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2024.3.11

Business

持続可能な森林ビジネス 全社横断「新部門」始動 森林資源を未来へ紡ぐ

カーボンニュートラル社会の実現に向けて、住友商事は国内外で様々な取り組みを加速させている。2021年には全社最適の観点から気候変動問題に取り組む組織、エネルギーイノベーション・イニシアチブ(EII)を発足。森林ビジネスを通してこの組織が担う「二酸化炭素(CO2)の吸収・固定・利活用」について語ってもらった。

この記事は2022年2月に公開された内容です

  • エネルギーイノベーション・イニシアチブ(EII)
    サブリーダー

    北島 誠二

    インフラ事業部門で事業投資を担当後、ロンドンで欧州インフラ事業部門を統括。帰国後、EIIのサブリーダー兼企画・戦略部長として同組織の立ち上げに従事。欧州・米州・中国での駐在・ビジネス経験も長く、グローバルな視野から事業開発・組織運営に取り組む。

  • 木材資源事業部 木材第一チーム


    猪俣 京太郎

    木材資源事業部にて、中国駐在を経て、事業会社の管理業務および関連トレードに従事。地球にやさしい、持続可能な事業の継続・拡大に向けて日々奮闘中。

  • 木材資源事業部 木材第二チーム


    田島 佳史

    タイヤ部、中国駐在を経て木材資源事業部に配属。ニュージーランドにおける森林事業の管理業務および、同国からアジア圏への原木のトレーディングも担当。

イニシアチブ組織の牽引(けんいん)でカーボンニュートラル社会の実現を加速

カーボンニュートラル社会の実現に向けて、住友商事は社内外で様々な取り組みを加速させています。2020年6月に「気候変動緩和」を重要社会課題の一つに定めました。その内容はどのようなものですか。

北島 2050年の事業活動のカーボンニュートラル化を長期目標とし、それに至るマイルストーンとして、当社グループのCO2排出量を2035年までに50%以上削減(2019年比)することを明確化しました。同時に社会の持続可能なエネルギーサイクルの基盤となる事業を生み出すことも重要で、その構築を中期目標に盛り込んでいます。

2021年4月には新たな営業組織「エネルギーイノベーション・イニシアチブ(EII)」を設立しました。その経緯や目的についてお聞かせください。

北島 商社は事業ごとの組織体制になっていることが多いですが、気候変動緩和などの重要社会課題については、全社横断型の組織を新設し、全社最適の観点から取り組みを加速させることが重要だと考えています。そこでリーダーシップを発揮するのがイニシアチブ組織で「EII」はその第1号です。資源・化学品、インフラ、生活・不動産などの各事業部門からメンバーが結集しました。

EIIでは、脱炭素・循環型エネルギーシステムのバリューチェーン全体を俯瞰(ふかん)し、1) 水素・アンモニアの大型製造事業などのカーボンフリーエネルギーの開発・展開、2) 分散型電源事業・蓄電事業などの新たな電力・エネルギーサービスの拡大、3) CO2の吸収・固定・利活用――という重点3分野を設定。今後はEIIの全体戦略に沿う形で、重点3分野ごとの事業戦略を深堀りしていきます。

EIIが取り組む主な事業分野

脱炭素・循環型エネルギーシステムを目指し、3つの事業分野で組織横断的に取り組む

国・地域ごとに異なる状況に合わせた事業を展開する

イメージ図

ニュージーランドなどで森林資源を100年規模で循環させる

3つの重点分野のうち、「CO2の吸収・固定・利活用」に関係の深い森林経営においてはどのような取り組みを展開していますか。

猪俣 当社の森林資産規模は日系商社の中では突出しています。森林にはCO2の吸収・固定機能があり、適切な管理・伐採を通じて世界のカーボンニュートラルに貢献できます。また、水源涵養(かんよう)機能(注)、生物多様性の保全などにおいても、森林は極めて重要な資産です。

(注)水源涵養:森林が水資源を蓄え、育み、守る働きのこと。洪水を抑制したり、水質を浄化する機能もある。

私たちは、事業参画以来、FSC®認証(注)の取得なども含め環境に配慮した伐採活動を実施しており、近年では管理する森林がもつCO2吸収・固定量を独自に計測して可視化するなど、持続可能な森林経営を行っています。

(注)FSC®認証:FSC(Forest Stewardship Council®、森林管理協議会)が運営する国際的な森林認証制度
木材資源事業部ライセンス番号:FSC®-C016535

田島 2013年からニュージーランドで森林事業に参画しています。現在、同国で保有・管理する森林規模は東京23区の面積の8割に及び、「木を植えて、育てて、伐採する」サイクルを25〜30年で繰り返す、サステナブルな森林経営を行っています。政府や先住民族のマオリの方々と協業しながら地域や生態系にも配慮した私たちの森林経営は現地でも高い評価を得ています。

地形の確認のためのドローン、衛星データの活用等のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進や、各種森林オペレーションのオートメーション化検討にも取り組んできています。

住友商事のニュージーランド森林事業

会社名 Summit Forests New Zealand社
創業 2013年
事業概要 森林の保有・管理運営、原木伐採、原木販売(ニュージーランド国内向け、輸出)
所在地 ニュージーランド北島
林区面積 5.2万ha(東京23区面積の80%)
出資比率 100%
従業員数 35人
図
ニュージーランド北島の林区面積は東京23区の80%と広大
生態系に配慮して経営するニュージーランドの森林では野生の馬が生息する

エネルギーイノベーションを次世代の中核事業へ

EIIを起点にした新たなビジネスや価値創出に向けて、今後のビジョンをお聞かせください。

北島 従来の建材用途の森林事業に加え、今後は森林のCO2吸収・固定機能に注目し、排出権の創出など新たなビジネスにもチャレンジしていきます。また、素材自体が化石原燃料の代替となり得る木材やバイオ素材を、燃料やグリーンケミカルといった川下分野に活用していくことにより、脱炭素社会の実現に貢献していきます。

CCUS(二酸化炭素回収・貯留・有効利用)、コンクリート、藻類、人工光合成など、エネルギーイノベーションの領域は広く、開拓の余地はまだまだあります。住友商事グループの経営資源を結集し、取引先やスタートアップ企業なども含め様々なステークホルダーとも協業しながら、持続可能な次世代型ビジネスの創出を通して、社会課題の解決に取り組んでいきます。

住友商事グループは「森林経営方針」および「林産物調達方針」を制定しています。

EIIが推進する主なプロジェクト

  • グリーン水素製造・販売事業
    写真

    地産地消型の水素コミュニティーの構築を目指す。

  • 木質ペレット事業
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    木質ペレットの安定供給に取り組む。

  • 次世代バイオ事業
    写真

    農業残渣(ざんさ)を活用した次世代バイオエネルギーを開発。

  • 福島県浪江町プロジェクト
    写真

    水素等の分散型クリーンエネルギー活用を浪江町から。

  • 分散型電源プラットフォーム事業
    写真

    クリーン電力プラットフォームビジネスに取り組む。

  • 大型蓄電事業
    写真

    再エネ大量導入時代の電力課題を見据えた蓄電基盤構築。

  • 複合エネルギーサービス事業
    写真

    都市型カーボンマネジメント事業で、カーボンゼロ実現へ。

  • 小樽市熱利用事業
    写真

    小樽市で世界最先端・日本初第5世代地域熱供給網を構築。

  • 森林事業
    写真

    森林資源保有・管理規模No.1商社として環境価値創造事業に取り組む。

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