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2026.1.6
Culture
消費者向け事業に挑み続けて20年。4度の出向から見えた、お客様に向き合う「現場」の価値
商社といえば法人向けのBtoB(Business to Business)事業というイメージが強い中、住友商事(以下、住商)にはスーパーマーケットの「サミット」、ドラッグストアの「トモズ」、日本最大のショッピング専門チャンネル 「ショップチャンネル」*などの消費者向けのBtoC(Business to Consumer)事業を展開する「ライフスタイルグループ」があります。今回の記事では、住商のBtoC事業に携わり続けて20年超の大勝裕子をご紹介。右も左も分からず飛び込んだBtoCの世界で、4度の事業会社への出向を経た道のりや、80人のチームをまとめたマネジメント観について語ってもらいました。
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ライフスタイルグループCFO補佐/未来デザインチーム 未来デザイン施策「DEZART LAB」運営
大勝裕子
1996年入社。ベトナムでの工業団地の開発・販売業務に従事した後、2002年に社内公募制度を利用して、現ライフスタイルグループへ異動し、同時にカタログ通販会社・住商オットーへ出向。コーチ・ジャパン、ハースト婦人画報社への出向などを経て、テレビ通販のジュピターショップチャンネルへ出向。その後本社のDXセンターを経て、2023年より14年ぶりに現ライフスタイルグループの本社業務へ復帰。2024年より現職。2017年と2020年に産休・育休を取得。
活躍の場を求め、「消費財」の道へ。がむしゃらに駆け抜けた出向先での日々
ライフスタイルグループへ異動した経緯を教えていただけますか?
入社してすぐ、東南アジアで工業団地の開発・販売を手がける部署へ配属されました。工業団地の仕事にはとてもやりがいをもっていましたが、その当時は、安全面での理由から女性社員が担当できる国が限られていたんです。将来のキャリアを考えた時に、「もっと自分の価値を発揮できる場が外にあるかもしれない」と考えるようになりました。
ちょうど、社内公募制がスタートした時期でした。改めて「自分が好きなものは何だろう?」と考えて浮かんだのが、生活に身近な「消費財」です。扱っている商材の特性や自分自身の関心も踏まえ、私が活躍できるフィールドなのではないかと、ライフスタイルグループへの異動を希望しました。
数々の出向を経験されていますが、印象深いエピソードをお聞かせください。
まず出向したのは、カタログ通販の会社・住商オットーでした。ここで初めてBtoCに携わることになったんです。工業団地の開発・販売事業と比べると、扱う金額も商材もまるで違う。何十億、何百億円という投資案件と向き合っていたのが、「1商品980円」など、10円単位まで細かく見ていく世界になって。販売に関するデータ分析も初めてでしたから、戸惑いました。
次の出向先となったコーチ・ジャパンでは、業務内容はもちろんのこと、外資系の企業ならではのビジネスのやり方に面食らいましたね。「出向=即戦力」という感覚が当たり前で、1日目からプロフェッショナルであることが求められました。何か聞かれて、「分かりません」なんて答えられないような状況で。主に店舗管理、在庫管理業務を任されたのですが、ひたすらに専門書を読んで勉強し、短期間で社内プロセス・体制を整えましたね。
雑誌社であるハースト婦人画報社への出向は、「成熟した組織にジョインするのではなく、自分で新しいビジネスを立ち上げたい」という希望をかなえるための挑戦でした。同社と組んで、ECサイトでアパレル商材を売る仕事です。当時はECの勃興期でしたが、アパレル商材を取り扱うECは国内で前例がほぼない状況でした。そんな中で、「小売りを知っている住商だからこそできることはなんだろう」と、模索しました。海外ではECでアパレル商材を売っている成功事例があったので、「きっと日本でもやれるはず」と信じて、新規事業を立ち上げました。どの商品をどの層に向けて売るのかといったマーチャンダイジングはもちろん、販売予測や仕入れ、ECサイトのシステム構築、物流センター構築、コールセンターの仕組み作り、人材獲得など、ECサイトオープンに関わる実務的なありとあらゆることをまずは1人で考え、周囲の協力を得ながら進めなければなりませんでした。
ECサイトのオープン直前は、人生で一番働いていたかもしれません。オープン日を告知してしまっていたので、絶対にそこに間に合わせないといけなくて。今では考えられない働き方ですが、2~3時間しか眠れない日々が数カ月ほど続きました。とてもつらかったんですが、オープン初日に売上が立った時は本当にうれしかったですね。それと同時に、「今日は寝るぞ!」と思いました(笑)。苦労はしましたが、新しいビジネスで立ち上げから運営開始までの全ての工程に関わる経験は、貴重だったと今でも思います。この経験から、「あきらめずに必ずやり遂げる」というのが、私の信念になりました。
あらゆる経験がつながり、積み重なって、キャリアを形成されてきたことがうかがえます。
そうですね。特にECサイトのオープンを実現できた際は、住商オットーとコーチ・ジャパンでの経験が生きたので、キャリア形成における自信になりました。私は、現場の仕事がとても好きなんです。「あっちでもない、こっちでもない」と常に新しい挑戦をし続け、濁流に飲まれながら、手がけたビジネスが軌道に乗り、お客様が商品を選び、日々の暮らしで活かしてくださる過程を見届けることができるのは、BtoC事業の現場の醍醐味ですね。
「メンバーを信じる」さまざまな組織を渡り歩いてたどり着いたリーダーの姿
管理職に昇進し、部下を抱える中でどのようなマネジメントスタイルを意識されていましたか?
