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2025.7.22

Culture

異業種から商社へ。入社2年の海外支店長が、インド・ベンガルールで10年先を見据えた拠点づくりに挑む

「前例がない」ことを言い訳にせず、自ら道を切り拓く──。2022年、日系の輸送機器メーカーから住友商事(以下、住商)へキャリア入社し、わずか2年でインド・ベンガルール支店長に就任した福田絵未。「インドのシリコンバレー」と呼ばれる地に飛び込み、持ち前の推進力で新たなビジネスの可能性を模索してきました。キャリア入社の目線で見る、住商で働く魅力とは。福田が感じることを聞きました。

  • インド住友商事会社 ベンガルール支店 支店長

    福田絵未

    前職では輸送機器メーカーで、海外営業(カナダ、ブラジル駐在)、商品企画、事業戦略などを担当。22年12月、住商モビリティ事業企画部にキャリア入社し、自動車関連のスタートアップ企業の立ち上げに参画。24年12月からはインド・ベンガルール支店長に着任。スタートアップや高度テック人材が豊富な地域でビジネス拡大に取り組んでいる。90カ国以上を旅したバックパッカーとしての経験も持つ。

「持たざる強みへの共感」が導いたキャリアの転機

前職の輸送機器メーカーでは、どのような業務を担当していたのでしょうか。

新卒で入社した会社は、世界的にも有名な日系の輸送機器メーカーです。大学生の頃からバックパッカーとして世界中を旅していて、その中で同社の自動車やバイクを目にすることが多く、日本の製品が世界の人々の生活を豊かにしていると感じたことから入社を決めました。当時従事していたのは、国内、海外営業、商品企画、不動産戦略など。EVやFCVなどの事業企画にも携わり、充電インフラ立ち上げやサービス設計、事業戦略などを一気通貫で担いました。キャリアを振り返ると、本社ビルの建て替えに関する経営陣との議論もそうでしたが、前例がなく、正解のない事業に携わることが多かったように感じます。

住商へのキャリアチェンジはどのようなきっかけからで、どのような点に魅力を感じたのでしょうか。

転職のきっかけは、まさに偶然でした。エージェントから「福田さんにピンポイントで合いそうなポジションを探している商社がある」と声がけがあり、最初は社会勉強のつもりで話だけでも聞いてみることに。ところが、面接を重ねるうちに住商のモビリティビジネスの多様性に惹かれ、特に「持たざる強み」に魅力を感じました。というのも、輸送機器メーカーには自ら製品を生産する工場があり、世界中の既存のお客様、販売網、サプライヤーとの関係性から、過去の延長線上を崩すことが難しい局面が多くありました。自動車産業を支えるやりがいを感じていた一方、商社はモノを持たないからこそ顧客志向で意思決定の自由度が高く、世の中の動きを察知し、より速く、柔軟な発想でビジネスを展開できるように感じたんです。

ただ、そのスピード感の裏に、目先の利益に流されない誠実さがあることも印象的で、「浮利を追わず」という住商の理念には強く共感しました。また、キャリアを通して一貫して抱えている「日本を元気にしたい」という思いは変わらずあり、商社であれば、それをより複合的かつダイナミックな形で実現できると直感し、入社を決意しました。

総合商社という未経験領域への転職に、不安はありませんでしたか。

正直、商社で自分が通用するのか、まったく自信がなかったのが本音です。ただ、過去立ってきた打席数、突破経験には自信がありました。私は特別仕事ができるわけではないですが、これまで幾多のプロジェクトに携わってきて、リーマンショック、東日本大震災などシビアな経営判断を仰ぐ機会や大型案件も含め何百回以上経営提案も経験していて。そこで身についた企画、実行力と完遂の責任感が、商社の中でも生きるのではと望みを持ちました。

また当時、住商のモビリティ事業本部には女性マネジメントがいなかったこともあり、「自分が一人目になれば、組織の変化の起点になれるかもしれない」と考えていました。実際、前職でも一人目の存在がバイアスを解き、女性登用が進んだ経験が何度もあったので、「そこに存在するだけでも意味がある」という感覚に背中を押され、飛び込む勇気が持てました。

キャリア入社初日からチームの中核へ。「任される環境」が挑戦を後押し

住商に入社後は、どのような仕事に取り組まれてきたのでしょうか。

入社初日から、当時緊急性の高かった案件の事業化検討メンバーに参画しました。EV通勤×職場充電×V2X(Vehicle to X)という新たなモビリティビジネスモデルを目指したチャレンジングな取り組みです。

当時はこの案件を実証事業として進めるか、新会社を立ち上げるかの瀬戸際で。10年先を見据えた事業計画策定からオフィス探しや登記スケジュールまで、とにかく多岐にわたる検討・準備を重ねながら、コアメンバー、若手メンバーとともに計画を具体化していきました。結果、参画2カ月後に社内承認を取得し、その2カ月後には会社設立を実現。23年4月からは新会社に出向しつつ、モビリティ事業企画部戦略チーム長も兼務することに。このスピードで事業化できたのも、住商の「キャリア社員にもチャンスを与え、任せてくれる」文化の表れだと実感しています。

