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2026.3.23

Culture

海外MBAは仕事にどう生きる?住友商事社員が語る、学びと実践の価値

住友商事(以下、住商)には、会社に在籍しながら海外のビジネススクールで世界水準のリーダーシップとマネジメントを学び、MBA(経営学修士)を取得する社員が在籍しています。彼らが決して簡単ではない海外MBAに挑む意義と、そこでしか得られない学びとは、どのようものなのでしょうか? そこで今回は、それぞれ異なるビジネススクールに留学しMBAを取得した社員3人に、挑戦のきっかけや印象的な授業、住商の仕事とMBAの親和性について、語ってもらいました。

  • 投資アドバイザリー部 
    MIT Sloan School of Management
    (MIT Sloan):2019年卒業

    尾崎小百合

    2007年入社。旧金属事業部門の軽金属部(現資源グループのアルミSBU)に配属後、輸出トレードの営業として中国・東南アジア・中東・オセアニア地域を担当。部内で事業投資を行っていたチームに異動し、欧州企業とのJV設立や米国での工場建設プロジェクトを担当した後、住商の20%出資先である米国ケンタッキー州のトライアローズアルミナム(TAA)にトレーニーとして出向。17~19年にかけてアメリカのMIT Sloanへ留学し、MBAを取得。その後、リスクマネジメント第二部に帰任し、産育休および配偶者の海外赴任帯同のために退職。24年8月、投資アドバイザリー部に再入社。

  • 自動車製造事業第二ユニット
    École des hautes études commerciales
    de Paris (HEC Paris):2025年卒業

    中山浩一

    2016年入社。旧リスクマネジメント第三部に配属、建設機械を担当。17年に旧自動車製造事業第一部に異動。住商100%出資の自動車部品メーカー「キリウ」の管理業務・M&A業務を担当。20年に自動車の設計・開発に関わるエンジニアリング事業の立上げを経験し、23~25年にかけてフランスのHEC Parisへ留学し、MBAを取得。現在自動車エンジニアリング事業の新規事業開発・投資を担う。

  • 航空SBU
    Harvard Business School(Harvard):
    2025年卒業

    高 継川

    2012年入社。建設機械第一部配属後、イラク官公庁向けトレードを担当。14年に語学研修生としてヨルダン大学でアラビア語を学ぶ。コマツ製建設機械の販売・サービス会社であるサウジアラビアのアブドゥル・ラティフ・ジャミール・サミット(15~17年)および中国の住貿グループ(17~20年)での駐在を経て、20年から建機販売事業第一部で事業会社管理業務・スタートアップ投資などを担当。23~25年にかけてアメリカのHarvardへ留学し、MBAを取得。現在は航空SBUサステナビリティソリューションチームにて、航空機アフター領域(部品・整備)の新規事業開発を担う。

グローバル水準のリーダーシップとマネジメントを学ぶ場

皆さんはどのようなきっかけで、MBAに挑戦しようと考えたのですか?

尾崎 私は「今の自分に足りないものを補いたい」という気持ちが芽生えたからです。アメリカの事業会社に出向し、営業チームの中で唯一の日本人かつ唯一の株主からの派遣員として働いた経験があるのですが、現地の経営陣や従業員、遠方にいる株主との間における合意形成や連携の難しさを感じました。「グローバルで通用するリーダーシップを学びたい」と考え、MBAへの挑戦を決意しましたね。

MIT Sloanの校舎ロビーにて

中山 私はこれまで、管理を担当していた会社のM&A案件と、新規事業の立ち上げを経験してきたのですが、周囲の経験豊富な上司や先輩と比べて、スキルや考え方の切り口不足を痛感してきました。より解像度を上げて経営全体を見ることができるようになりたい。そう考えてMBA挑戦を決めました。

HEC Parisでのリーダーシップ授業の一コマ

私はもともと経営に興味があり、住商へ入社したのも、事業投資や経営に携われるチャンスがあると考えたからです。実際に入社後は、営業職として各国をまわり、中国の事業会社では社長補佐を務め、「現場」と「経営」の両方に関わることができました。その上で、より体系的に経営学を学び、将来のキャリアに生かしたいと考えたんです。

皆さんそれぞれ別のビジネススクールで学んでいますが、どういった授業が印象に残りましたか?

