グローバル事例
世界各地で安心・安全な水資源の提供を
ブラジル/オマーン/中国/UAE
偏在する水資源と増大する水需要
日本では、蛇口をひねれば飲み水が出てくることは当たり前と受け止められています。しかし、世界に目を転じると状況は大きく異なります。
地球上の水資源のほとんどは海水で、淡水はわずか2.5パーセント。さらに人が利用できる水となると、その割合は0.01パーセントにすぎません。そもそも水資源は偏在しており、利用にはインフラ整備が必要です。そのため中東、アフリカ、アジアなど、水不足に悩む地域が世界各地に多く存在します。
将来的にも、人口増加や都市化・工業化を背景に地球規模で水の需要増大が見込まれる一方、安全で衛生的な水インフラ環境の整備は進んでおらず、水問題の深刻化が懸念されています。そこで21世紀に入り、問題解決を目指した取り組みが世界的に注目され始めました。これには、「開発途上国における安全で衛生的な生活環境実現に貢献するのは先進国の責務である」という意識の高まりも影響しています。
住友商事は、上水だけでなく下水も併せた水ビジネスを社会インフラの重要な柱と考え、世界各地でさまざまな取り組みを行っています。水需要増大が著しい地域など、世界各地の有望市場において、上下水処理や海水淡水化などの民活型(※1)事業であるBOOT/BOO(※2)から完全民営化事業に至るまで領域を広げ実績を積んできました。日本の技術を生かして安心・安全な水を提供し、民間資本を活用して社会コスト削減要請に対応するなど、世界中に広がる水問題の解決に貢献すべく、よりグローバルで多面的な水ビジネスへの挑戦を続けています。
- 民活:公共により行われてきた事業に民間企業の持つ事業運営能力や資金力を導入し、効率化などを図る手法
- BOOT:Build-Own-Operate-Transfer。公共との長期契約に基づきサービスを提供し、契約期限が到来した後は事業資産を公共へ移管する形態
BOO:Build-Own-Operate。BOOT同様、公共と長期契約をベースにサービスを提供するが、資産は事業者が保有し続ける形態
グローバル総合水事業会社を目指して
住友商事は現在、ブラジル、オマーン、中国、UAEで2,000万人以上の人々に対して、上下水に関わるサービスを提供しています。
中国では2010年9月より中国水事業大手の北京キャピタル(北京首創股份)と提携、下水処理事業を共同で手掛けています。21年11月には、北京キャピタルと山東省に新たに事業会社、キャピタルサミット(首創頂峰環保投資有限公司)を設立しました。経済成長による生活水準の向上とそれに伴う環境保護意識の高まりを背景に、同国の水インフラ整備のニーズは高く、今後さらなる事業拡大を目指していきます。
オマーンでは12年11月に逆浸透膜技術により海水を淡水化する民活型造水事業を受注し参画、16年2月より商業運転を開始し、マスカット市民約80万人に上水を供給しています。本事業会社は18年1月にマスカット証券取引所に上場し、一部株式を外部投資家へ売り出しました。今後はより透明性の高い経営と安定した質の高い水資源供給を目指していきます。
また、上下水道の完全民営化事業に本格的に参入するべく、17年4月にはカナダのブルックフィールドビジネスパートナーズおよびブルックフィールドアセットマネジメントの投資顧客と共に、ブラジル最大の民間上下水道事業会社への出資参画を果たし、約1,700万人にサービスを提供しています。日本の質の高い運営ノウハウと技術力提供により上下水道普及率の拡大とオペレーション品質の向上に取り組んでいます。
住友商事は、これらの事業で培ったノウハウを生かし、完全民営化事業・コンセッション事業への展開はもとより、さらなる水インフラ環境向上のため、さまざまな機能を提供していきます。
地域の発展に貢献する循環型水インフラの提供
日本では主に自治体が水事業を担っており、上下水道施設や配水管・下水管網の運営・維持管理ノウハウ、低い漏水率、下水処理水の再生利用など世界トップクラスの技術を持っています。住友商事は、これら自治体が持つノウハウや日本企業の技術力を、当社の総合力を通じて活用することで、安全で衛生的な水インフラを安定的に提供し、さまざまな国や地域の発展に貢献したいと考えています。
グローバルな視点で見ると、水事業は「民活化」がさらに進んでいくものと期待できます。各国の上下水道計画を、当社が提供できるリソースを結集してサポートすることにより、その国の水インフラ整備に貢献できると考えています。住友商事は、循環型水インフラの提供へ大きな役割を果たすことを目標に、世界各地で安心・安全な水資源の提供に貢献していきます。
2022年06月掲載
キーワード
- 東アジア
- 中東・アフリカ
- 米州
- 環境
- 都市総合開発グループ