ジュピターショップチャンネルでは、執行役員マーケティング本部長として80人のチームを預かっていたのですが、もちろん全員を私が直接マネジメントできるわけではありませんので、私の下についた部長や課長がリーダーとして力を発揮しやすい環境を整えることに注力していました。特に心がけていたのは、「誰にでもわかりやすい言葉でビジョンを掲げること」です。組織としての意思統一を図るため、会社の方針や全体として目指すべきゴールについて話す機会を大切にしていました。
私は、仕事には必ず楽しいことがあると信じているんです。仕事に対する一人ひとりのモチベーションを高められるように、それぞれの業務の重要性についても、言葉にして伝えています。例えば、新人がシステムの単純作業をすることに不満を抱いていたとしたら、「これはお客様が商品を買う時に、必ず見るコンテンツだから、何百万人の人の購買に直結しているでしょう」と説明する。そうすると、納得感をもって仕事に向き合えってもらえるようになると思うのです。
マインドセットの面では、「信頼されるリーダーとは何か」を常に自問してきました。一つは、言葉と行動を一致させること。背伸びして自分を大きく見せるのではなく、等身大の自分を信じて、ぶれずに進んでいく勇気が大切だと思っています。もう一つは、メンバーを信じて任せること。できる限り裁量を委ねて見守りつつ、方向がずれそうなときには軌道を戻す。そのバランスは難しいですが、失敗から成長できることは多いので、最終的には「自分が責任を取る」という覚悟をもって、マネジメントに臨んでいます。
多忙を極める中で2度の産休・育休を経験されていますが、どのように両立していたのでしょうか?
私の場合は、上司と相談して、出産後3-4カ月で元のポジションへ戻りました。みなさんにおすすめはできませんが、キャリアが断絶することや、周囲に迷惑をかけることを避けたくて自分で決断したんです。調理が簡単な宅配の料理キットを使ったり、自分の母や夫に頼ったりして、大変な毎日を乗り越えていました。子どもが小さいと、なかなか外での飲み会には参加できないので、チームメンバーを自宅に招き、飲み会を開いたこともありました。
仕事と家庭の両立について、部下から相談を受けることも多いです。私自身、もがきながら何とか日々を送っているのですが、どちらとも中途半端になってしまわないように、意識的に切り替えをするように心がけています。例えば、駅から自宅までの道で「この横断歩道を超えたら、家のことだけを考えよう」というように、半ば強制的にスイッチを切り替えるようにしています。
今はテレワークをうまく使って、メリハリのある働き方がどんどん広まっていますよね。性別、年齢に関わらず、いろんな事情を抱えていて、フルタイムで働けない場合もあるでしょう。女だから、男だからではなく、もっと個人の事情に合わせた働き方ができるようになるといいですね。
どれだけ社会やテクノロジーが進化しても、価値創出の起点は「現場」にある
4度の出向の経験を経て、今どのようなことに取り組まれていますか?
変化が激しい時代においては、常に一歩先ゆくビジネスを生み出していく力を備えることはとても難しい。そんな中で、未来を洞察するための思考を磨いていこうという試みにライフスタイルグループ全体で取り組んでいます。大学や専門家を巻き込んで実施している、アートを通して創造的思考力を身につけるワークショップもその一つ。発想力が必要な新規事業の立ち上げや既存事業のさらなる価値向上において、今後役立っていくはずです。AIを活用して事業構想力を高めるという観点から、グループ独自でAI関連の研修も実施しています。
10年後、20年後に住商のBtoC事業は、どうなっていると想像しますか?
少し先の未来ですら確実なことは想定できない時代ですから、10年後、20年後となるとさらに読めないですね。今話題のAIも位置付けがどんどん変わっていくでしょうし、最先端を常に知っておくことは重要だと思います。
ただ、一つ言えることは、住商が持っているBtoCの実地的な部分、「サミット」や「トモズ」といったお客様とじかに接する店舗があるという強みが大きく生きてくるのではないかということです。先日、街中で若い女性が、「サミットが大好きなので、毎回サミットがある地域に引っ越しをしている」と言ってくださっているのを耳にしました。現場で直接お客様の反応が見えるところに社員がいるからこそ出せる価値があると信じています。
デジタル技術が加速度的に進化する中で、データやAIを上手に使いつつ、これまで育んできた現場でのお客様との接点もしっかりと活用していく。その両輪でビジネスをできることが住商の強みですし、時代も決してデジタルだけには偏らないでしょう。強みをどう生かすべきかは、まさに今取り組んでいる創造的な思考力の育成もきっと役立つはずです。