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2023.10.1

Business

愛知県知多半島で稼働する、国内最大級の木質系バイオマス発電

住友商事グループのサミットエナジーは、自社グループで保有する発電所を1つの核とした電力小売り事業を行っている。2017年6月、サミットエナジーとして2カ所目のバイオマス発電所となる「半田バイオマス発電所」が商業運転を開始した。愛知県半田市の衣浦(きぬうら)港に隣接し、現在国内で稼働しているバイオマス専焼(※)が可能な発電所としては最大級の、出力75メガワットを誇る。10月上旬、本発電所のメディア向けに見学会を開催した。

※バイオマス専焼:発電時、燃料を全てバイオマス燃料で賄う発電方式のこと

この記事は2017年12月に公開された内容です

  • 報道チーム

    深田 麻衣

    2012年入社の6年目で、環境・インフラ、メディア、化学品、国内関連の報道業務を担当している。趣味は中学1年生の時に始めた硬式テニスと、社会人1年目に始めたゴルフ。ゴルフでは飛距離は出せるがラインと距離感が読めず、「今年こそは100を切る」と言い続けてはや数年、自己ベストは100。

そもそも、バイオマス発電とは?

バイオマス発電とは、間伐材から作られた木質チップなど、生物由来のバイオマス燃料を燃やして発電する仕組みだ。木質チップを燃やすと二酸化炭素が発生するが、木が成長する間には光合成で二酸化炭素を吸収しているため、大気中の二酸化炭素量は変化しないとする「カーボンニュートラル」の考え方を適用し、再生可能エネルギー発電に分類される。多くの再生可能エネルギー発電と異なり天候に左右されないため、ベース型電源として安定した電力供給が可能だ。半田バイオマス発電所では、主に木質チップとPKS(パームヤシ殻)を燃料としており、これらは住友商事の生活資材・不動産本部が国内外から幅広く調達している。

いざ、発電所の内部へ!

名古屋鉄道知多半田駅から車で約10分、発電所の入り口を通ると、想像以上の建屋の大きさと迫力、敷地の広さに圧倒された。約4.3ヘクタールの敷地に、ボイラー、3つのバイオマスタンク、冷却塔や管理棟が並んでいる。建屋の高さは約54メートルで名古屋城とほぼ同じであり、最も高い排気筒まで入れると80メートルを超えるそうだ。本発電所の運営・管理を行うのは、サミットエナジー子会社のサミット半田パワー。発電所には約20トンの木質チップを積んだトラックが次々にやってきて、トラックダンパーで受入口へ投入され、搬送コンベア上で異物を取り除いた上でバイオマスタンクに数日間保管され、ボイラーへと運ばれる。半田バイオマス発電所では、トラックダンパー、チップを運ぶコンベア、タンクなどの施設は全て密閉式になっている。これは、チップの粉じんが近隣へ飛散するのを防ぐためだそうだ。中央操作室では、常時3名が24時間体制で発電状況を把握、管理しており、燃料搬送設備の供給系の不具合等のトラブルが起こると、すぐに復旧作業にあたる。発電所は一度止めると再稼働までに最低3日を要するため、電気を安定的に届け続けるための努力が日々行われている。

トラックダンパー。コンテナが最大50度まで傾き、チップが受入口に投入される
中央操作室の様子
電力供給にとって心臓部の一つである発電機

トラック約6,000台分!木質チップが到着

筆者が訪問した際、タイミング良く、衣浦港に木質チップを運ぶ船が港に到着して荷揚げ作業を行っていた。木質チップは年に7回、専用船で運んでくるそうだ。深さ約22メートルの船倉に詰め込まれたチップは、爪がついた大きなクレーン3台と、船上に設置されたベルトコンベアを使って船から降ろされ、その後チップヤードへと運ばれていく。その圧巻のボリュームはトラック1台あたり約18立方メートルとすると、船倉の容積は約10万8千立方メートルあるため、トラック約6,000台に相当する。チップの荷揚げ完了には5~6日かかるそうだ。

木の香り漂うチップヤード

見学中、何台ものトラックがやってきてチップを降ろしていく

荷揚げ地から300メートル離れたチップヤードへ到着すると、当然ではあるが木の香りが一面に漂っていて、何台ものショベルカーやブルドーザーが、続々と運ばれてくるチップを積み上げていた。チップの山から建機が滑り落ちないか心配したが、そこは熟練の技術。チップは約15メートルの高さにまで積み上げられる。船2隻分、約8万トンのチップがここに保管されており、月曜日から土曜日まで毎日約1,000トン、約4キロメートル離れた発電所へ出発するという。チップヤードにはテントが張られた箇所があり、その下にもチップが盛られている。これは、雨の日でも乾いたチップを発電所へ運ぶための工夫である。

チップヤードの概要を参加記者へ説明。テントの下に積まれたチップは、雨の日に発電所へ運ばれる

一言で「木質チップ」と言っても、樹木の種類や産地によって、含んでいる水分量や発熱量に違いがあるため、発電する際は数種類の燃料を混合して燃やしている。サミット半田パワー社長の大澤知弘は、「安全に、安定した電気を届けるのは当然のこと。その上で、より効率的かつ最適な発電を可能にする燃料の配分や運用を探求しなければなりません。試行錯誤の毎日ですが、そこにやりがいがあります」と語る。どのように混焼するかは、電気の安定化に直結するのだ。

大澤は、バイオマス燃料の匂い(チップヤードの香り)の変化で「もうすぐ、雨が降ると思いますよ」と予報し、木質チップの写真を携帯電話の待受画面に設定している。緊急時には、深夜でも駆けつける社員もいる。こうしてサミット半田パワーの仕事は、今この瞬間も続いている。

国内最大級のバイオマス発電所 完成までの軌跡

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