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2024.6.13

Business

〜WORLD BIZ+ インド編 〜 現地企業とタッグを組み切り開く、インド社会の発展

世界各国で幅広いビジネスを展開し、日々汗を流している住友商事グループの社員たち。そんな社員の言葉から、住友商事のグローバルビジネスの今を解き明かす、「WORLD BIZ+」。今回は、1950年から約70年にわたってビジネスを展開してきたインドを取り上げます。実は、住商が初めて海外に派遣員を置いたのはインドのボンベイ(現ムンバイ)。成長著しいインドでのビジネスの歴史、現地企業との取り組み、そして社会・経済の発展を目指して奔走する社員の活躍を紹介します。

  • 住友商事グローバルメタルズ
    線材特殊鋼鋳鍛事業部

    片山 和志

    1993年入社。線材特殊鋼貿易部に所属し、東京、名古屋、タイなどを拠点に線材特殊鋼を取り扱う業務に携わる。2019年より住商とインドの特殊鋼メーカー・ムカンドが共同出資した「ムカンド・スミ」に出向しインド駐在を開始。

  • 不動産SBU
    海外不動産事業ユニット

    長尾 優香

    2015年入社。23年6月から、住商とインドのクリシュナグループが共同で立ち上げた事業会社「Krisumi Corporation」へ出向。現在は首都デリー中心部からおよそ30Kmに位置するグルグラムのオフィスに勤務。

【+History】
人口14億人のパワーを追い風に、4拠点でビジネスを展開

2023年に中国を抜き、人口世界一の国となったインド。23年のGDPは世界5位、成長率は前年比7.6%(23年/24年度の見込み)を誇るなど、今後は日本やドイツを抜いて世界3位の経済大国になることが確実視されている国です。住商は1950年に初の派遣員をボンベイ(現ムンバイ)へ派遣したのを皮切りに、54年にカルカッタ事務所、56年にニューデリー事務所、61年にマドラス(現チェンナイ)事務所、64年にボンベイ事務所を開設。97年にはインド住友商事を設立しました。

現在、インド住友商事は支店、事務所を含め4拠点を構えています。また、インド国内にある8社の事業会社と共に、右肩上がりに成長する市場を取り込むべく活動しています。インドにおけるビジネスは自動車製造設備・部品や化学品・農薬、鉄鋼製品、炭素材、石炭などのトレード案件、自動車部品の製造販売事業や自動車リース事業、工業団地の開発・運営事業、農薬事業への事業投資と多岐にわたります。事業投資は、大手コングロマリットとの合弁事業等、事業ごとに経験のあるパートナーを選定し、互いの長所を生かしたビジネスを展開中です。これらの事業投資を通じて関係強化にも努め、インド国内外問わず、将来のビジネス展開の基盤構築に向けて取り組んでいます。

また、近年は不動産開発や都市ガス事業(天然ガス・LNG)、バイオマスや再生可能エネルギーなどの次世代エネルギーの開発にも注力しています。

【+Business】
自動車産業に欠かせない鉄鋼でインドの成長を下支えする

片山 和志

住商は2018年に、特殊鋼メーカーとしてはインドで最も古い「ムカンド」と共同出資して、インドの特殊鋼事業へ参画しました。特殊鋼の圧延・二次加工並びに 販売まで手掛けており、住商は主に運営やグローバルネットワークを生かした販売を担っています。我々が販売している商品の8割が自動車関連部品。インドでは日系企業のマルチスズキが自動車販売シェアの半分ほどを獲得していますが、品質に厳しい日系企業のニーズに応えるべく、社内で日本語 の合言葉として使っているのが「カイゼン」という言葉です。課題を見つけ、常に「改善」していく姿勢を忘れず、高品質な商品を作る意識を現地従業員と共有しているのです。

私は、現在21年に建設したばかりの新工場のCo-CEO(共同最高経営責任者)として、工場経営、人事や材料の開発、品質管理などの業務に取り組んでいます。インド駐在では困難なこともたくさんありますが、乗り越えられたのは、ムカンドと従業員との信頼関係があったからこそ。特に、コロナ禍ではロックダウンで工場の建設が遅れたり、需要が一気に落ち込んでしまったりと苦しい思いもしました。しかし、「良いものを作ってお客さまに提供できれば結果はついてくる」と信じ、従業員にも「なぜ住友商事はこの事業に参画しているのか」という理念を真摯に伝え続けてきました。そうして築かれた信頼関係は、今では事業の大きな柱となっています。

ホスペットにある新圧延工場
社内行事の一つであるクリケット大会の表彰式、インド人は皆クリケットが大好き

インドの自動車市場の成長は今後も続きます。マルチスズキは、年間200万台の生産台数を30年度までに倍の400万台まで伸ばすと発表しました。当然、当社としてもタイムリーに生産能力を拡張していくことが課題になります。生産が拡大すれば雇用や産業、ひいては国の発展にも貢献することができます。将来的にはインド NO.1の特殊鋼メーカーを目指すだけではなく、 増え続ける鉄鋼のグローバル需要に応えるべく、世界トップクラスの レベルまで事業を大きくすることが目標です。

