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2023.10.1

Business

高まる電力需要、届けたい日本の技術

この記事は2017年6月に公開された内容です

  • 制作チーム

    登坂 祐哉

    2013年入社。IT関連業務の担当部署から広報部制作チームに異動して1年半、当社コーポレートサイトを担当。平日は「生みの苦しみ」と格闘し、週末は趣味の釣りで「海の喜び」を満喫する日々を過ごしている。仕事、プライベート問わず大事にしているのはとにかく楽しむこと。「笑う門には福来る」が幼少期からのモットー。

世界中から注目されているインドネシア。経済成長率は毎年およそ5パーセントを誇り、GDP(国内総生産)はスペイン、メキシコに次ぎ世界第16位である(2017年4月時点)。一方、経済成長と継続的な人口増加に電力供給が追いつかず、急ピッチで電源開発が進められている。2015年時点で設置済み総発電容量は約5万5,000メガワットであり、そのうち地熱発電容量は約1,600メガワットと全体の2~3パーセントに留まっている。米国に次ぐ世界第2位の地熱エネルギー保有国インドネシアでは、いまだ眠っている2万9,000メガワットともいわれる地熱資源の活用が今後の課題である。

ジャカルタの金融機関が集まるMHタムリン通り。華やかな照明が目立つ

今回、インドネシアの電力事業に着目したメディア取材に同行し、同国の電力不足解消や生活環境向上に貢献する地熱発電所を記者と共に訪ねた。

人里離れたスマトラ島南端に位置する、ウルブル地熱発電所へ

地熱発電所は性質上、人口の少ない山岳地帯に建設されることが多い。今回の取材先、ウルブル地熱発電所も例外ではない。スマトラ島南端、ランプン州タンガムス県ウルブル郡に位置し、最寄りのバンダルランプン空港から車で3時間半。道中はジャカルタ市内とは全く異なった街並みで、大通りから一本横道に入ると、整然とした田園風景と、南国を感じさせる青々とした広葉樹林に囲まれ、そこが常夏の国インドネシアであることが思い出される。

野を越え山を越え、ようやくたどり着いたのがウルブル地熱発電所で、現在1~4号機が稼働し、電力供給先であるランプン州地域における総発電容量の約4分の1を担っている。インドネシア政府が推進する地熱発電推進計画の一つに位置付けられていることからも、このプロジェクトへの期待の高さがうかがえる。当社の地熱発電プロジェクトへの関わり方はさまざまであるが、ウルブル地熱発電所においては商務ならびに技術上のコーディネーションを担当している。

現地の駐在員や出張者は自然に囲まれながら通勤している
白い蒸気を上げる建物が発電所。鉄塔から電線が長く伸びている様子が分かる

地中に潜む大きな可能性を探る

地熱発電はマグマにより熱せられた熱水の蒸気をエネルギーとして利用している。発電所が存在する山のふもとには源泉が顔を出していることも珍しくなく、ここでも約100度の熱水が地上に湧き出ているのを目にすることができた。さすが世界有数の地熱大国インドネシア、昼夜や天候などの環境要因に左右されず、24時間365日安定した電力供給を可 能にする地球のエネルギーが十分にあることがわかる。地上から1,000~3,000メートル掘り下げた井戸から熱水と蒸気が吸い上げられ、発電に必要な蒸気と地中への還元水に分別される。取り上げた蒸気は遠く離れた発電所まで勢いよく運ばれていく。

源泉から湧き出る地球のエネルギーに大きな可能性を感じる
駐在員、出張者、現地採用社員間の密なコミュニケーションが大規模プロジェクトには欠かせない

発電の現場に迫る

発電所内に入るには安全講習の受講が必須で、注意点や禁止事項について十分に説明を受けた。高温の水蒸気や高電圧などを扱う以上、徹底した安全管理は欠かせない。事務所の入り口には「Safety is…」と書かれた張り紙があり、契約者側関係者が手書きで安全への思いを記しているのを見ると、安全管理の重要性が伝わる。いざ発電所内に入り、まず驚いたのは中央操作室にいた人数の多さ。10人を超える運転員がモニターに映された発電所の稼働状況をチェックし、無線で指示などを出していた。発電所の最上階には2基のタービン発電機が配置されている。遠く離れた井戸から運ばれてきた蒸気が大きなタービンを力強く動かし、機械エネルギーから電気エネルギーとなってランプン州周辺地域へ届けられる。ひと仕事終えた蒸気はクーリングタワーで冷やされた後、別の井戸から地中に還元され再活用される。

発電所の隣に併設された開閉所。ここから変電所を経由して、街に向けて電力が供給されている
中央操作室では運転員が発電状況をチェック
発電の動力となるのは実績ある日本製タービン発電機

電力不足を解消し、生活環境の向上に貢献する

インドネシアで見かける自動車のほとんどが日本車であることからも明らかなように、経済成長に目をつけた日本企業の進出が積極的で、受け入れの体制も良好といえる。当社も例外ではなく、グループ会社の住商機電貿易と共に、インドネシアにおける完工済み地熱発電総容量の約50パーセントに相当する地熱プロジェクトに携わった実績を持っている。培われたノウハウを生かした取り組みは日本企業の質の高いインフラ輸出であり、東南アジア各国をはじめとした電力不足の解消に向けて今後も貢献していくことが期待される。

見かける自動車の大半が日本車。日本メーカーが生産工場を拡大するのもうなずける

(おまけ)グルメ探訪記

現地で最初に口にしたインドネシア料理は「おいしい」の一言。東南アジアならではの香り豊かな香辛料にチキンが相まって、何とも言えぬ絶妙な味わいだった。また駐在員宅でいただいた日本食がこれまた非常においしかった。現地で調達した材料にもかかわらず、味は王道の日本食ということに驚きを隠せなかった。

香ばしいチキンの香りが店中に広がっており、東南アジアらしさを感じさせる
駐在員宅でのすし、天ぷら、そばなどの日本食に感動

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