社会の実現へ

Culture

住商の新人が現場訪問!福島・浪江町に「国内駐在」 先輩の素顔は

Business

インドネシアで地熱発電に挑戦!住友商事が描く、サステナブルな未来とは

Business

グリーン電力を全国へ。脱炭素を実現する、新たな電力ビジネスとは

Ranking

人気記事ランキング
01

2026.7.15

Business

鍵を握るのは、SCSKとの協業。住商グループのデジタル・AI戦略「DAIS」、その全貌

02

2025.4.7

Business

住友商事が「メディア・デジタル事業に強い」と言われるのはなぜ?ビジネスの歴史と変遷を解説

03

2026.2.9

Business

線路点検をAIで省力化。住商×鉄道33事業者が挑む、鉄道業界の人手不足

04

2025.8.8

Business

世界2位の航空機リース事業を基盤に飛躍する、住商の航空事業の軌跡

05

2024.5.20

Business

サミットが日本のスーパーマーケットを楽しくする

Top