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2025.10.3
Business
油のオーダーメードはお任せ。国内No.1ラインアップを誇る「サミット製油」とは

住友商事(※)とキユーピーの共同出資により、1968年に設立された「サミット製油」。現在は食用油から工業油、健康食品・化粧品原料まで、41種類もの油を取り扱う、植物油の製造ラインアップ国内No.1の事業者です。幅広いお客さまの要望に応える製造力の秘密と、奥深い植物油の魅力について、油のスペシャリストである坂 英明に語ってもらいました。
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サミット製油株式会社 営業部 加工油脂チーム チームリーダー
坂 英明
2001年、サミット製油入社。品質管理や企画開発を経て、04年より営業職。15年には工場製造部に移り、前年秋に起こった「オメガ3ブーム」を支える。15年11月に営業部に戻り、自社製品の開発・営業・販売にも携わる。24年より現職。
食用から化粧品、防寒インナーまで。意外と知らない「植物油」の世界
まず「植物油」の魅力について、簡単に教えてください。
坂 植物油と聞くと、スーパーマーケットに並んでいる食用油をイメージされる方が多いのではないでしょうか。スーパーの棚を見渡してみても、「ごま油」「菜種油」「オリーブオイル」をはじめ、バラエティー豊かな植物油が並んでいますよね。一昔前は「油はなるべくとらない方がよいもの」というイメージが強く、たたき売りされていた時代もありましたが、現在は食事のおいしさと栄養を支える原料として「油は選んでとるもの」という認識が広まり、一般の方にも高品質な油をお求めいただけるようになりました。
実は植物油は、食用以外にもさまざまな製品に使われているんです。例えばヘアオイルや美容液、せっけんといった化粧品の原料は、いずれも植物油ですね。また、冬場に大活躍する防寒インナーの繊維にも、肌触りを良くするために油が練り込まれています。このほか、健康食品によく用いられるソフトカプセルは、ゼラチンでできているので水分を含有できません。そこで、水の代わりに油を内容液として使っているんです。
サミット製油は、植物油を精製※し、加工用・業務用・家庭用に販売している会社です。大手食品メーカーやスーパーマーケット、各種メーカーといったお客さまに向けた「OEM企画開発」も行っており、身近なところだと、成城石井オリジナルのオリーブオイルやアマニ油の製造も、当社で手掛けています。
また、2014年ごろに起こったオメガ3ブームでは、多くの食品メーカーさまから引き合いをいただきました。オメガ3を含むアマニ油やエゴマ油は、酸化が早く扱いが難しいのですが、ブームの10年ほど前からお客さまと製品化に取り組んできた成果が実を結んだ瞬間でしたね。

※植物の種子などから採油した油から不純物を取り除き、製品に適した状態にする過程のこと
サミット製油では、どのような種類の植物油を製造・販売しているのでしょうか?

坂最も販売量が多いのは、多くの人が料理に使う菜種油ですね。菜種・パーム・大豆といった、よく知られていて消費量も多い油を「コモディティ油」と呼びますが、実は当社の売上金額だけを見ると、ひまわり・ベニバナ・コーンといった、日本ではそこまでメジャーではない「プレミアム油」が75%を占めています。このほか、アーモンド・クルミ・マカダミアナッツ・ボラージシード・ハトムギなど、国内ではニッチな「スペシャリティ油」を合わせて、計41種を製造・販売しています(25年8月現在)。
小ロット&高品質の植物油にも対応できる、独自の精製プラントとは?
41種類もの植物油を作り分けられるのはなぜですか?
坂 当社の製品開発は、メーカーなどのお客さまから「こういう商品が作りたいんだけど、こんな油を作れないか」といったご相談をいただくことで始まります。そこから原料を探し、分析やテスト製造を重ね、商品化の目途が立って初めて、商談に至るんです。こうした依頼にお応えし続けてきた結果として、現在も多種多様な油を手掛けることができています。
設備面で言うと、同じ油を大量に作る精製プラント(A精製〈Automation精製〉)のほかに、少量多品種の油を作ることができる精製プラント(B精製〈Batch精製〉)を備えていることも理由の一つです。A精製は1日10トンもの精製が可能なのに対して、B精製は0.2~3.5トン/日ほどの処理量ですが、B精製では大きく4つに分かれている精製工程の一つ一つを独立して行えるため、少ロットからでも精製できるんです。