【+Business】
首都デリー近郊の注目エリアで、マンションを軸に新しい街を創り出す

長尾 優香

現在、当社が参画しているのが、グルグラムで展開している「Krisumi Cityプロジェクト」。当社は当プロジェクトに2016年に参画。当時日系企業としてはインドのマンション開発・分譲事業に初めて進出しました。当社とローカルパートナーであるクリシュナグループが50%ずつ出資するKrisumi Corporationは、用地の取得から販売、管理運営まで手掛ける会社です。
当プロジェクトは、約13 ヘクタールの土地に住居約2,770 戸と商業施設、オフィスビルなどを建設する、総事業費約750億円の 大規模開発事業です。全4期にわたって実施され、約2ヘクタールの土地にマンション3棟(433戸)を建設する第1期、約1ヘクタールの土地にマンション1棟(320戸)を建設する第2期までは、すでに販売を終了。また、第3期はこの4月に販売を開始し、最後の第4期は30年に完成を予定しています。

第1期完成イメージ図
共用施設棟完成イメージ図
インターナショナルスタンダードなエッセンスを感じる室内

私は当プロジェクトで、事業会社のCo-CEO(共同最高経営責任者)のアシスタントおよびジャパンリレーションシップマネージャーを務めています。前者では設計会社との打ち合わせ、社内での工事進捗・販売進捗打ち合わせ、財務経理関係打ち合わせなど、マネジメントオフィスの一員としてほとんど全ての打ち合わせに参加し、また住商との連絡業務も務めます。後者ではマンションを購入したインドのお客さまが、お部屋を賃貸に出した際の、日本人テナントとの窓口業務が主な仕事です。開発したマンションは日本の会社が基本設計・デザインを手掛け、インドでは珍しいグレイッシュな寒色を取り入れたスタイリッシュなデザインが売り。エアコンやトイレなどにも日本の製品を取り入れ、ハイエンドな内装にこだわりました。

約170名の従業員が働く環境で、仕事の進め方や意見が合わないことは、もちろんあります。特に時間感覚や計画性などは、日本でのビジネスとは異なる点です。期日が過ぎても返事がなかったり……なんてこともしばしば。なかなか計画通りに進まず焦りを感じることもあります。ただ、そんな時でも、「うまくいかなければ、人を変えるのではなく自分が変わること」を心に留めて、現地スタッフとよく話し合い、納得した上で働いてもらえるよう意識しています。例えば、前もって早めの期日を伝えておいたり、毎日進捗確認をしたりして、できるだけスムーズに業務を進められるように自分自身で工夫すること。そうしていくうちに、私の想いが通じて、協力してくれる仲間が増えていくことは大きな喜びです。また、インドで仕事をする中で学んだことも多くあります。インド人の同僚たちは、何か問題が起こっても必ずソリューションを見つけて、解決に導きます。ヒンディー語ではこれを「ジュガール」と呼んでいます。柔軟な発想や臨機応変に対応する能力は、本当にリスペクトすべき点だと日々感じています。

インドの不動産マーケットは今、成長の真っただ中。ここグルグラムの マンションの販売価格もコロナ前の19年と比べておよそ1.7倍までに高騰しています。人口が増えていることもあり、国としても住宅や都市開発に注力している状況です。伸び続けるマーケット需要に、良い住宅を造って応えていかなければと思いますし、街づくりを通してインドの発展に寄与できることにも、やりがいを感じています。今後も、当社が手掛けたマンションを通じて、インドの皆さんの生活に豊かさを提供できたらうれしいです。

【+Future】
中長期的な目線で、インドの発展に尽力

新型コロナウイルスによるパンデミックが収束した今、より経済成長の勢いを増しているインド。日系企業の進出先としてもますます注目を集めています。住商でも、インド市場へ進出したいと考えている企業のサポートに積極的に取り組んでいます。24年3月にはインド南部タミルナド州で工業団地を運営しているマヒンドラ・インダストリアル・パーク・チェンナイ(MIPC)と広島県と住商の3者で協定を締結。これは広島県内の企業のインド進出を支援するものです。住商は今後も、これまで培ってきたネットワークやマーケットからの信頼を柱に、インドから世界へ、さらなる飛躍を共に目指します。

【+Life】
日本人は1人だけ! 牧歌的なインドを存分に満喫できるホスペットの日常

片山 和志

今住んでいるホスペットには日本人が私1人だけで、もちろん日本食レストランはありません。インドの同僚は毎食のようにカレーやスパイスの利いた料理を食べる人も多いですが、私はさすがに3食カレーでは飽きてしまうため、夜は都市部で買ってきた日本食材で自炊して日本食を食べています。決して便利とは言えないホスペットに住んだことで、幸せを感じる基準がどんどん下がってきたような気がします。ささいなことでも幸せを感じられるのは、素晴らしいことですよね。休暇の際は、近くにある世界遺産のハンピ遺跡を訪れたり、一番近いベンガルールの空港から飛行機で3時間ほどのタイに遊びに行ったりして、気分転換をしています。

牛が悠々と道路を歩く背後には風力発電所が見える。インドの急速な発展が垣間見られる一枚




【+Life】
日本企業も多く進出する都会的な街グルグラムでの暮らし

長尾 優香

私が暮らすグルグラムは、日本料理店も日本食材を扱うスーパーもあってインド国内では比較的日本人が住みやすいエリアだと思います。一方で、気候的な厳しさはありますね。夏は50℃を超え、冬は最低気温が5℃くらいになるところは、インド生活での大変な部分です。

そんなインドで見つけた最近の楽しみの一つは、洋服やジュエリーのオーダーメイドが安価でできること。仕立屋さんやジュエリーショップでワンピースやアクセサリーをオーダーしています。

また、国土がとても広いため、国内旅行はどこにいっても違う景色を見ることができます。 高原や湖、砂漠もあり見どころ満載のインドに、皆さんぜひ遊びに来てみてください。

都市部とは打って変わってインドの雄大な自然を感じることができる場所も

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