尾崎 私が通ったMIT Sloanは、1年生の2学期以降は基本的にすべての科目で、学生同士が自主的に組んだチームごとに受講するスタイルでした。特に印象に残っているのは、4人1組のチームでペルーのリマで3週間ほど共同生活をしながら、現地企業の課題解決に協力する授業です。意見が衝突することもありましたが、メンバーの意図を汲み取りつつ、自分の考えを論理的に伝えることで信頼を得ることができ、最終的にはチーム一丸となってプロジェクトを前進させられた点が大きな学びになりました。

また、これまで抱いていたリーダーシップ観にも変化が生まれましたね。リーダーとは、自分なりの答えを持っていて、1つの方向にメンバーを導いていく存在だと考えていましたが、留学を経て、メンバー全員の強みを生かしたチームを作っていける人が真のリーダーなのだと気付かされました。

私が通っていたHarvardは、100%が議論ベースのケーススタディ授業であることが特徴です。実際にビジネスシーンで起きた事例を教材にして、1クラス約90人の学生がそれぞれ、「自分がリーダーならどう行動するか」をとことん議論していくのです。

思い出深いのは、ある鉱山会社の事例でした。従業員が命を落とす事故が起きた時、経営者として「鉱山の稼働を止めるか、稼働し続けるか」の判断を迫られるという場面です。稼働しなければ1日10億もの損失が出てしまうが、稼働すればまた人命が危険にさらされる……事業判断の限界を突き付けられた局面で、利益と人命を天秤にかけた究極の決断をしなければいけません。私たちが取り組むビジネスも、こうした正解のない問いの連続です。そこでトップとして責任を持って意思決定することの難しさを痛感しました。

Harvardでの研修旅行(トレック)で訪問したコロンビアのスラム。同トレックでは元大統領らと面談し意見交換した

経験を生かし、学び、また生かす。商社とMBAの親和性

ビジネススクールでの学びは、どのように現在の業務に生かされていますか?

私は現在、M&Aを担当しており、新規投資機会を探っているのですが、例えばリーダーシップを発揮してのプロジェクトマネジメントや、対象会社のバリエーション(企業価値評価)、経営陣の考えを把握するためのインタビューなど、ビジネススクールで学んできたことをダイレクトに応用できている実感があります。

尾崎 現在の投資アドバイザリー部で投資先候補となる新規分野や企業を分析する際、ビジネススクールで学んだ「5forces(※3)」などのフレームワークを用いて、体系的に考える習慣が身に付いたのは、大きな収穫でした。またビジネススクールでは、夏休み期間にインターンとして企業で実務経験を積む学生が多く、私も戦略コンサルティングファームで2.5カ月間のインターンを経験しました。エキスパートインタビュー等を活用して投資先に関する情報収集を行い、投資判断に反映させる手法を実践的に学んだ経験は、現在の業務にも大いに生かされていますね。

※3 マイケル・ポーターが提唱した業界の競争環境と収益性を分析するフレームワーク

中山 私は、自身の仕事を俯瞰して見られるようになったことが大きいと思います。マネジメント面では、海外拠点や事業会社を含めチーム全体を見渡しながら、全員が自発的に考え、成長できる環境を作ることを意識的に実践するようになりましたね。また、事業戦略を考える上では、まずは既存事業やマーケットの分析を徹底して行い、「何がこのビジネスの肝であるか」を捉えた上で、ファイナンスやマーケティングといったさまざまな切り口を使い分け、戦略を策定できるようになりました。

ビジネススクールでの在学中、住商でのこれまでの経験やキャリアはどのように役立ちましたか?

尾崎 海外のビジネススクールには、名門大学を卒業し、名だたる企業で働いてきた経験がある人がたくさん集まってきます。その中で「自分は太刀打ちできるだろうか」という不安もありました。けれど授業を通して分かったのは、住商で実務経験を積んできたからこそ、彼らに負けない強みが自分にもあるのだということ。それは、ひと言でいえば「現場力」です。ビジネススクールでは、ともすれば机上の空論になってしまいがちな中で、20代から国内外のステークホルダーと一緒に、さまざまな問題に立ち向かってきた経験は、現実的な議論を進める上でとても役立ちました。

