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2023.10.1
Business
LNGの巨大プロジェクトに貢献する
住友商事はグループ企業のエルエヌジージャパンを通じ、燃焼時のCO2排出量が他の化石燃料より少ない天然ガスの開発プロジェクトに参画しています。1990年代にインドネシアで始まったこのプロジェクトで産出される天然ガスは、アジア各国の産業や人々の生活を幅広く支えています。「気候変動緩和」と「地域社会・経済の発展」を両立する取り組みをご紹介します。
この記事は2020年10月に公開された内容です
「力強い」という名を持つプロジェクト
天然ガスは、化石燃料の中では燃焼時のCO2の排出量が少なく、環境負荷が低いことから、火力発電の燃料などに多く利用されている資源です。天然ガスの大量輸送には、産出地と消費地をパイプラインで結ぶ方法と、タンカーによって運ぶ方法があります。日本のように周囲が海に囲まれていてパイプラインが引けないエリアに供給する場合や、遠隔地などパイプラインでの輸送が経済的でない場合は、タンカーでの運搬が必要になります。そのため、常温では気体の天然ガスをマイナス162度に冷却して液化することで、容積を約600分の1に減少させ、運搬に適した状態にしたのがLNG(液化天然ガス)なのです。
インドネシア西パプア州に位置する同国有数の大規模な天然ガス田を背景としたLNG事業開発の機運が高まってきたのは、1990年代のことでした。1994年にスハルト大統領が「タングー」(インドネシア語で「力強い」の意)と名付けたこの天然ガスを採掘しLNGとして出荷するというプロジェクトに複数の日本企業も参加し、資金面などで開発をサポートしてきました。そのうちの一社が、住友商事の関連会社であるエルエヌジージャパンです。
東日本大震災後の電力をLNGで支える
2011年3月11日の東日本大震災後、日本の原子力発電所からの電力供給が落ち込んだことにより、火力発電の存在感が高まりました。その際、タングープロジェクトは一部LNGの仕向地を日本に変更し、震災後の電力安定供給の一端を担いました。このLNG供給により、戦後最大の危機ともいわれた震災後も、エネルギー面で日本国民の生活の安定に貢献しました。
タングープロジェクトは2016年に拡張工事への投資を決定し、23年に液化設備第3系列が増設され、LNG生産能力は年間760万トンから年間1,140万トンへと増加しました。新たに生産されるLNGの75パーセントはインドネシアの国営電力会社に供給、今後増加が予想される同国のエネルギー需要を支え、残りの25パーセントは日本の関西電力に販売され、日本のエネルギー安定供給にも寄与しています。加えて、24年には、インドネシア初の大規模なCCUS(注)を含む新たな拡張計画への投資決定を行い、今後の同国におけるCCUS技術の発展に貢献することが期待されています。
(注)Carbon Capture, Utilization and Storageの略。排出されるCO2の回収、利用、貯留による温室効果ガス排出量の削減を図る技術。同計画では回収されたCO2を用いてEGR(Enhanced Gas Recovery(天然ガス増産))を行う。
長期にわたるコミットメント
LNGプロジェクトは、長い時間を要する事業です。10年、20年という長期間にわたって資金や事業オペレーションの面で継続的に貢献できる企業は決して多くはありません。企業としての「粘り強さ」が問われる事業です。
今後も日本や韓国など、資源の少ない国に安定的に天然ガスを供給し、また中国や東南アジア諸国の産業や生活の発展をエネルギー面で支えるために、LNGプロジェクトの開発、運営を粘り強く進めていきます。