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2023.10.2

地域包括ケアのプラットフォームづくりを目指して

住友商事グループのビジネスをピックアップしてご紹介。今回は、日本の高齢化社会を下支えするプラットフォームづくりを目指す、国内ヘルスケアビジネスの取り組みをご紹介します。

  • ヘルスケア事業部長

    長谷川 博史

    国内ヘルスケア事業を主導。全体戦略の立案や、資金・人材をはじめとした各種リソースの確保、住友商事が担うプロジェクトの取りまとめ、ヘルステック企業への投資および合同プロジェクトの進行などに携わる。海外ヘルスケア事業も主導のうえで両事業を一体推進。

  • トモズ 代表取締役社長

    德廣 英之

    トモズの代表としてドラッグストア事業、調剤事業のチェーンストア経営を担う。現場の知見を国内ヘルスケア事業の戦略や投資計画にフィードバックする役割も担う。

  • トモズ 取締役
    薬剤部 兼 在宅推進室 兼
    薬局事業連携室 分掌

    山口 義之

    トモズの調剤部門を管掌するとともに、住友商事と連携して、調剤買収戦略立案、PMI(※)などを担う。調剤専門薬局を統括するアロスワンの代表取締役も務める。薬剤師免許を保有。
    ※ ポスト・マージャー・インテグレーション:M&A後の統合プロセス

時代を先取りした調剤薬局として誕生

国内ヘルスケア事業の現状について教えてください。

長谷川アセットベースでいうと、現在、国内ヘルスケア事業の投下資本の6割をトモズ事業が占めています。残りの4割のうち、ほとんどが直近で新たに積み上げてきたアセットです。アロスワンやトモズでも複数の調剤薬局を買収してきています。また、訪問看護向け電子カルテやオンライン診療などのヘルステック企業への投資も加速しています。

德廣人員の面では、住友商事本社で国内ヘルスケア事業に関わるのは40人ほどですが、トモズ全体では4,000人以上、アロスワンでも500人が在籍・活躍しています。M&Aなどを通じて、今後さらに事業規模を拡大していく予定です。

山口トモズは物販部門と調剤部門を併せ持つ店舗形態(調剤併設型ドラッグストア業態)が特徴ですが、近年、徐々に調剤部門の売り上げが伸びています。現在、調剤薬局は変革期にあり、地域の医療従事者(医師、薬剤師、看護師など)がタッグを組んで患者を在宅でケアするなど、薬局の重要性はさらに高まっていくと予想されます。

調剤薬局が変革期を迎えているとのことですが、国内ヘルスケア事業はこれまで、どのような変遷をたどってきたのでしょうか?

長谷川国内ヘルスケア事業の原点は、1993年のトモズの誕生です。当時の日本では医薬分業(※)が進められ、薬剤師が薬の調剤を行う調剤薬局の数が増えている最中でした。

※薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師、薬剤師という専門家が分担して行うこと。

德廣当時、米国では調剤機能を持ちつつ、かぜ薬などの処方箋が不要な一般医薬品や医療機器、日用品なども販売する店舗形態が拡大しており、そのアイデアをいち早く取り込んで生まれたのがトモズです。日本では他に類を見ない形態で、私と山口さんは94年からトモズ事業に携わってきました。

地域医療を支え続けるために

長谷川日本でも30年かけて医薬分業が進んだのですが、物販と調剤の売り上げ構成については当初の想定通りにはいきませんでした。米国のドラッグストアでは調剤と物販の売上比率は調剤が8割だったのに対し、93年当時のトモズではほぼ物販が占めていました。現在では調剤の比率も伸びてきており、今後、さらに拡大して5割を目指す計画です。

山口トモズは、時流を捉え、商品構成や店内のレイアウトを変化させてきました。代表例が看板のカラーであり、当初のオレンジ色から、化粧品やドクターズコスメのニーズの拡大を捉えて女性が入りやすい赤色、そして調剤のニーズが高まってきた近年はどなたでも入店しやすい青色へと、約10年おきに変更しました。