住商では、投資から現場の営業まで幅広い業務を経験することができますが、まさにMBAの授業一つひとつの中でも、その経験が生きてくると思います。例えば「ディスカッションで価値を出せなければ意味がない」というのがビジネススクールの基本的なスタンスですが、商社の人間は実務を通して地に足のついた議論ができる。そうした意味で、商社とMBAの親和性はとても高いと思いますね。

中山 海外では基本的に業種や職種が固定されていることが多いため、同級生には自分の専門性の中で物事を捉えている人が多い印象でしたが、それに対して商社の人間は、物事を俯瞰したうえで、幅広い観点から意見することができます。実際、チームで取り組む授業では、商社出身の生徒が中心となって課題の解決を進めていく場面は少なくありませんでした。何より私自身、これまで住商で培ってきた経験・スキルに対して自信を持つことができましたし、私たちが日々向き合っているビジネスは、非常に高度なものだったということに気付かされましたね。

MBA取得者は、住商グループに対してどのような価値をもたらすことができると思いますか?

尾崎 海外のビジネススクールは、世界中から未来のリーダーが集まり、最先端のリーダーシップ論や経営論を1〜2年間かけて学び合う場所です。住商で数年働いてきた人間が、海外のビジネススクールで自身の考え方をさらに磨いて戻ってくることで、当社のビジネスの進め方や組織カルチャーを進化させる一助になれるのではないでしょうか。

中山 そうですね。MBA取得者が国内外の壁や縦割り化しているグループの壁を越え、+αで社外リソースもうまく活用することができれば、組織全体にオープンイノベーションを起こすことができるかもしれません。また人材育成の面でも、先輩・後輩、上司・部下に関わらず、その人が何を考え、何が必要で、どうすれば物事の見方が広がりその人が成長できるかを突き詰めていくリーダーシップは、住商グループに大きな価値をもたらすことができると思います。

MBAの準備期間は、自分自身を見つめ直す時間でもある

ビジネススクール受験のための準備期間は、どのような点が大変だったでしょうか?

最初に立ちはだかる高いハードルが、英語試験(TOEFL・IELTS)でしっかりとスコアを出すこと。MBAを志す人の7~8割がなかなか点数を取れずに挫折してしまっている印象を受けます。でも大切なのは、ここで歯を食いしばって数カ月頑張ることです。同期はもちろん、住商には「MBAアルムナイ(卒業生)」もたくさんいますから、勉強のコツや面接対応などのアドバイス、現地での生活の心構えなどを教えてもらうと、とても心強いと思います。

尾崎 試験のスコアも大切ですが、インタビュー(面接)で何を話すのかが最も重要ですよね。それまでのキャリアで何を経験し、何を学んで、MBA取得後にはそれを生かして何を達成したいのか。それらを徹底的に考えて、考えや想いを言語化しなくてはいけません。

中山 私の場合は、「あなたの価値観は何ですか?」「人生で大切にしているものは何ですか?」と、繰り返し問われました。ビジネススクールの受験は、人生を深く考える機会になりましたね。

最後に、MBA挑戦を考えている方に伝えたいことはありますか?

中山 ビジネススクールには、各国から私財をすべてはたいてやってくるような、ハングリー精神の強い人たちがたくさんいます。実務はもちろんですが、そうした仲間たちから受けた刺激も財産になってくれるはずです。留学して「後悔した」という話は、聞いたことがありません。行きたいと思うのならば、諦めずに挑戦してみてください。

尾崎 私自身も「行って良かった」という思いしかありません。けれど、やはり1年半〜2年という時間は大きく、人によっては何かを犠牲にしなければならないこともあるでしょう。だからこそ、なぜMBAに挑戦したいのか、なぜMBA留学が自分のキャリアに必要なのかを突き詰めて考えてみてください。それでもやはり「行きたい」と思うのなら、その道を信じて突き進んでほしいです。

日本企業からMBAを取得した方の中には、帰国しても「普段の仕事となかなか結びつかない」という人が少なくないと聞きます。けれど多様な事業ポートフォリオを持つ住商には、学びを生かすフィールドがいくらでもある。ビジネススクールで学ぶマネジメントや投資における「最新の型」と、企業文化やネットワークといった「住商の強み」、そこに自身の「個性」を掛け合わることで、強いリーダーシップとマネジメント力を発揮できる商社パーソンになれるはずです。

3名それぞれの卒業式の様子

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