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2023.10.1

Business

硫酸事業を通じて世界の産業や人々の生活を豊かに

硫酸は世界で最も多く流通している基礎化学品で、用途は農業、工業、鉱業、繊維業など極めて幅広い分野に及ぶことから、人々の暮らしに必要不可欠な化学品です。住友商事は、硫酸販売会社であるインターアシッドグループを傘下にもち、世界最大級の取引規模を誇ります。同グループは硫酸の海上貿易にとどまらず、貯蔵施設を自社で保有し、安全で安定的に硫酸を供給する仕組みを構築しています。さまざまな産業を支え、「地域社会・経済の発展」に寄与している住友商事グループの硫酸事業をご紹介します。

この記事は2020年7月に公開された内容です

世界で最も大量に流通している基礎化学品

硫酸は世界で最も大量に生産され流通している基礎化学品で、その取引量は年間およそ3億トンに達します。劇物のイメージの強い硫酸ですが、用途は農業、工業、鉱業など極めて幅広い分野に及びます。例えば、農業用肥料に含まれるリン酸の生産に硫酸は欠かせません。多くの服飾に使われているナイロン繊維の原料にも硫酸が使われています。銅やニッケルなどの地金のリーチングに用いられるのも硫酸です。人々の目に見えないところで生活を支えている化学品。それが硫酸です。

硫酸のおよそ7割は硫黄を焙焼することによって生産され、3割は銅や亜鉛などの非鉄金属の製錬の際に副産物として産出されます。硫黄焙焼によって生産される硫酸は主に地産地消されますが、非鉄製錬によって生み出される硫酸の一部は産出地で消費できず、貯蔵も困難です。住友商事グループはそれを必要とするさまざまな産業へ安定的に届ける事業を行っています。

インターアシッドグループでは社長を含めた全社員が現地採用のスタッフによる、当社でもユニークな運営体制

それを担うのが、住友商事の100パーセント子会社であるインターアシッドグループです。1970年に硫酸専門商社として設立されたインターアシッドスイスを住友商事が子会社としたのは93年のことでした。現在、全世界の年間硫酸流通量およそ3億トンのうち、海上輸送によって遠隔地に運ばれている硫酸は1,400万トンほど。インターアシッドグループは海上輸送取引の3割を取り扱います。これは1社が手掛ける量としては世界最大級です。

貯蔵タンクを自社運営する唯一の硫酸トレーダー

インターアシッドグループの最大の特徴は、トレーダーでありながら硫酸の貯蔵タンクを自社で保有・運営している点です。現在、米国東海岸のタンパ、同西海岸のストックトン、チリのメヒオネスに貯蔵タンクを保有しています。また、住友商事グループのネットワークも活用し、オーストラリアのグラッドストン、タイのマプタプットにある貯蔵タンクを介してトレードを行っています。世界の硫酸トレーダーの中でタンクを自社運営しているのはインターアシッドグループだけであり、これらタンクを活用したトレード及び物流サービスをグローバルに展開中です。

硫酸の需要家は、肥料工場、化学工場、鉱山などさまざまです。それらの需要家は硫酸の不足による生産遅延を防ぐために、安定的な硫酸の供給を必要としています。インターアシッドグループは貯蔵タンクを保有し、需要家が必要なときに必要な量の硫酸を確実に供給できる点が、大きなメリットです。また、貯蔵が困難な硫酸を非鉄製錬会社から安定的に引取ることが出来る点もメリットとして挙げられます。硫酸を生産地から需要地まで運ぶだけでなく、「需給バランス調整」「安全・安心」という付加価値を提供できること。それがインターアシッドグループの硫酸事業の大きな強みです。

物流サービスとして、貯蔵タンクの一部は、需要家が使用可能な一種の「貸し倉庫」としても提供しています。需要家は、他の事業者から仕入れた硫酸をインターアシッドが保有するタンクに貯蔵でき、当社はタンク賃貸による収益を得られるというビジネスモデルです。また、チリのメヒオネスでは、硫酸の積み込み能力を増強し、取扱量を大幅に増加させるといった取り組みも行っています。

チリ・メヒオネスに保有するタンクターミナル
大型ケミカルタンカーにより、数万トン単位で硫酸のトレードを行っている

米国西海岸の硫酸需要に応える

インターアシッドグループは2019年10月に、米国西海岸ストックトンにおける新たな硫酸タンクターミナルの営業を開始しました。米国西部では、カリフォルニア州の農業やアリゾナ州での鉱業などで硫酸が多く用いられ、今後も硫酸需要は高まっていくと考えられています。とくに、米国最大の農業地帯であるカリフォルニア州では、州中部・南部の慢性的な水不足を補うため、広く灌漑がおこなわれており、硫酸は土壌改善のためにその灌漑水に使用されます。

旺盛な硫酸需要があるこの地域ですが、インターアシッドグループの硫酸タンクターミナルが完成するまで、需要家はメキシコやカナダなどといった遠隔地から陸路による輸入に頼るしかありませんでした。需要家にとって遠隔地からの陸路による輸入は、硫酸の納品までに時間を要するだけでなく、輸送コストの負担を増加させることとなります。ストックトンに新設した硫酸タンクターミナルは、既存の供給ルートに比べ、物流面での圧倒的な優位性を持ち、需要家の抱える時間とコストの課題を解決することができます。

今後もストックトンの硫酸タンクターミナルでは安定的な操業を行い、米国西部の硫酸需要に応えていきます。

2019年10月に営業を開始した、米国西海岸初の硫酸タンクターミナル(ストックトン)

安全を最優先し、一滴の硫酸も漏らさない

安全を最優先したオペレーションを行っている

硫酸は劇物であり、運搬や保管には特別なノウハウや設備が必要です。漏えいによる人身事故などを防ぐため、「Zero Leakage Policy」を策定・運用しています。

荷受けから貯蔵、出荷に至るすべての段階で、漏えいが起こりうる潜在リスクを徹底的に洗い出し、設備やオペレーションの改善を進めるのが「Zero Leakage Policy」です。米国では国家資格を有する安全管理コンサルタントを起用。チリではカトリカ・デル・ノルテ大学所属の鉱山・工場・プラントエンジニアの協力の下、FMEA(Failure Mode and Effects Analysis)手法に基づく徹底的な潜在リスクの洗い出しにより策定しています。

これに加えて、安全性の高いパイプライン導入や、ドローンやセンサーといったデジタル技術を活用した効率性の高い設備の定期点検によって、「安全を最優先し、一滴の硫酸も漏らさない」方針を徹底しています。

最も総合商社らしいビジネス

トレーディングと事業投資は、総合商社のビジネスの根幹であると言えます。住友商事グループの硫酸事業は、日本国内で産出される硫酸を仕入れてトレーディング網に乗せるだけでなく、インターアシッドグループに投資をし、親会社としてグループの経営に関わっています。絶えず動き続ける世界の硫酸市場でトレーディングと事業投資の両輪を手掛ける点において、最も総合商社らしいビジネスであると言えます。

住友商事グループはこれまで、およそ35年にわたって硫酸事業に取り組んできました。今後も新しいアイデアやテクノロジーを積極的に取り入れながら、このビジネスを次世代に引き継いでいくことが大きな目標です。

生産者と需要家をつなぎ、世界に硫酸を安定的に供給すること。それによって世界の産業や人々の生活を力強く支えること。住友商事グループはこれからもビジネスの成長を目指します。

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