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2025.12.12

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池田エライザさんと学生審査員が選んだ、東京国際映画祭「エシカル・フィルム賞」が映す社会へのまなざし

住友商事(以下、住商)が協力する東京国際映画祭(TIFF)の「エシカル・フィルム賞」は、映画を通して環境、貧困、差別といった社会課題への意識や多様性への理解を広げることを目的に創設されました。2025年11月に都内で行われた第3回授賞式では、審査委員長の池田エライザさんと学生審査員3名が、作品への共感や審査の舞台裏を語りました。私たちはこの時代、他者や社会とどう向き合うべきか。そんなことを考えるきっかけを与えてくれるような、授賞式の模様をお届けします。

映画を通して社会を見つめる「エシカル・フィルム賞」

アジア最大級の国際映画祭である、東京国際映画祭(TIFF)。1985年のスタート以来、国内で唯一、国際映画製作者連盟(FIAPF)の公認を受けた映画祭として、世界中の映画人が集います。

2023年より住商が協力している「エシカル・フィルム賞」は今年で3回目を迎え、11月4日に受賞作発表と表彰が行われました。この賞は、映画を通して環境、貧困、差別といった社会課題への意識や多様性への理解を広げることを目的としています。

今年の審査委員長には、俳優・歌手・映画監督と幅広く活躍する池田エライザさんが就任。さらに、東京国際映画祭の学生応援団から3名が審査員として参加しました。映画のプロの視点と、映画を愛する若きファンの視点が交差するユニークな審査体制こそが、この賞の特徴と言えます。

映画を観た「あなたの感性」を大切に。審査委員長・池田エライザさんが示した評価軸

「私たちにブラジルの優しい、深い愛情を届けてくださり、そして、この映画との出会いを作ってくださり本当にありがとうございました」と授賞式で作品関係者に伝えた池田エライザさん(左)

第3回エシカル・フィルム賞にノミネートされた3作品は、「愛」の在り方を考えさせられるという共通点がありつつも、それぞれが異なる社会課題を描いた力作ぞろいでした。その中でグランプリに輝いたのは、ブラジルのルシアーノ・ヴィジガル監督による『カザ・ブランカ』。余命わずかな祖母の看病を通じて、深い友情で結ばれる3人のティーンエイジャーを描いた、温もりに満ちた社会派青春ドラマです。一方、ほか2作品の『アラーの神にもいわれはない』は西アフリカの内戦と少年兵の実態を描き、『キカ』は性風俗の仕事に足を踏み入れたシングルマザーが主人公と、それぞれ全く異なる視点から社会を捉えた作品であり、評価軸をどこに置くかが審査の鍵になりました。

審査にあたり、池田さんは「個人としてどう感じたかを大切にしてほしい」と学生審査員に伝えたそう。エシカル・フィルム賞授賞式のトークセッションで、学生審査員の津村ゆかさんは「エライザさんから『個人的なことは社会的なことだよ』と言ってもらえたことで、プライベートな視点で判断していいんだなって、肩の荷が下りた」と振り返ります。

また、同じく学生審査員の須藤璃美さんは「世界観や演出ではなく、どんなメッセージを届けようとしているかに注目して映画を観たのは初めてで新鮮だった」と語り、エシカルという視点が、従来の映画鑑賞の枠を大きく広げたことを示しました。

結果的に満場一致で決まったという受賞作『カザ・ブランカ』について、学生審査員の魚住宗一郎さんは「ヤングケアラーや貧困がテーマでありながら、優しさが押しつけではなく、ただそこにあるものとして描かれていた」とコメント。池田さんも「ほか2作は、愛に飢えていたり、愛を見失っていたり、そこから『愛ってどういうものだっけ?』という問いがあったが、『カザ・ブランカ』は土台に愛があって、その愛情が作品全体を支えているからこそ、こんなにも人の心を満たしてくれる、豊かにしてくれるんだなって。(そう感じた理由は)特に自分がいま東京で、お隣さんの顔も知らないような生活をしているからこそなのかなと思ったりもしました」と、作品がもたらしてくれた気付きが受賞の決め手になったと語りました。