インドのシリコンバレー・ベンガルールで、10年後に向けた種をまく

24年12月からインド・ベンガルールに駐在されていますが、どのような思いで臨まれましたか。

意向確認の際は、正直「私ですか?」と驚きが先立ちました。当時は入社して1年半が経ったばかり。自動車以外の専門性やインドの知見も乏しく、本社に戻りもう少し住商の仕組みを学べたらと思っていたため、想定外の出来事でした。

ベンガルールは「インドのシリコンバレー」と呼ばれていて、スタートアップや高度IT人材が集積するエリア。この地に住商が進出したのは20年で、もともとは事業開発に特化した2名の拠点でした。その後24年に自動車流通販売事業の一部がベンガルールに移管することになり、それに伴い関連する一部機能も移動することに。であれば、拠点の規模を大きくすべきだろうと25年1月に支店化され、現在は10名の拠点のマネジメントをしています。

現地に着任してからは、支店長として「ベンガルール支店をどう発展させるか」というところから考えることになりました。インドは人口14億人の国内のポテンシャルのみならず、中東・アフリカ他への輸出拠点として大きな可能性を秘めている国です。ベンガルール支店の他にニューデリー本社、ムンバイ支店、チェンナイ支店が既にあり、そうした拠点とは異なる事業拡大を模索することも求められていました。

そんな中、2月に上野社長がインドを訪問することになり、支店方針の報告機会を得ました。赴任から2カ月が経過した私なりの考えをまとめ、アジア大洋州の東野総支配人、インド住商の地頭所社長にも事前相談し、当地のビジョンについて、短期間、集中して関係者と向き合えたのはとてもよかったと思っています。支店として目指す方向性がクリアになり、その後の取り組みに向けた礎を築くことができました。

具体的には、ベンガルール支店をどのように拡大していきたいと考えているのでしょうか。

ベンガルール支店では現在、インドのスタートアップ企業を活用した事業会社のDX推進やR&Dなどに取り組んでいます。自動車関連では、中東向けトレードビジネスや販売代理店事業の支援、また、エンジニアリングサービス(※1)にも携わっており、グループ会社であるSCTMエンジニアリングとの連携においては、今年度体制の強化を図りました。今後は、成長著しいこの地で、エネルギー、都市総合開発や製造業といった領域への事業拡大も目指しています。

そのために、今は社内で積極的に「ベンガルールにはこんな可能性があります。ぜひ一度訪問してください」といった働きかけを続けていて。支店の責任者という立場ではありますが、各SBU(事業本部/※2)の事業方針に沿い、インドでの可能性を少しでも具体的に感じてもらえるよう、また、戦略構築や当地のリスクも見極めた上で、どうすれば案件化していけるかを共に模索し、検討にも携われる存在でありたいと考えています。


今後、例えばインド企業とのジョイントベンチャー設立など、大きなチャンスに恵まれた時に、機会を逸しないようにしたい。だからこそ、今必要なのは土壌づくりだと考えています。まずは社内にアンテナを立てて、種をまいて。いずれはそれが芽吹き、ベンガルール発で10年後、インド事業の柱の一つが育っていることが、現時点で描いている構想です。

インド・ベンガルールの主要エリアにあるオフィス

※1 主に自動車産業、情報技術など、さまざまな業界において、設計・開発・テスト等のエンジニアリング業務を請け負い、技術的なサービスを提供するビジネスのこと。

※2 Strategic Business Unitの略。戦略的事業単位。住商では、戦略を一とする事業群をグループ化したものを指す。

前例がないなら、自分が一例目になればいい

住商で働く上で、特に意識されていることはありますか。

「目線を合わせる」ことは常に意識しています。商社の多様な事業、バックグラウンドの人と接するには、会議一つとっても話を進める上での目的や前提を統一することが重要で、コミュニケーションのギャップが生じないよう丁寧にヒアリング・対話することを心がけています。

また、ささいなことでも「ありがとう」は伝えるようにし、長期的に組織文化を変えていくのは、そうした日々の小さな積み重ねではないかと考えています。DE&Iという概念は広く語られ、知識としては有していても、果たしてそれを実行できているのか。マネジメントこそ今一度確認し、「実践」する姿勢が、何より重要だと考えています。


そして、「前例がない」と言われたら、「それはなぜか?」と問い返すようにもしています。立ちはだかる理由が見えてくれば、きっと乗り越える方法も見つかるはずだと。前例がないのなら自分がその一例目をつくればいい、そんな思いが、私の中にいつもあるのだと思います。
実際に、入社4カ月で部門代表にアサインされた、エンゲージメント向上ワーキンググループの活動では、全社の活動に加え、所属するモビリティ事業本部で心理的安全性を意識し、もう少し闊達な議論があれば組織は変革を加速できるのではと感じたことをきっかけに、社員の本音を可視化するワークショップを企画提案、半年かけて実施しました。現場の声を前向きな提言として上層部に届ける貴重な機会となり、入社間もないからこその視点が、既存組織に「新たな」気づきをもたらせたのではと感じています。

入社前の印象通り、住商は事業も多岐にわたり、チャンスに恵まれた組織です。チャンスがあれば、まずは飛び込んでみる。キャリア採用の自分自身が先駆者になることを厭わず、次世代のために道を拓く。
周囲に支えてもらいながら、短期間に多くのチャンスをいただいていることへの感謝を忘れず、前を向き、自分らしく挑戦し続けること、その先におのずと住商でのキャリアが広がるのだろうと受け止めています。

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