中でもサミット製油の特色となっているのが、「脱ろう」と呼ばれる、油から「ろう」を取り除く工程です。特にアマニやエゴマは種から水分が抜けるのを防ぐために、種皮にろうが含まれていて、油が冷えると白く濁ってしまいます。そうならないように処理するのがこの工程で、それができる「ウインター」という設備を持っている製油メーカーはあまり多くありません。
加えて、「α-リノレン酸※」を含むアマニ油やエゴマ油は酸化しやすく、精製したらすぐに充填(じゅうてん)する必要があります。油は「生もの」ですから、精製を終えた瞬間が最も品質がいい。精製から充填(じゅうてん)までを一気通貫で対応できる当社だからこそ、こうした取り扱いの難しい油も高品質で製造することができるんです。
※体の組織が正常に機能する上で欠かせない「必須脂肪酸」として知られる、「オメガ3(n-3)系脂肪酸)」の一種。人間の体内でつくることができないため、食物からとる必要がある
種子を探しに中国へ。「こだわり過ぎた」自身初の自社商品開発
坂さんご自身は、どんなキャリアをたどってきたのでしょうか?
坂 入社時は品質管理の部署に配属となり、そこで油の基礎的な知識を身に付けたのち、21年ほど前から主に営業部に所属しています。また、一部製品の開発にも携わってきました。営業では、どちらかというと変わった油を売る機会の方が多かったものですから、お客さまにご納得いただけるような技術的な説明をできるようにと、さまざまな資格を取得してきましたね。

坂さんがこれまで開発を手掛けた中で、特にこだわりが詰まった商品は何ですか?
坂 1つは、業務用のゴマ油です。ゴマ油は、食用以外にアロマテラピーやマッサージなどにもよく用いられるのですが、あるお客さまから「顔に垂らして使用する際に、油の臭いが気になる」との相談がありました。マッサージ用はゴマを生搾りして作るので、どうしても生っぽい臭いがしてしまうんですね。そこで、B精製の設備を生かして脱臭処理を行い、生臭さを取り除くことに成功しました。

もう1つは、自社商品として開発した「41Oils えごま油」です。当社ではこれまでOEM商品を主体に作ってきましたが、「お客さまメーカーの商品と共存でき、油メーカーならではのこだわりを詰め込んだ自社商品を作り出そう」と開発が始まった商品です。肝心の中身は、「こだわり過ぎ」というくらい(笑)。エゴマが育ちやすい中国の寒冷地の農家さんを訪ね、α-リノレン酸の含有量が最も高い種子を選び、栽培してもらうところからスタートし、1年以上かけて完成しました。パッケージに関しても、最近よくしょうゆなどに使われている「二重ボトル」と、油にはあまり使われない黒色の「遮光ラベル」を採用し、酸化が起きにくいようにしています。
単純だけど奥深い。「油のファン」を増やしていくために
坂さんが思う、サミット製油での仕事の面白さとは?
坂 油は、「1つのグリセリン+3つの脂肪酸」という単純な構造でできています。それぞれの成分の割合と種類と配置によって種類が変わり、特性も異なります。イメージとしては、グリセリンに3つ手が生えていて、どの成分と、どの順番で手をつないでいるかで違いが出るといった感じですね。当社には油を加工する機能はありませんから、自然界の中からお客さまの要望に合った特性を持つ油を探してくるわけです。

また、菜種油一つとっても、当社では用途に応じて異なる種類を扱っています。例えば、マーガリンなどの原料として使われる「LE菜種油(低エルシン酸)」、黒いゴミ袋の静電気防止などに使われる「HE菜種油(高エルシン酸)」、食用でこだわりが強い人に人気の「産地限定 圧搾なたね油」……成分や製造・精製方法によって、全く異なる使われ方をするんです。単純だけど奥が深い、それが油の面白さですね。

最後に、住友商事グループの一員として、そして「植物油の製造ラインナップ国内No.1」事業者として、今後の展望をお聞かせください。
坂 住友商事には多様な部署があり、いろいろな業界のお客さまと仕事を行っています。植物油もさまざまな用途で使われていますので、連携することでお客さまにとってより有益な提案ができるのではないかと考えています。また、世の中にサスティナビリティが浸透してきている中、「フルーツの缶詰やトマトソースを製造する際などに出る種を使って油を作れないか」といったご相談も増えています。こうしたアップサイクルの観点でも、一緒に取り組んでいけたら良いですよね。

当社としては、現在手掛ける41種類の植物油の中には、多く売れるものとそうでないものがありますが、お客さまへ多種多様な選択肢を提供するためにも、継続してすべての油を作り続けていきたい。それがサミット製油の独自性を生かした、私たちのミッションだと思っています。そして、多くの方に植物油の奥深さや面白さを知っていただき、「油のファン」をどんどん増やしていきたいですね。