提供:東京国際映画祭

トークセッションの終盤、池田さんは「映画を通じて誰かの心に手を差し伸べられると再確認できた」と語り、映画業界への内定が決まっているという津村さんも「これからも映画を通して他者や社会を見つめ直すきっかけを届けたい」と決意を新たにしました。

作品の優劣を競うのではなく、一人ひとりの心が何を感じ取るかに価値を見いだす。今年のエシカル・フィルム賞は、映画という表現が社会課題を「自分ごと」として考えたり、人とのつながりを見つめ直したりするきっかけを与えてくれることを、改めて示しました。

トークセッションでは、学生審査員3名と池田エライザさんが和やかな雰囲気で映画談義を繰り広げた

学生審査員インタビュー
若い世代が考える、多様な映画文化を育むためにできること

トークセッション終了後、学生審査員の皆さんに、映画祭の審査員を務めた今回の経験を通して感じたことを振り返っていただきました。

魚住さん 「『カザ・ブランカ』のエンドロールで『この映画は600人の雇用を生み出しました』というメッセージを見て、映画が与える影響の大きさを実感しました。日本にいてこれまで、映画をそういった経済効果をもたらす産業だと捉えたことがあまりなかったので印象に残っています。また、予算規模の大きな有名な作品ももちろん好きなのですが、そうではない監督の思想が反映された多様な映画が生まれ続けるためには、エシカル・フィルム賞のように、企業による文化支援の取り組みが不可欠だとも感じました」

(手前から)津村ゆかさん、須藤璃美さん、魚住宗一郎さん

須藤さん 「『カザ・ブランカ』を観て、自分の中にあった偏見に気づかされました。介護やヤングケアラーという言葉から、『誰かを支えることは、きっと大変で負担が大きいはず』と決めつけていたんです。でも、主人公の少年が、優しい手つきでおばあちゃんをなでる姿を見ているうちに、思いやりは犠牲の上に成り立つものではなく、自然とあふれ出る愛情から生まれるものなのだと感じるようになりました。そんな風に、知らない世界を知り、新しい視点を与えてくれる点が、映画の魅力だと改めて思いました」

津村さん 「賞にノミネートされることは、素晴らしい映画が世の中に届くための大きな『目印』になります。特に、配給が未定の作品にとって、賞は知られるきっかけを与え、より多くの人に鑑賞してもらうための強力な推進力になると思います。私自身、地方出身で、上京前は多様な作品に触れる機会の少なさを痛感していました。将来は故郷に戻り、さまざまな作品を鑑賞できる場や、映像制作を体験する文化的な機会を地域に提供したいという夢を抱いていますが、TIFFへの参加を通してその想いを強くしました」

文化と社会の架け橋に。住商が挑む次世代との価値共創

住商では、これまで映画製作・配給を手掛けるアスミック・エース(JCOMグループ)の運営をはじめ、1988年公開『AKIRA』への製作出資を皮切りに、『学校』シリーズや最新作『TOKYOタクシー』など山田洋次監督作品への継続的な出資を通じて、長年にわたり日本の映画文化に携わってきました。現在は、集英社の関連会社であるREMOW(2024年)、ゲームジャンルの動画配信で国内最大規模のチーム・Crazy Raccoonを運営するSamurai工房(2025年)への出資を行うなど、映像コンテンツや関連商品の海外向け販売を通じ、アニメなど日本の映像コンテンツのグローバル展開の支援に取り組んでいます。

こうした事業活動に加えて、社会に多様な価値を生み出す支援の一環として取り組んでいるのが、「エシカル・フィルム賞」への協力です。文化や創造を支える活動を通じて、社会をより豊かにしていくこと。それもまた、住商が掲げる“Enriching lives and the world”の実践です。私たちは、未来を担う学生たちが作品と向き合い、社会への視点を育む場を支えながら、文化の現場と社会をつなぐ“価値共創”を目指していきます。

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