德廣一方で、トモズは一貫して“地域医療のインフラを存続させる”というミッションを担っています。90年代に医薬分業で調剤薬局が多数出店して地域医療を支えましたが、30年が経過して引退を考えるオーナーが増え、全国で6万店ある調剤薬局の統廃合が進んでいます。高齢化が進む中での調剤薬局の減少は地域医療の崩壊につながりかねません。トモズには、97年の「アメリカンファーマシー」、2000年の「朝日メディックス」、06年の「コーエイドラッグ」、10年の「クスリのカツマタ」の買収・統合などを経て事業を成長させてきた経緯があり、M&Aの経験が豊富です。また、30年間にわたって培ってきた調剤のノウハウ、充実した教育体系を有しており、トモズがM&Aを通じて個人オーナーの調剤薬局の運営を受け継ぎ、サービスレベルを向上させ、地域医療に貢献しています。

山口商社である住友商事の武器は“人”であり、これはトモズにおいても変わりません。調剤と物販の両方に高度な知識と強い意欲を持つトモズの薬剤師はお客様のお悩みに寄り添うことが可能で、トモズの大きな強みになっています。

知見とノウハウを蓄積し、社会課題に応える

先ほど地域医療を支えるというミッションについて伺いましたが、改めて、今後の国内ヘルスケア事業のビジョンと、住友商事の中期経営計画「SHIFT 2023」における取り組みについてお話しください。

長谷川国内ヘルスケア事業では「個人のQuality of Life向上に資するサステナブルなヘルスケアシステムの構築」を目標に掲げており、それを実現するための“場”や“つながり”を提供することができます。例えば、トモズと食品スーパーのサミットを併設することで暮らしと健康をつなぎ、現在注目を集めている未病・予防(病気を未然に防ぐ)のニーズに応えることができますし、さらにはクリニックや介護施設と併設することで地域包括ケアを実現することができます。これは、不動産事業をはじめ、複数の強いアセット・ノウハウを有する住友商事グループならではの街づくりです。
また、医療のマーケットは現在43兆円、介護も含めると50兆円に上りますが、4~5年後には、さらに20~30兆円の拡大が見込まれています。しかし、医療費の増加は、国の財政負担増につながるため、生産人口減の中では、医療の効率化が重要社会課題になります。そこで私たちも、ゲノム解析等の個人データ活用による新しい健康サービスの提供など、住友商事やトモズだからこそできる未病・予防のサービスを模索しています。

山口調剤事業では、効率化と低コスト化を図るため、調剤作業を自動化した店舗を既に2店舗展開しています。試験段階ですが、さらなる拡大を見据えています。

德廣地域包括ケアという点では、規制緩和を経て、今後はオンライン診療や服薬指導、処方箋薬の配送などのニーズの高まりが予想されます。サミットはもちろんJ:COMやティーガイアといったグループ企業とも連携して、ハード面でもソフト面でも地域医療の向上に寄与できるサービスの開発を進めています。
併せて、地域包括ケアを実現するには、健康相談もできる店舗づくりを目指すなどトモズ自体の進化が欠かせません。これを実現するために、社員の教育体系のさらなる充実にも努めています。

長谷川ヘルスケアのニーズは裾野が広く、DXの活用が必須になります。M&Aによる事業の拡大はもちろん、新サービス提供のための開発など、投入したリソースを最大限活用してアクセルを踏み込んでいくことが「SHIFT 2023」における国内ヘルスケア事業のテーマになると考えています。今後の展開に、ぜひご期待ください。

私にとっての“Enriching lives and the world”とは?

  • 長谷川 博史

    市場経済を前提とした喜びの継続・最大化に向けて、自分事として行動すること。

  • 德廣 英之

    事業を通じて、人々が心地よく健やかな毎日を送れるよう貢献する。

  • 山口 義之

    自利利他公私一如。(じりりたこうしいちにょ:「住友の事業は、住友自身を利するとともに、国家を利し、かつ社会を利するものでなければならない」という意)

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